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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
傲慢の塔(プライドタワー)編
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ツンデリッター再臨06

 一次変換によって構築された世界には異世界も含まれる。


 無論のことラッセル現象に相違ないのだが、存在するものはしょうがない。


 そしてこちらもラッセル現象だが照ノが天津神である以上、照ノの存在そのものが高天原の存在証明となっている。


 そして、


「高天原は有るのか?」


 という質問に照ノは証明できるが、


「高天原は無いのか?」


 という懐疑に照ノは証明できない。


 元より否定命題は証明できないのだ。


 そこまで考えが至ったわけでも無かろうが、


「むう。高天原。異教の地……ですか……」


 トリスには面白い話ではなかったらしい。


「パパ、ヒントを」


「努力しやっせ」


「意地悪ですぅ」


「努力することが最大のヒントでやんす」


「そーですけどー」


 ちなみに神道系が天位至高の実行を、旧新約系が天罰魔術の実行を、それぞれ目指している。


 主に倭人神職会と神威装置の争いと簡略化しても話が逸れることはないのだが。


 仏教や陰陽道や密教や修験道辺りの魔術結社は静観の構えだ。


 それらの目的は高天原には無い。


 であるため東京の神道系結社である倭人神職会のエージェントと神威装置の使徒による陣地取り合戦と相成っている。


 事を穏便に済ませるために敵対攻撃の類は禁止されているものの、緊張感が日に日に増していっていることも否定は出来ない。


 場合によっては、


「魔術錠の施錠者の抹殺も已む無し」


 との意見も出ているらしいが、照ノに限って言えば杞憂である。


 それはトリスも十全に理解しているし、敵対と云う形で天常照ノがルール無用の残虐ファイターと化した場合、神威装置にもたらされる損害の規模がシャレにならないため何とか口八丁で他の威力使徒を押し留めているのだが。


 くつくつと笑ったのはアリス。


「師匠も意地が悪いですね」


 白い瞳には皮肉が映っていた。


「釈明する気は無いでやすなぁ」


 照ノは加えたキセルをピコピコ。


「アリスさんはあの魔術錠を解けるんですか?」


 藁にも縋る。


 そんな境地で尋ねたトリスであったが、


「いやぁ無理でしょうね」


 アリスは一刀に切り捨てた。


「物理的な問題なら幾らでも対処可能ですが魔術錠に関しては門外漢です」


「ですか」


 しょんぼりとするトリスであった。


「パパ?」


「何でやしょ?」


「パパは高天原に帰りたいんですか?」


「そんな意図はありやせん」


「ならどうして神威装置の邪魔をします?」


「仕事でやすから」


 端的な……それが答え。


「ならパパも神威装置に所属すればいいですよ」


「勘弁でやんす」


 くわえたキセルをピコピコ。


 両手を挙げて降参のポーズ。


「神威装置に所属するなら私と敵対する必要もありませんし」


「だから……勘弁でやんす」


「何で?」


 心底わからないとトリス。


 本当にわかっていなかった。


「日本には義理人情という言葉がありやして」


「しがらみの事でしょう?」


「言ってしまえばそうでやすね」


 キセルをピコピコ。


「それに囚われては何も為せませんよ?」


「それを神威装置が言いやすか」


「少なくとも私は神威装置に所属して良かったと思っていますが……」


「まぁトリス嬢ならそうでやんしょ」


 聖ゲオルギウス学園への歩みを止めず照ノは切って捨てる。


「それにパパが神威装置に所属すればママだって嬉しいはずです」


「まぁクリス嬢はツンデリオンでやすからなぁ」


「なら話は決まったも同然じゃないですか」


「無理でやんす」


「何でです!」


「小生、神道を信仰してやすから」


「本気で言ってるんですか?」


「然りでやんす」


 何の気負いもなく照ノは答える。


 くつくつとアリスが笑った。


「アリスさんからもパパを説得してくださいよぅ」


「いや何……」


 アリスは笑いを堪えている。


「無意味なことをしてるなってね」


「無意味じゃないですよ」


「それを理解できないなら尚更だね」


 どこまでも皮肉気にアリス。


「むう」


 と不機嫌になるトリス。


「アリスさんも神威装置に来てくださっていいんですよ?」


 トリスは懐柔策に打って出た。


「アリスさんの属性を以てすれば最初からクライマックスです」


「でしょうね」


 アリスは皮肉気に笑う。


「何の不満が?」


「師匠が神威装置に移籍するなら考えないでもないけどね」


「ということですがパパ?」


「まぁ有り得ないでやんす」


「本当に八百万の神がいると思っているんですか?」


「それなら逆に聞きやすが、あれだけメタクソにこき下ろされておいて全知全能の絶対神を信仰できやすか?」


「それは……!」


「全知は有り得ない。全能も有り得ない。そう言ったでやしょう?」


「うぅ……」


 事実としては認めても心情として認められない。


 それが嘘偽りないトリスの感想だった。


「別に虐める意図はありやせんから御存分に唯一神を信仰しやせ」


 キセルをピコピコ。


 そして手ぶらで歩く照ノの右手がトリスの左手に捕まる。


 左腕にはアリスが絡みついてきた。


「えへへ……パパ……」


「師匠っ」


「やれやれ」


 嘆息する。


 東京のどこからでも見えるプライドタワーは今日も絶賛稼働中だった。


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