プロローグ1
初投稿です。誤字・脱字のご指摘お願いします。
雪の積もった人通りの少ない道をその女性はゆっくりと歩いていた。腕に抱いた赤ちゃんはすやすやと眠っている。先ほどから降っている雪は足跡を消すほどではないが、体を冷やすには十分だった。街灯の下に来た時、女性は足を止めて赤ちゃんの顔を見る。よく眠っている。我が子をキュッと抱きしめる。
もう限界・・・。どうして私だけがこんなにつらい思いをしなきゃいけないの・・・。重い足取りで再び歩き出す。そして橋の上に立って再び我が子の顔を見る。
「ごめんね、こんなお母さんで。」
涙が溢れていた。ぽたりぽたりと赤ちゃんの顔に涙が落ちる。赤ちゃんは目を覚ました。
「あう~?」
にっこりと笑う我が子の顔に一瞬我に返った。ぎゅっと抱きしめ、
「ごめんね、本当にごめんね。お前を連れて行こうなんて・・・。」
そっと雪の上に我が子を置き、
「情けないお母さんでごめんね。せめてあなたは幸せになって・・・。」
橋の欄干を乗り越え、川へ向かって身を投げた。
「お父さん、今日は何時に帰ってくるの?」
「今日は夕方からお客さんと打ち合わせがあるから、帰りは遅くなるぞ。」
「そうなの?それじゃあ晩御飯の支度はしなくていいわね。私も麻里華たちと会ってくるから、帰りが遅くなるし。」
「おいおい、年頃の娘がそんなに遅くまで遊び歩いてちゃいかんぞ。」
「バイトが終わって麻里華たちと食事して帰ってくるだけだから。」
心配性だ。父と私の二人家族だからだけど、言葉の端々に過保護さをにじみだしている。
「ちゃんと帰りに花も供えてくるから。」
「ああ、頼むよ。」
私は朝食を終わらせ食器を洗い、いつものように洗濯物を手際よく干す。その間に父は会社へ出かけて行った。
自室にもどってリュックにテキストやバイト道具を入れて
「行ってきます。」
仏壇の写真に向かって挨拶をして出かける。
今年は暖冬だというけど、やっぱり風は冷たい。マフラーを巻きなおして駅へ向かう。
「おはよー。今日はちょっと遅いじゃん。」
「電車がちょっと遅れてたのよ。」
今日の講義は人気の教授だ。いい席はすぐに埋まってしまう。麻里華が席を確保してくれていたのでよかったけど、そうでなかったら双眼鏡が必要な位後ろの席しか空いてないところだったわ。
「今日は結衣たちと何時の待ち合わせだっけ?」
違う大学に行ったため、会うことが少なくなったが、もう一人の親友だ。
「私のバイトが終わってからだから、6時半頃の予定よ。」
「そっか。それじゃあ私はサークルによってから行くね。」
高校の親友だった私たちは大学で離ればなれになった。でもみんな第一希望の大学に合格し、時間が合えばできるだけ会うようにしていたのだが、さすがに就活を意識しだして会う回数が減ってきた。今日は情報交換もかねての女子会だ。みんなとたくさんおしゃべりしなきゃ!
そんなことを考えてたら、あっという間に1限目の講義は終わってしまった。次の講義の教室へ移動しようとしていたら、少し前に座っていた女性の手帳からひらりと紙切れが落ちてきた。拾ったら紙切れではなく写真だった。渡そうと顔を上げた時にはもう彼女はいなかった。
「どうしたの?」
「あ、さっきあの席に座ってた人がこの写真落としたんだけど、渡そうと思ったらもういなくって。」
「あー、あの人?なんていったかしら?あのさらさらヘアーの人よね。」
「そうそう!綺麗な黒髪のロングヘアーの人。」
「次に会う時まで預かってたら?どうせこの大学の人なんだし。」
「そう・・・ね。」
手に取った写真を改めて見てみる。
『ランドセルを背負った金髪に緑の瞳の男の子』
誰だろう?この写真とっても古いけど・・・。




