同類はバーにいる
タイトルつけるの難しいですね。
「あんまり驚かないんだね。 久しぶりに言ったから緊張してたんだけど」
絶対嘘だ。 緊張どころか楽しんでいたまである。 表情は一切崩さず、汗ひとつかいていなかったさっきまでとは打って変わって今は笑みを浮かべている。
「驚きすぎて言葉も出ないわ。 こっち来てから分からない事だらけで脳みそパンクしそうだ」
古竜に婚約に黒犬に女神の加護持ち、一生のイベントがここで終わったんじゃないかってくらいの密集度だ。
「はは、私は長生きしてる方だから同類と出会う事も割とあったけど、サカキ君は初めてかい?」
「初めても何も、俺と同じ奴がいるなんて知らなかったよ……」
考えてみればいてもおかしくはないが、そうそう出会う事はないと思うんですよね。 運の使い方が下手くそすぎる。
「つーか、何で分かったんだ。 鑑定持ってないなら今までどうやって見抜いて来た?」
「あはは、確かに鑑定は持ってないけど、もっといいもの持ってるからね」
いいもの? 加護に加えてユニークスキル持ちとかいうチートかよ。
「スキル一覧には鑑定系は一個しかなかったはずだ」
「そりゃスキル一覧は人それぞれだからね?」
「え?」
「ん?」
「説明頼む。 今すぐ頼む」
ザリアが説明してない事がたくさんあるなーこれは。 回収したら言いたいことがまた一つ増えた。
「スキル一覧の紙は元々は白紙だったろう? あの紙に触れる事でその人専用のスキル一覧になるんだよ。 具体的には、その人の素養を元にした一覧だ。 格闘技をやっていたら《体術》スキルが解放されるし、楽器をしていたなら《音楽》が解放される」
そういえば小学生の頃柔道をやっていたっけ。 母さん曰くすぐ辞めたらしいけど。
「でも、この判定はすごーーーくテキトーで、極論包丁持つだけで剣術が解放されるって話だから、きっと君の女神は言う必要がないって考えたんだろうね」
なら仕方ないのかもしれない、かな? ザリアに説明
「結果として皆大体のスキルは解放されてるからスキル一覧は似てくるって訳か。 それならなおさら俺のスキルを見抜いたアンタのスキルは何だ?」
「気になるかい?」
ザリアみたいな反応はやめて欲しい。 可愛くもない男がやると素でウザい。
「あぁ、気になる。 教えてくれ」
「なってないなーサカキ君。 歳上に対する礼儀がなってない。 『教えて下さい』、だろ?」
最高に良い性格してるぜコイツ。 友達になれそうだ。
「………………おしえてください」
「ふむ、まあ良しとしてあげよう。 答え合わせの時間だ。 まずは最初に確認しておこう。 君は、転移者だね?」
何でもお見通しってか。 今更隠す気も起きない。
「……アンタのユニークスキルは随分便利だな」
「スキル? これは簡単な推理だサカキ君。 初心者らしき歩き方の冒険者が、新品で高級な装備で、結び目の高級な宿に泊まっている、これの答えは二つだ。 成金息子の珍道中か、不幸な転移者か。 私はすこーし長生きしてるから転移者の存在も知っているのさ。 そこまで分かったらようやく私のスキルの出番さ」
そう言い、テッカは髪をかきあげ、眼鏡を外した。 気づかなかったが眼鏡には薄い色が入っており、まるで目を守っているようだった。 また、テッカのその目はエメラルドグリーンと呼ぶに相応しい、綺麗な緑色だった。
「《解析の女神の寵愛》、それが私の唯一無二のスキルだ。 能力は『対象の完全解析』、鑑定の遥か上をいく情報を得られる。 名前年齢身長体重所持スキルから昨日の晩御飯に至るまで、文字通り全てだ。 一日一回しか使えない上、同じ相手には一度のみの制限付きだけどね。 ちなみに眼鏡してないと常に視界に入った物に勝手に鑑定して情報酔いするってオマケ付き」
眼鏡をかけ直し、こちらをニヤニヤしながら見つめてくる。 反応を求めてるんだろうが、さっきまでの爽やかな笑顔を返してくれ。
