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第26話(最終回)「五人と一人、そして明日へ。最高のいいなずけ!」

挿絵(By みてみん)


天を衝く五色の叫びが、星名の聖域を満たしていた絶対零度の白光を真っ向から撃ち抜いた。


次元の裂け目から雪煙を散らして降り立ったのは、あやめ、みくる、このみ、結、紗季。そして、全身の皮膚を裂かれ、血と泥にまみれながらも、その手でしっかりと合金の杭を握りしめた親友・幸人の姿だった。


「……あり得ないわ。原初の引力に結ばれた魂の契りに……こんな、羽虫のように儚く不完全な人間の我儘が届くなんて……」


ルナの透き通る唇から零れた戦慄を、あやめの白銀の一閃が鋭く断ち切る。


「ルナ。あなたの言う『完全な理想郷』にはね、たったひとつだけ決定的に足りないものがあるのよ。――それは、傷だらけになっても自分たちの足で選び取る、泥臭い『明日への希望』よ!」


智也を中心に、少女たちが再びその手を固く重ね合わせる。


かつて「ゆき」として宿した巫女の祈り、あやめが四百年の業火の果てに引き受けた「朔」の覚悟、そして現代を懸命に生きる少女たちの烈しい体温。すべての境界線が融け合い、天を焦がす一条の光の奔流となった。


「いこう、みんな! これが――俺たちの、結城智也としての答えだッ!!」


智也は両手で黄金の太刀を掲げ、ルナの白光の渦へと真っ向から踏み込んだ。


みくるが物干し竿をしならせて道を切り拓き、このみが端末を叩いて最適解の軌道を示し、結が黄金の豪光を盾にして浴びせられる余波を遮り、紗季の放つ白き矢が退路を射止め、あやめが背中を預けて共に刃を振り下ろす。


その奔流は、ルナを消し去るための刃ではなかった。


永い永い輪廻の底で、たった独り「半身」を待ち続けてきた彼女の凍てついた孤独を、芯から抱きしめて溶かすような、圧倒的な包容の熱だった。


「……ああ……そうか。私は、あなたと一つになって世界を消したかったわけじゃ……なかったのね」


光の奔流の真ん中で、ルナの顔から神の威厳が剥がれ落ちていく。残されたのは、ただ泣き出しそうな、年相応の幼い少女の面影だった。


「わたくしも……その賑やかで、温かい光の輪の中に……ただ、一緒に混ぜてほしかっただけなのね」


ルナはふわりと穏やかに微笑むと、細かなパステルカラーの光の粒子となってほどけ、祝福の息吹のように智也の胸の奥へと溶け込んでいった。


◇◆◇


風の匂いにハッと息を呑んだ時、彼らはいつもの見慣れた結城学園の屋上に立っていた。


街を覆っていた異常気象の雪は跡形もなく消え去り、頭上にはどこまでも突き抜けるような冬晴れの青空。遠くからは、車が行き交う日常の喧騒が穏やかに響いてくる。


「……終わったのね。本当の意味で、私たちの『今』が」


あやめが白銀の太刀を静かに消し、胸に手を当てて深く息をついた。


「ちょっと智也! あんた最後にルナの手を握った時、ちょっとデレっとして鼻の下伸ばしてなかった!? あたし、すぐ隣でバッチリ見てたんだからね!」


「い、痛たたっ! 引っ張るなみくる、そんなわけないだろ!」


耳をぎゅうぎゅうと引っ張るみくるの抗議に、智也が情けない悲鳴を上げる。


「あらあら、みくるちゃん。智也くんは世界を救ったんですもの。これくらいの役得は、私の計算の許容範囲内よ」


このみが悪戯っぽく眼鏡を押し上げ、けれどその瞳の奥の独占欲の灯を隠そうともせずに微笑む。


「ふん。わたくしが、ルナさんの分まで智也さまを甘やかして差し上げますわ。手始めに、結城家を敷地ごと買い取って地下シェルター付きの豪邸に全面改修いたしましょう」


「結さん、それ実質的な囲い込み……!」


「……お兄ちゃん。おかえりなさい。もう、誰にも渡しません」


紗季が一切の容赦のない強い眼差しで、智也の左腕を胸元に抱きしめ、絶対に離さないとばかりに体重を預けてくる。


騒がしくて、逃げ場がなくて、胃がキリキリと痛むほど愛おしい、最高の日常。


智也は隣に立つあやめの手を、右手でしっかりと握り返した。


「……あやめ。俺、決めたよ。前世の因縁がどうとか、太古の契約がどうとか、もう関係ない。俺は、誰か一人になんて選べない。俺を選んでくれた、この世界一強くて重いみんなと一緒に、この時代で最高に幸せになってみせる!」


あやめは呆れたように息を漏らし、それから、今世で一番の恋する少女の満面の笑みを咲かせた。


「ええ。……覚悟しなさい、智也。私の愛は、四百年分……ううん、原初から積み重なって、もう誰にも止められないんだから」


◇◆◇


数ヶ月後。


結城家の居間には、今日も当たり前のように、ルナも含めた六人、そして幸人を交えた大皿料理が所狭しと並んでいた。


智也の「いいなずけ」問題は、結局のところ誰一人として妥協することなく、全員が「自分が一番の正妻」を主張する凄まじい熱量の日々が続いていた。


胸の奥底で、かすかに嬉しそうに囁くルナの気配を感じながら、智也はリビングを埋め尽くす少女たちの賑やかな怒号の渦中へと飛び込んでいく。


運命は変えられる。愛は時を超える。そして――「いいなずけ」が五人、いや六人いたって、それはそれで、間違いなく最高に楽しい。


結城智也の、長くて短い、そして世界一騒がしい青春の物語。


それは、これからもずっと、この青空の下で続いていく。


「――ああもう……! 俺の許嫁(いいなずけ)たちは、世界一最高で、世界一重いーーーっ!」


智也の幸せな絶叫とともに、あたたかな光の粒子が画面いっぱいに優しく弾け、物語は最高のハッピーエンドを迎えるのだった。


(『ゆめみる、ゆき、あやなす、むすび。』全編・完)

瀬能 みくる & ゆめあやガールズが歌う、

「ゆめみる、ゆき、あやなす、むすび。」の挿入歌兼最終回ED主題歌です


『あやなす縁(えにし)、むすぶ明日(あした)』


架空アニメ 「ゆめみる、ゆき、あやなす、むすび。」 挿入歌兼最終回ED主題歌


歌:瀬能 みくる & ゆめあやガールズ


https://suno.com/song/751f15f4-7284-4281-b7d4-98032dada4c2

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