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類は友をよく呼ぶ

打てない銃はただのモデルガン

「はぁ!? 愛しいだぁ? んな事言ってねぇだろうが!」


 おっと、つい口調が荒ぶってしまった。 ノット・ノウンではこういう口調の奴しかいないから、つい染まりかけてしまった。 冷静に、ステイクール。


「あー、ゴホン。 俺とザリアはそういう関係ではない、という事を先に言っておくが、良ければ話を聞かせてくれ」


 今更敬語も照れくさいのでタメ口となってしまったが、テッカは優しく微笑み返してくれた。 うーん、正統派イケメンだ。 緑がかった髪に下に縁がないタイプの眼鏡が似合うザ・イケメンって感じだ。 APPいくつだマジで。 鑑定してみるか。




【名前:エクス=エキテス】


【種族:ヒト種】


【スキル:???の寵愛】



 見りゃわかるわ。 ああいや、テッカっていうのは偽名か。 本名はエクス、の方だろう。 それからスキルも文字化けしてて前半は読めないが、後半の『寵愛』って文字は読める。 俺の加護と似たスキルなのかな。 でも詳しいステータスとかは見れない。 うーん、スキルを取るだけじゃダメなのか。 制限でもあるのだろう。


「構わないさ。 私と君は仲間、なんだからね」


 話が飛んでしまった。 それにしても仲間、か。 何だか怪しいけど、悪い奴でもなさそう、かな?


「今んとこはそれで納得しとくよ。 俺はサカキだ。 テッカの話詳しく聞きたいんだけど、場所を移すか?」


「そうだね、良い場所を知ってるからそこにしよう。 イルナちゃーん、朝ご飯ごちそうさまー! 美味しかったよー!」


「それはどうもー!」


「俺も満足した。 夜も楽しみにしてるよ」


「どうもどうもー!」


 忙しそうにしているイルナに声をかけ、宿を後にする。




「どこへに行くんだ?」


 スタスタと俺の前を迷わず歩くテッカに声をかける。 俺より身長が高い分(180以上ありそうだ)足も長く、つい小走りになってしまう。 俺は172センチはあるから小さくはない、と思う。 まあ180欲しいかって言われたらそりゃ欲しいが。


「人に話を聞かれない場所だよ」


 顔を前に向けたまま器用に声だけ飛ばした。 よく通る声だから出来る芸当だ。


「そんな場所この街にあるのかよ」


「探せば結構あるよ。 サカキ君は探し方をまだ知らないだけさ」


 俺より大分年上に見えたが、伊達に年は重ねてないってことか。 真似しようにもすぐには出来ないな。


「ここだよ、意外だろ?」


「意外も何も、ここただの飲み屋じゃねぇか!」


 特筆すべき事もない、ただの飲み屋だった。 強いて言えばまだ朝なのに客が結構いるってくらいだ。


「まあまあ、こういう所って案外誰も盗み聞きなんてしないんだよね」


「そういうもんかね……」


「とにかく入るよ、空いてる端っこの方に座ろう。 私が注文してくるからサカキ君は座ってて」


 中は静かに飲む人が半分、残りは自由勝手に飲んでるって感じだ。 テッカがマスターらしき人に話しかけに行くのを横目に見て、俺は丸テーブルを一つ確保した。 イスは、無くてもいっか。


「おまたせ、ここはミルクもイケるんだ。 朝から酒ってのもアレだし、いいよね?」


「大丈夫だ」


 それどころか酒飲めないんですけどね。 付き合い程度には飲めるようにしておきたい。




「さてと、本題に入ろう。 君に声をかけた理由だが、それは私と君に共通の敵がいると分かったからだ」


「敵っていうと、領主サマか。 アンタはさっき嫁が囚われたとか言ってたが、俺らと同じく黒犬に襲われたのか?」


 黒犬とあえて言ったのは、覚えたての言葉を使いたがる訳ではなく、少しは事情を知っているのを装いたかったからだ。 何も知らないって思われたらカモにされかねないし、用心するに越したことはない。


