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[立体作品]モンスター美少女たちのパパになったら、全員俺を殺しにくるんだが!?  作者: 矢崎 那央
番外編 第3幕『心も水着も滑ってズレて…どうなっちゃうの!?魂のずぶ濡れフルスライダー』
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Scene12:『ぬれて、すべって、ふれてしまう』


 水面が、静かに流れ出す。


 


 ゆるやかな傾斜は、やがてうねりとなり、

 霧を含んだ冷水が、大きなスライダーのように延びていく。


 

 その長さは、もはや視界の端を越えていた。


 まるで空と地をつなぐ滑走路。

 天と記憶をつなぐ——魂の坂道。


 


 「……これ、ほんとに滑るの?」


 飛鳥が、スライダーの縁に翼をついてそっと覗き込む。



 下のほうは、霞んでいて見えない。

 水音は優しく、でもどこか誘うようだった。


 

 「これ……アトラクションのノリだけど、ぜったい本気で試されるやつだよね……?」



 「ええ。そうですねぇ。

  これは、“記憶の滑走路”。楽しい記憶ばかりならいいけれど、誰しも辛かった思い出、思い出したくない過去はありますから」



 金色姫が、柔らかな微笑みのままそう告げる。

 しかしその声には、ほんのわずかに重さがあった。



 「過去の記憶は、ときに宝物でも……ときに心を裂く刃にもなります」


 

 「……でも、行くよ」


 飛鳥は、迷いなく一歩を踏み出す。


 

 「ノーニャちゃんを助けるって決めたし……

  それに、たぶん……こういうのも、全部、必要なんだと思う」



 「記憶の滑走路、ねぇ。こないだ生まれたばかりのボクには、過去らしい過去なんて無いけどね」


 マハが、いつもの笑顔で笑ってみせる。


 「へっ、なら楽勝じゃん。真っ白なキャンバスは、描き放題だぜ」


 ロメラはそう言って笑った。


 「よっし、んじゃ、いっちょ滑るか!水着回だしな!」



 「ぎゅんって滑って、びゅんって飛んで、ズバーンって行こうぜ!」



 「それ全部、音だけで説明してない……?」



 ヴェルミアは少し不安そうに、でも前を向いてうなずいた。


 「うん……行く、わたしも……」



 アクウェリーナは何も言わない。

 でも、“ぴとっ”と尾鰭で飛鳥の手に触れて、そっと滑走体勢に入る。



 金色姫は最後に、ふわりと風のような笑みを浮かべて言った。



 「……では、まいりましょうか。

 みんなで行けば、冷たい水も……少しあたたかく感じるかもしれませんよぉ」



 


————

 



 ——滑った。


 

 水が身体を包む。

 ひんやりとして、柔らかい。


 けれど温度ではない“何か”が、全身に絡みつき、

 皮膚の奥までしみ込んでくる。



 ——音がした。


 

 遠い、誰かの泣き声。

 あるいは、風の中に消えていった声。



 それは、飛鳥の中にある“記憶”だった。



 スライダーの途中、水のカーテンのようなものが現れる。


 そこに映るのは——


 

 少女の顔に鳥の体。


 怯えた罵倒。

 翼をかすめる矢。

 拒絶され、泣きながら逃げ出した過去。


 飛鳥は、思わずその映像に翼を伸ばした。


 

 「……これが…記憶の滑走路…」


 スライダーは止まらない。

 映像は流れ、水に溶けていく。


 


 後ろを滑るロメラの視界にも、別の光景が現れる。


 周りを囲む人々。

 断頭の処刑台。

 隣で恐怖に震えながら、なお微笑む妹の顔。


 

 「うわ……わりぃ、ちょっと効くわコレ……」


 

 苦笑しながらも、ロメラは目を逸らさなかった。

 水しぶきが頬を打つ。その感触が、かえって記憶を鮮明にする。


 滑っている間、彼女たちは、それぞれの過去と再会していく。


 


 泣きたいこと。

 忘れたいこと。

 でも、忘れちゃいけないこと。


 


 ——スライダーは、そういう場所だった。


 


 やがて、遠くに光が見えた。


 水がそこへ吸い込まれていく。

 その先には、セドナの声が待っている。

 新たな試練が待っている。


 

 でも今は、ただ——


 過去を、すべっていくしかなかった。




——to be the next scene.

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