第26話:夢の導き――クロノスの警告
この花畑の夢を見ると、必ずクロノス様にお会いできる。
「クロノス様……お会いできて嬉しいです」
クロノス様へと歩みより、お辞儀をすると、クロノス様は静かに微笑みながら頷いた。
『エレノア……幸せか?』
「はい。とても……幸せです……けれど……」
『どうかしたか?』
クロノス様はそう聞いたけれど、わたくしの考えていることをご存じのはずだった。
何故ならわたくしは、わたくしの日々を、気持ちを、全てクロノス・ダイアリーに綴り続けているのだから。
「ウイリアム殿下は優しくて、とても幸せです。だけど……幸せすぎて、怖いのです……」
わたくしがそう言葉にすると、そうか、と言ってクロノス様は息をついた。
『そなたが幸せなら、我も嬉しい……。だが、幸せすぎて怖いというその気持ち……気にしなくてもよい、とは我も言えぬ……』
「え?」
どういうことなのだろう?
縋るようにクロノス様の顔を見つめたわたくしに、クロノス様は言った。
『……気をつけよ』
「……え?」
胸がざわつく。
緊張して上手く息ができない中で、わたくしはなんとか声を絞り出す。
「何かが……起こるのですか?」
わたくしの問いに、クロノス様は困ったような表情になった。
だけど、何が起こるのかは教えてくれない。
『未来は定まっていない。だから、我が危惧していることは、起こらぬかもしれぬ。未来は、人の心と行動で、いくらでも変わるのだ。未来を作るのは、人間の想い、行動なのだ』
「……それでは……」
『何が起こるとは言えぬ……だが、エレノア……気をつけよ……』
その声を最後に、クロノス様の声が遠ざかり、視界が白く染まる。
わたくしは目を覚ました。
今日は、ウイリアム殿下とのデートの日だ。
昨日ウイリアム殿下が言われたように、今日を楽しもうと思っていたけれど――不安な気持ちが胸に残る。
「気をつけよう……」
何が起こるのかはわからない。
クロノス様の言われるように、何も起こらないかもしれない。
けれど、何かが起こってからでは遅い。
もちろん、ウイリアム殿下には王家の護衛がついているだろうけれど、わたくし自身もクロノス様に言われたように、気を付けておこうと思う。
そして――。
「そして、ウイリアム殿下とのデートを、心から楽しもう……」
これはとても大切なこと。
わたくしはウイリアム殿下との時間を、大切にしたいから――。