「いや、私の場合家を留守にしている間にやられてしまった。 『取り返したければ結び目に来い』ってご丁寧に置手紙を残していたよ」


「お互いツいてねぇな。 でも、取り返しに来いって事は、何か具体的な方法があるんだな?」


 わざわざ手紙を残すくらいだ。 向こうが形としてチャンスを残しているのだろう。


「その通りだ。 領主直属の改造兵士『黒犬』部隊との勝ち抜き戦で五連勝をする事、それだけが唯一の方法だよ」


 やはりそう来るか、何となく予想通りだわ。 権力者は力でどうにかしようみたいな所があるよねー。


「ただ、この方法で勝ち残った人はいない。 たとえ五連勝してもそのままリンチされ、勝利をもみ消されるらしい。 つまる所、結局これもただの撒き餌にすぎないのさ」


「なんだ、意味無いじゃねーかそれ。 そんな話聞かされたらホイホイ参加するアホいないだろ」


 勝っても意味がないなら参加する理由がない。 まさしく死にに行くだけだ。


「話は最後まで聞くものだよサカキ君。 確かに、この正攻法には勝機は見いだせない。 けれど、意思を同じくする仲間がいるなら、一つ方法が生まれる。


  いいかい、黒犬部隊()()が領主の『人集め』を主に、管理やその後の処理も任されている。 つまり、勝ち抜き戦で勝ち残る程に黒犬はそちらに集まり、牢の警備が手薄になるんだ。 そのスキにもう片方が侵入、確保する」


「勝ち抜き戦はあくまで陽動、本体はもう一つってか。 なるほど、シンプルだけど良い作戦だ。 でも、問題がある、と」


 俺らで考えつく作戦ならとうの昔に実行されているだろう。 しかし成功した前例が無いっていうのは、致命的な障害があるという事か。


 テッカが顔を寄せるようジェスチャーし、周りに警戒しつつ自然に顔を寄せた。


「問題は二つだ。 潜入出来るように十分な数を減らすためには、五連勝した後最低五分は生き残る必要がある。 一分で侵入、二分をある事に使い、一分で確保、一分で脱出って計算だけど、相当ギリギリだね。 とにかく、五連勝後に押し寄せる黒犬を対処しなければならないのが一つ。


 もう一つは、牢には最強の黒犬が門番として立ち塞がる事。 正体は領主によって作られた化け物『合成獣キメラ』。 さっきの二分でキメラをどうにかしなくちゃいけない。 噂だとそいつが門を守っている以上、黒犬でもただでは門の中に入らないとかなんとか。 下手したらこっちの方が大変かもしれない」


 黒犬のリンチにキメラとタイマン(制限時間二分)ね、絶対無理!!! 黒犬を一人倒すのでも大変だったのに大勢となんてまるで無理、キメラなんてもっと無理だ。 初めて戦う魔物がキメラって、それダメだろ。 キメラはもっと中盤だろ。


 優雅にミルクを飲むテッカに投げやりに答えた。 投げやりにもなるわ。


「なるほどなるほど、よーく分かった。 俺らにはあと十年は無理ってのがよく分かったよ」


 しかし、俺の態度に顔色一つ変えず、テッカは俺の目を見つめる。


「そう拗ねる事はない。 私は、勝てる見込みがあるからリスクを背負ってでも君を誘ったんだ」


「本気で言ってんのかそれ。 自分で言うのもアレだが、俺は初心者だぞ」


「それも知ってる。 でも、その上で君を選んだ。 全てを補って余りあるスキルを持つ君に、ね」


 テッカはそう言い妖しい笑みを浮かべた。


(まずい、こいつにはスキルがバレてる!! くそ、鑑定持ちってわりかし多いのかよ!! やばい、ここで仕留めるしかないーー!)


 急いで体制を整え、戦闘に意識を切り替えるも、テッカは微動だにしなかった。 それどころか机に戻るよう促した。


「君は一つ勘違いをしている。 別に私は鑑定持ちじゃないし、君を騙すつもりもない。 初めから言っているだろう、私と君は仲間、だと」


 仲間、だぁ? 第一初めから仲間なんて言ってくるやつを信じる俺が馬鹿だったよ!


「なら何で俺のスキルをーー」


「私も君と同じだ、『女神の加護』持ちなのだよ。 いやはや、世界は狭いな」


 ………………本当に、狭すぎる。

スタンド使いは惹かれ合う……


実際、加護持ちは総じて幸運値高めなので割とあります。

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