「うちの女神様と神様とは大違いだな。 良い女神様に出会えたようで羨ましい限りだ」
「おや、それは違うな。 よく私のスキルを見たまえ。 君のは《加護》、私のは《寵愛》だ。 その違いは大きい」
そういや鑑定した時、一個だけ見えたスキル名は何とかの寵愛だったっけ。
「何が違う?」
尋ねると、テッカは馬鹿にしたような目を向けてくる。
「少しは自分で考えてみたらどうかな?」
……確かに俺は質問ばかりしてる気がする。 初心者っぽいと思われるのはこういうところもあるんだろう。 素直に考えたみるか。
俺の加護とテッカの寵愛の違い、か。 言うまでもなく能力の強さが違う。 ザリアの加護はステータスのアップとたまにダイスロールでの能力向上。 それに対してテッカの寵愛は制限こそあるが、相手の能力や弱点を知れる。 どう見ても差がある。 差はあるが、だが、これらを比べるのは間違ってないか? 俺のがパッシブスキルだとするとテッカはアクティブスキル、スキルの種類が違う、だとすると比べるべきはパッシブ同士、アクティブ同士。 俺のパッシブとアクティブ、あの時のアレが俺のアクティブスキルだとすると。 あぁ、分かった。 簡単な事じゃないか。
「その顔からして分かったみたいだね」
相変わらずテッカはニヤニヤしてるが、今度は満足そうにしている。 お望み通り今度は俺が答え合わせしてやるよ。
「寵愛は加護の一段階上だ。 加護が女神の恩恵に預かるだけだが、寵愛は女神の力を限定的に使える。 そういう事だろ?」
割とキメて言ってしまったが確信はない。 間違ってたら死にたくなるぐらい恥ずかしいなこれ。 頼む、合っててくれ!
「正解だよサカキ君。 INTの高さが見かけだけじゃなくてよかったよ」
あーーーーー安心した! 良かったーーー! 心配してたの臆面には出さないけどな! でも、『寵愛が加護の上なら』、これでまた気になる事が出来てしまった。 だが、質問する前にテッカが口を開いた。
「分かってるよ。 今度はどうやったら寵愛になるか、その質問には答えてあげるよ。 サカキ君はニアミスしてるし、薄々分かってると思うし。 答えは女神と関係を結ぶ事、有り体に言っちゃうと『結婚する事』。 ほら、すごく惜しかったなサカキ君」
「ニアミスっつーか、寵愛なんてスキル名からしてそうだろうと思ったよ」
加護から寵愛。 上下の関係から対等の関係へ。 実際そのままズバリスキルに表れている。
「私はサカキ君にスキルを使ったからザリアさんとの関係も知っているけど、いやはや君も真面目というか、難儀な性格だねぇ」
「そりゃどーも。 つーかアンタ、そんなチートスキルがあるなら一人で行けるだろ!」
そもそも女神が人間に捕まるって時点でおかしいけどな。 するとテッカは恥ずかしそうに頭をかいた。
「それがさ、二回目なんだよね。 私の妻のエキテスが捕まって回収するの」
「マジで言ってんの? わざとやってんだろそれ」
間髪入れずに答える。 ドジっ子系女神なのか? それとも天然なのか?
「100%わざとだよ。 エキテスが本気になればこの街を消し炭に出来るくらい魔術の才があるっていうのに、どうやら彼女は囚われのお姫様の役がお好きらしくてね。 前回の時から私を騎士と勘違いしてる節がある。 意地でも私が行くまで牢に居座りかねない」
うわぁ…… 何だかすごく面倒そうな女神だ。 ザリアに似てる気がしなくもない。
「テッカも大変なんだな……」
「その憐れな物を見る目はやめてくれ。 ゴホン、前回は黒犬全員とキメラにスキルを使って適当に倒したさ。 でも今回のキメラは前回と同個体だけどかなり進化している。 涙ぐましい領主の努力のおかげで、私一人じゃ倒せなくなって困っているところに君が来たって訳だ。 どうだい、お互いの女神を助け出すため協力してくれないかな?」
二部は長めの予定です。




