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ゆるふわな感じで進行します。
足を運んで頂き、ありがとうございます!
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「リュダール、こっちに来て?紹介するわ」
手招きをしたら、どこか緊張した様子でリュダールがこちらへ歩いてくる。テオは「よぉ、久しぶりー」と軽く挨拶をしているがリュダールの表情は暗い。
「テオ、久しぶり。元気だったか?」
「おー。元気だぜ。お前、やらかしたらしいな。うちの姫はお怒りだぜ?」
「……うん」
「ま、しょーがねーな」
「努力する」
「だな」
テオと言葉を交わしながら、さらにしゅんとしたリュダールをリーン様に紹介した。
「リーン様、彼が私の婚約者のリュダール・ルダインです。リュダール、こちらは私の釣りの師匠のリーンハルト・ジェラス様よ。ジェラス商会の次期会長なの」
「初めまして、リーンとお呼びください」
「初めまして、俺はリュダールと」
二人が握手を交わしているのを横目に、モニカがあの箱を手にやって来た。私は軽く頷くと、リーン様に挨拶をしてみんなとは少し離れた所に設置された場所に移動する。
「リュダール、思い出を語りましょうか」
「うん、ありがとう」
「リュダールが一番気に入っている物はどれ?」
「全部だけど、特にこの薔薇の刺繍のハンカチかな」
「そう、それはね…」
一つ一つ、その時の思いや、苦労した事を説明してとうとう最後の一つになった。それは、なんの形かもわからないような手の平サイズの毛糸の塊。そう、私が盛大に失敗したマフラーになるはずだった編み物の跡だ。
「これは、マフラーになる予定だったの」
「そうなんだな、でもこれはこれで可愛いよ」
「そう?あまりに出来なさ過ぎて、もう編み物はしないと誓ったわ」
「ティアラは器用だから、そんな事を言うのが意外だな」
「ふふ…あなたの知らない私ね」
「そうだな」
ふ、と優しい笑みを見せるリュダールに絆されそう。でもやるのよ、私。今やらないで、どうするの!変わるのよ、ここから!!
幸せの中に、私も入るの。
「リュダールにプレゼントする物は、私が納得した物じゃないと嫌なの」
「え?」
「だから、これらは非常に不本意なのよ?」
「あっ!!!」
リュダールがお気に入りだと言ったハンカチ一枚を残して、私はそれらを全てお肉を焼く為に設置された火に放り込んだ。
「あぁ!!ダメだ!!燃える!!」
リュダールはパニックになり、ぼうぼうと燃える炎の中に手を伸ばそうとした。私はその手を掴み「リュダール、あれは要らない物よ」と彼を止める。
伸ばそうとしていた手を私が掴んだから、リュダールはもう手を伸ばせない。ただ呆然と灰になりゆく物達を見つめて、「どうして…」と呟きぽたり、と涙を溢した。
「リュダール、あれは私が努力した証ではあるけどそれをあなたが持つのは違うわ」
「だって…あれは…俺の為に…ああ…燃えて…」
「私は全力で仕上げた物をあなたに持ってもらいたいの、それが私の気持ちの全部だから。あなたを想って仕上げた一品よ。それ以上はないの」
「ティアラの努力の証も欲しい…全部俺のにしたい…」
ポロポロと零れ落ちる涙に炎が映って綺麗だな、とどこか遠くで思った。途中経過も大切にしてくれる気持ちは嬉しい、でもその為に私を後回しにするのは許せない。
「あなたが私を想うなら、物ではなくて私本体をちゃんと見て。その中に全部眠っているから。あれらを見て嬉しくなるんじゃなくて、私からその話を聞いて胸に仕舞って?物の為に、私を泣かさないで…」
「…っ!!…ティアラ…俺……」
「だから、燃やしたの。失敗作より劣るなんて許せない。あなたの一番は何?」
「…ティアラしかいない…」
ぎゅっと瞑った目からもう涙は溢れていない。わかってくれたら、いい。大切なのは証拠品じゃない、
私の気持ちなんだと。自分がした事は、私を傷付ける行為なんだと。
「まだ、あれが必要?その為に私に嘘を吐く?」
「もう二度としない。これからは横で見てる。出来上がる過程を」
「ふふ…希望に満ち足りた言葉だけれど、私、半年はここにいるから」
「…え?」
リュダールが唖然とした顔で私を見る。当然でしょう。私はまだ許したわけではないもの。
「私を半年も泣かしておいて、これくらいで済むわけないでしょ?馬鹿なの?」
「…本当にごめん…」
「許さないわ」
「……うん」
リュダールは一瞬だけ苦しげな顔をしたけど、すぐに真顔に戻った。彼なりの決断をしたのだろう。私も、前に進む為に必要な期間を貰う。卒業パーティーには向こうに戻ると決めてこれからの半年で成長するつもりだ。
「まず、半年苦しめられたから、あなたも半年苦しみなさい。半年の間、一切あなたとは会いません。無断で会いに来た場合、即婚約は解消します。陰から見るのもダメ」
「……わかった。手紙は…許されるだろうか…」
「それはいいです」
「良かった」
手紙くらいは私も欲しい。お互いに短い時間でどれだけ成長できるか競争よ。そう言うと、リュダールは屈託なく笑った。私も、誰に遠慮するでもなく笑った。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
次回をお楽しみに!!




