復讐
序章の続きの話になります。
指摘のあった箇所を修正しました。
とある滅びた村の一角に一人の男が立っていた。
彼以外の人間は既に地面の中におり、生きている者は居ない。
彼の周りにあるのは焼け落ちた家々と、地面に刺さっている複数の墓標のみだった。
それは彼が、木の板で出来た簡素な物ではあったが何もないよりはましだろうと思い、家族や村人達の供養の為に墓標代わりに作った物だ。
本来、彼の住む地方では人が亡くなった時は、火葬してから丈夫な棺に骨を入れ、地面に埋葬し石で出来た墓標を建てるのが一般的である。
だが、彼一人で多くの村人達を供養することなど出来ず、やむ終えず埋葬と簡易的な墓標のみに留めた。それでも数日は要したが。
村人全員分の穴を掘るだけでもかなりの重労働ではあったが、彼は遺体をそのままにはして置けなかったのだ。
彼は次に旅立ちの準備を行う為に、燃え残った家々から使えそうな物をかき集める。
その結果、どうにか最低限の物は揃い旅支度が完了する。
「……それじゃ行ってくる。お前らの仇は絶対取って見せる……!」
旅立つ前に妻と子供のお墓に立ち寄り、彼はこれからの決意を表明した。
彼はそっと左手の小指と薬指に填めた指輪を撫でる。
装飾の無い質素な物ではあるが、小指に填めた指輪は彼が結婚する際に妻にあげた物だ。今ではその指輪以外に装飾品等を身に付けていなかった妻の、唯一の形見の品となってしまった。
そして彼の薬指には対となる指輪が填まっている。
彼は暫くの間、二つの指輪を撫でながらお墓を眺めていたが、前振りも無しにお墓に背を向け歩き出す。
その胸にあるのはただ一つの決意のみ。
そうして、彼の長い……いや永い復讐の旅が始まった。
◆◆◆◆◆
村を出た彼が考えたのが、まずはこの国から脱出する事だ。
何故かと言えば、村人達の遺体を運ぶ際に見つけた折れた血塗れの剣。
只の剣であれば気にしなかったであろうが、その剣には一般的な剣とは違う所があった。それは剣の柄に飾られた一つの紋章……それはこの国の紋章だったからだ。
結婚指輪を買いに王都に出掛けた際、巡回していた正規兵が身に付けていた剣にも同じ紋章があったのを彼は覚えていた。
そこから導きだされる答え……彼の村を襲ったのは盗賊や瘴魔の類いでは無く、この国だと言う事だ。
その事に気付いた彼は、この村が計画的に襲われたのだと判断、恐らくは彼を狙ったものだと推測した。
彼には大きな秘密がある。その秘密は妻以外が知る筈が無いと今までは思っていた。
だが、村を襲われた今では知られていると考えていいだろう。
そうでないと何も無いこの村を自国が滅ぼす理由など無いからだ。
もし彼が目的であるならば、国はまだ彼を探している可能性がある。
それに仇を討とうにも相手は国、それは個人でどうにか出来る範囲を越えていた。
であるなら、まずは追っ手を振り切る為にも国を出る必要がある。
それから地力を上げ協力者を集う。
この国の国王は評判悪く、彼と同じ様に反感を持つ者が、少なくない人数出奔したと聞いた事がある。その者達と徒党を組み国を討つ。
それは簡単な道では無いだろう。失敗する可能性が圧倒的に高いそんな道だ。
だが、やるしか無いのだ。全てを奪われた彼にはもう復讐以外の道は残っていないのだから……。
そして今彼は見付かる危険性を為るべく排除しようと、道の無い山や谷等を選び歩いていた。この国を出るまでは街道等を通る訳にはいかない。
彼の見た目は只の旅人、見られたからと言って直ぐ様どうにかなるわけでも無いだろうが、万が一という事も考えられる。
特に街道沿いの国境は危険だろう。かなり高い確率で待ち伏せされている可能性がある。
幸い狩人である彼にとっては山越えはそれほど苦では無かった。
そして何事も無く、国境を越えた彼は隣国の最初の街へと辿り着く。
その街は彼が居た国の王都と比べれば街の規模こそ小さいが、悪政により活気が失われた王都よりも活気に満ち溢れていた。
そんな中を彼は人に道を訪ねながら、とある場所に向かっていく。
そうして彼が辿り着いたのは、この街の中でも一際大きい建物──冒険者組合だ。
まず、地力を上げるにはどうしたら良いか、そして協力者を求めるに辺り、人との繋がりも不可欠だと思い、考え付いたのが冒険者組合に所属する事だった。
彼は狩人ではあるが魔物もある程度の強さなら倒すことは出来る。だがそれは、一般人よりはましという程度だ。
復讐を遂げるにはそれでは足らない、自身を鍛える必要がある。しかし、それだけでは生活は出来ない、となるとお金を稼ぎながら鍛える事が出来、かつ出自を深く問われない職業となると冒険者が一番最適だからだ。
冒険者組合は犯罪者でなければ、試験を通過するだけで所属する事が出来る。
それに、もしかしたら彼の様に彼の国から逃げた者も居るかも知れない。
そういった考えから彼は冒険者になる事を決めたのだった。
◆◆◆◆◆
無事、冒険者組合に所属した彼は討伐系を主に次々と依頼をこなしていった。
才能が有ったのか彼は急速に頭角を表し、この街の冒険者の中では知らぬ者は居ない程有名になっていた。更には初めの思惑通り、彼の国に恨みのある数名の仲間も出来た。だが、組織に対抗するには組織で対抗する必要性がある。
個人の圧倒的な力があるわけでも無く、数名の仲間はいるが、彼に協力してくれそうな組織との繋がりは現状全く無い。
彼の国には反抗勢力が存在している事は掴んだが、隣の国からでは繋ぎがどうしても作れなかったのだ。
反抗勢力はかなり慎重に動いている為、存在する事は分かっていても所在が掴めていない。それも仕方がない事だろう。所在がばれれば、あの国王の性格からして直ぐ様潰しにかかるのは目に見えている。
そして彼らの中で強行して繋ぎを作る意見と、慎重に動くべきとの意見で分かれており、方針が決まっていないのも原因の一つだ。
そんな状況が続いていたある日、ある一報により動かざるを得ない出来事が起こる。
その一報とは──
──反抗勢力が彼の国の副都を占領した──
この火種が後に複数の国を巻き込む戦争へと発展するのであった……。
次話より第二章ですが、書き上がり後の投稿予定です。
後3、4話で書き上がるので、それほどお待たせはしないと思います。
ブックマークはそのままで!(>_<)




