エレクトロキネシス07
「うーん。美味し」
学食でのこと。
四人は、食卓についていた。
この場合は、学食のテーブルだ。
すだちの利いた蕎麦が、照ノの舌を楽しませる。
他三人。
かしまし娘も、各々食事を取っている。
「それでそれで」
「はあ」
「やっぱりクリスとアリスも魔術師系?」
軽やかの虎の尾を踏む。
この場合は地雷を踏んだようなモノだが、激発したのは地面ではなくツンデレ。
「違います!」
クリスが大声を張り上げた。
照ノは蕎麦に夢中。
アリスは、「また始まった」とこそ思えど、干渉もしない。
「え? 違うんですか?」
「違います」
周囲の目を集めてしまい、声が小さくなる。
奇蹟について語るには開けっぴろすぎる環境だ。
クリス……むしろ、かしまし娘レベルの美少女なら、それだけで耳目も集めようぞ。
「じゃあフィジカルなんですか?」
「それは……その……」
少し迷い、
「此処で話すことではありません」
ご尤も。
「やっぱり魔術って秘匿されるもの?」
「一般通念で言いやすれば」
チュルンと、蕎麦を飲み込む。
「やっぱり大勢に知られると不味いの?」
「色々な面でそうでやすな」
まず犯罪が増える。
神秘主義が飽和する。
文明が崩壊し、神秘が科学を先んじる。
どう考えても、人類文明に得しない。
宗教による毒性を、魔術は含有するのである。
なので基本的に、魔術は秘匿され、神秘を体現するモンスターは、魔術師が駆逐することになる。
先のエリスの一件も、ソレに適う。
「にゃるほど~」
うんうんと、エリスは理解を示した。
「じゃあどうやって魔術師は金銭を得てるの?」
たしかに、生産的か、そうでないか……なら、そうでないだろう。
非生産的極まる。
ましてエネルギー保存則無視とも来れば、それだけで科学の常識が崩壊する。
「ビジネススタイルは構築されておりやすよ」
蕎麦をチュルン。
「どんな風に?」
「モンスターを倒して金銭を得るんです」
「ロープレみたいな?」
「そこまでは言いやせんが」
出し汁をズズーと飲む。
塩加減が良い塩梅。
「小生ら魔術師は魔術結社に所属しておりまして」
「魔術結社……」
またお伽噺のように感じる。
だが確かに存在する。
魔導災害は個人で対処できるレベルを超える。
とにかく情報を持つのも、組織レベルが効率は良い。
その点で、魔術結社の創設は、無理に値しない。
「小生は倭人神職会に籍を置いておりやす」
「わじんしんしょくかい……」
「神道の結社でやんすな」
「ふぅん?」
一般的には「神道」と言われてもピンとこないだろう。
どちらかの勢力……と申せば、仏教の方が、馴染みは深い。
あまり聞く事がない点では、ある種、聖誕祭で盛り上がる一神教よりマイナーかも知れない国教だった。
無念。
神社系列でなら、幾つかある。
例えば稲荷神社や、出雲大社……正月なら明治神宮で、受験生なら太宰府天満宮か。
それでも日常には寄与しない。
別に、ソレを不満に思う照ノでもない。
「魔導災害を倒すと、その魔術師には栄誉が送られるんでやすよ」
「栄誉……」
「名誉とも言えやすな。要するに箔が付くんでやんす」
「それはまぁ」
「その栄誉を、魔術結社に売る。この対価として、魔術師は金銭を得やす」
「ええっと?」
「先の件を持ち出せば」
箸を教鞭の様に振るう。
マナー違反だが、学食でツッコむところでもない。
「赤鬼からエリス嬢を助け、駆逐しやした。これが栄誉でやす。で、この『赤鬼を倒したのは当方の所属する魔術師だ』と誇れば、他の魔術結社にデカい顔が出来やす。これが結社の欲する物。だからこそ、名誉を得た所属する魔術師に金銭を与え、名誉を結社に売り渡すことで、結社は発言力を増し、魔術師の懐が潤う……とまぁそんなわけでやして」
「良く出来ているんだね」
「このビジネスプランは欧州が発端でやすがね」
「そなの?」
「ええ。まぁ」
クリスは、遠慮がちに肯定した。
元より教会だけで回せないのは屈辱なのだろう。
そこまではエリスも察せない。
察してどうこうでもないが。
「~~~~♪」
照ノはいつも通りだった。
皮肉気な色が、瞳に映っている。
仮想聖釘を投げることは憚られたため、
「バルス」
箸を、彼の両目に突き刺した。
「目がぁ! 目がぁ!」
だいたいそんな感じ。




