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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
傲慢の塔(プライドタワー)編
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ツンデリッター再臨07


「天常……っ」


「照ノ……っ」


「あの野郎……っ」


「ああ、アリスちゃん……っ」


「おお、トリスちゃん……っ」


 嘆きと云うか……もはや怨嗟にまでなっている衆人環視の言葉だった。


 無論気にする三人ではないが。


 白い髪のアルビノ美少女アリス。


 深緑の髪のあどけない美少女トリス。


 聖ゲオルギウス学園において双璧と呼ばれている女生徒たちだった。


 その双璧と外聞も気にせずイチャコラしていたら誰だって不条理を感じるのは必然だ。


「パパ。好きですよ?」


「トリス嬢は心臓でやすな」


「師匠。アリスも」


「光栄でやんす」


「むう」


「うむ」


「何でやす?」


「パパ冷たい」


「以下同文」


「とは言われやしても……ねぇ?」


 肩をすくめてみせる。


 既に聖ゲオルギウス学園の校門はくぐっている。


 それ故に生徒たちから非難の視線を感じるのだから。


「ぶっちゃけ聞くけどパパは誰が好きなんですか?」


「クリス嬢」


 やけにあっさりと照ノは答えた。


「ツンデレ?」


「でやすなぁ」


「パパのことなんて好きじゃないんだからねっ」


「そんなインスタントなツンデレを演じられやしても……」


「ママは生粋だと?」


「でやすなぁ」


「まぁあれは真似できるモノではないよね」


 くつくつとアリスが笑う。


「だいたいパパとか呼ばれてトリスと交際したらそれだけで犯罪の香りがしやす」


「然りだ」


「一応のところ操は主に捧げているのですが……」


「勿体ない」


 これはアリス。


「だって色欲は大罪です」


「はぁ? 何言ってるんですトリス?」


「淫らな行為は不謹慎です」


「なら人類が滅びていいんですか?」


「滅びるんですか?」


「仮に人類全体が色欲を禁戒したら約百年後に人類は滅亡しますよ?」


「あう……」


「セックスは禁止なのに生まれてきた子どもには洗礼を与えて祝福するのは矛盾が過ぎると思うのだけどね?」


「あう……」


 どこまでも一神教を皮肉る師弟に対して、反論する言葉を持たないトリスは、自己嫌悪に陥っていた。


 トリスの手を外して、右手でポムポムとトリスの頭を優しげに叩く照ノ。


「信仰の自由はありやすからそんなに気を落としやさんな」


「でもパパもアリスさんと同意見なのでしょう?」


「心情上そうでやす」


「でも私は教会に救われたんです」


「でやしょうな」


「周りに迫害されていた私を教会は迎えてくれたんです」


「でやしょうな」


「なら私にとって一神教は正しいもののはずなんです」


「別に小生とて一神教を『間違っている』なんて言うつもりはありやせんよ?」


「そうなんですか?」


「不合理ではありやすが慈愛の精神は美しいものだと思っていやす。事実クリス嬢にはご飯を貰っている身でやすし」


「ママとしても教徒である以上、飢えている者にパンを与えずにはいられないのでしょう」


「然りでやんす。全体的に見たら戦争と地位と株式の魔窟でやんすが、個々人で見て取れば温和な宗教でやんす」


「褒めてるんですか?」


「さほどそうでもないでやすな」


 あっさりと照ノ。


「あう……」


 やっぱり凹むトリスだった。


 そんなこんなで昇降口に着く。


 いまだ日本では室内と屋外では履物を取り換える風習がある。


 そのための下駄箱も存在し、それは時に、


「あの……パパ……」


「何でやしょ?」


「またラブレターを貰っちゃいました……」


 こういう事態に陥る。


「今時紙媒体とは」


 と照ノは思わざるを得ない。


 が、案件はそれで終わらなかった。


「師匠」


「何でやしょ?」


「アリスも貰ってしまいました」


「…………」


 ラブレターを、であろうことは馬鹿でもわかる。


「時間は?」


「放課後」


「同じく」


「場所は?」


「体育館裏」


「同じく」


「…………」


 沈黙する照ノに、


「あの? パパ?」


「師匠?」


 不安げな視線をやるトリスとアリス。


「付き合えってんでしょ?」


「はい」


「だよ」


「敵を作ることになるけど……まぁ今更か」


 と言葉にせで思う照ノだった。


 そしてトリスとアリスを連れて教室へと向かう。


 自身の席に着く照ノ。


 六十年前に比べ現在の学校および学業の在り方は色々と改革なされている。


 勉強机はモニタ化しておりタッチペンによってデジタルな授業が可能となっている。


 教師はいれども基本的な講義はアーティフィシャルインテリジェンスが行なう。


 もっとも照ノとアリスにしてみれば茶番に相違ないのだが。


 照ノはモニタでもある机に突っ伏して早々に寝た。


 トリスとアリスは朝のホームルームに臨むのだった。


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