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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
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エレクトロキネシス08


「それで二次変換の件なんだけど……」


 放課後は図書館。


 聖ゲオルギウス学院の総合図書館だ。


 その個室。


「神話の再現による……って照ノは言ってたよね?」


「全部が全部……ではありやせんがね」


 魔術特性モード


 魔術師が異能を行使するに辺り、指標とする観念だ。


 クリスの一神教。


 アリスの創世記。


 ジルは……また別だろう。


 照ノも例外に含まれる。


「私は……その……」


「エレクトロキネシス?」


「ですけど」


 ――ふむ。


 照ノは、くわえたキセルをピコピコ。


「意図不明」と書かれた扇子をパンと開き、扇ぐ。


「二次変換……」


 情報を現象に変える御業……その究極はエゴによる世界の改ざんとすらも言ってのけるカルマだ。


「別に無理して覚える必要もございやせんよ?」


「そーなんだけどー!」


 すっかり魅入られているらしい。


「ソレで要件は?」


「ここの古典なんだけど」


 一応、テスト勉強の名目だ。


 四人は教科書とノートを広げている。


「風神雷神ってどう思う?」


「どうも何も」


「自然信仰の一種だよー」


 身も蓋もないアリスの答え。


「でやんすね」


 照ノも同意した。


「僕ら以上に鬼だね」


 唐突に別の声が降って湧く。


「?」


 エリスが振り返ると、そこにはジルが立っていた。


「よっす」


 照ノが軽快に答える。


「誰さん?」


 エリスの訝しみもご尤も。


 普通に、気配無く現われたら、誰しも不明を覚えてしかり……それほどジルベルト=アンジブーストの出現は唐突だった。


「小生らの知り合いでやんす」


「魔術師?」


「魔導災害」


「……………………」


 それは沈黙もする。


 場合によっては、殺される可能性も提示できる。


 実際に、その目に会っているのだから、エリスは顔を固めてしまった。


「大丈夫でやすよ。噛んだりしませんので」


「噛むけどね」


 吸血鬼としては、ジルの弁明が正しい。


 吸血鬼は噛む者だ。


「ヴァンパイア……」


 唖然とする。


 威力使徒の仮想敵だ。


 クリスの内情はともあれ、立場としては不倶戴天。


 照ノが防波堤だった。


「まさか吸血鬼が本当にいるなんて……いや人の恐怖や伝説が二次変換で魔導災害を形成するなら……確かに理屈には適ってるけど……」


「赤鬼もソレに分類されやすな」


「ああ」


 ご尤も。


「ここで君の血を吸ったりしないから、そこは安心して欲しい」


「ていうか外に出られるんですか?」


 日光に弱いのは、ジルの特性だ。


「何時もは結界に潜んでいるんでね」


「結界」


「四次元方向にずれた宇宙さ」


「?」


 エリスの視線が、照ノに向く。


「赤鬼に襲われたときを思い出しやさい」


「あー」


 それで納得も出来ようもの。


 人っ子一人いない無音空間で、月が赤く染まっていた。


「あれが結界」


「で、魔導災害は、その間隙に潜むわけでやす」


「クリスはそれでいいので?」


「そのつもりなら一瞬で滅ぼしますよ」


「劣勢だったくせに」


 ボソリと照ノが呟いた。


 仮想聖釘。


 ヒョイ。


「そんなわけで、教会も黙認しておりやす」


「本当に照ノって何者?」


「やはは」


 ソレについては答えない。


 守秘義務はないが、国家の一戦力でもある。


 場合によっては、クリスすら殺し得る立場だ。


「ま、人徳の為せる御業でやしょ」


 手に持った「意図不明」と書かれた扇子をパンと閉じ、懐に仕舞う。


 胡散臭さ百二十パーセント。


「本当に何なの?」


 エリスの困惑も宜なるかな。


「ま、パイロキネシストで一つ」


 別段、間違った解釈でも無い。


 炎の一点特化。


 その意味で、確かに火専門の魔術師ではあるのだ。


「お兄ちゃんは詐欺師の才能があるねー」


「中々浮世の世知辛いこと」


 くわえたキセルをピコピコ。


 そーゆー問題でも無かろうが。


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