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新しい出会い

そんなクロダの行く先にパン屋さんが見えてきました。

こう見えてもクロダ、パンには目がないのです。

舞ちゃんがおやつで買ってくるパンのおこぼれをクロダはいつも楽しみにしていました。


「そう言えば、美味しいパンなんて随分と食べてないなぁ…」


クロダがパン屋さんのショウウインドゥでじーっとパンを眺めていると

そこに一人の女の子が現れました。


「うわあ、かわいいねこさん♪」


クロダがその声にビックリしていると女の子は素早くクロダを捕まえました。

普段なら俊敏なネコは小さな女の子に捕まるようなヘマはしません。

ただ、その時クロダはお腹が空いていたのとパンに夢中だったのとで

呆気ないくらい簡単に女の子に抱きしめられる事になったのです。


「わたしはねぇ、ゆいってゆうの、ねこさんおうちがないの?」


「離せよう、こらあっ!」


クロダは必死でゆいちゃんから逃げようとしました。

でもゆいちゃんはとても必死に抱きしめていたのでクロダにはどうにも出来ませんでした。

そしてクロダは成す術もなくゆいちゃんの家に連れて行かれました。


「じゃあーん、ここがゆいちゃんのおうちでぇす!どう?きにいった?」


ゆいちゃんの家はまだ新築ピカピカの一戸建てでした。

家も家具も窓から差す陽射しもそれから漂ってくる匂いまでも全てがキラキラに輝いていました。

こんな所に住めたらいいなぁと思わずクロダも思った程でした。


「唯ちゃん、帰ってたの?」


そう言ってピカピカの家の奥から出て来たのはどうやら唯ちゃんのお母さんのようです。

お母さんもまだ若くて美人でそして優しそうでこのピカピカの家にとてもよく似合っていました。


「ただいま、おかあさん♪あのネ、ゆいたんじょうびプレゼントこれがいい!」


唯ちゃんはお母さんにクロダを見せました。

お母さんはそれを見てニッコリと笑いました。


「あら、可愛いネコちゃんね。何処で出会ったの?」


「うんとね、パンやさん」


「そうなんだぁ…

 でもその猫ちゃんもしかしたらどこかのおうちの猫ちゃんかもしれないわよ?」


「そんなことないもん!このねこちゃんゆいちゃんのだもん!」


「しょうがないわねぇ…」


お母さんはクロダがどこかのお家の猫だといけないと思って唯ちゃんに元の場所に

帰すように説得しました。

でも唯ちゃんは頑と言って聞き入れてくれません。

よく見るとクロダは三ヶ月のノラネコ生活で体が大分汚れていました。

その汚れ具合を見てお母さんもクロダが現役の飼い猫でない事だけは分かりました。


そこでお母さんは唯ちゃんの情操教育に役立つと思い、クロダを家で飼う事を認めてくれました。

ただ、条件を一つだけつけて。


唯ちゃんがその猫の世話をする事。


「唯ちゃんも、もう一年生なんだから、お世話出来るわよねー?」


お母さんがちょっとだけ意地悪っぽく唯ちゃんに尋ねました。


「もちろんよ!わたしがりっぱにそだててみせるんだから!」


唯ちゃんも自信タップリに答えました。

こうして、クロダは唯ちゃんの家にお世話になる事となったのです。

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