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[立体作品]モンスター美少女たちのパパになったら、全員俺を殺しにくるんだが!?  作者: 矢崎 那央
第6話 第3幕『クラスのイタい男子、ログを改ざんしようとして炙られる』
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Epilogue:『それでも、父でいたい』


  しゅん……しゅん……


 小さな湯気が、静かにたちのぼる。


 さっきまで私が吊されていた天井からは、

 かすかに鎖が揺れる音が残っていた。


 床には、うっすらと煙の名残。


 (あぶ)りと罵倒(ばとう)がくり広げられたラボの一角は、

 今や穏やかな沈黙に包まれていた。


 私は、椅子に腰かけていた。

 九重(ここのえ)も、私の向かいの席に座っている。


 ただ、互いに言葉はなかった。

 時間だけが、しずかに流れていた。


 

 ——……こと。


 

 九重が、茶器のフタをそっと外した。

 玉露(ぎょくろ)の香りが、ふわりと立ちのぼる。


 無言のまま、湯を注ぎ、

 小さな湯のみを私の前へ差し出した。


 私は、それを見つめた。

 じん、としたものが、喉の奥に滲んだ。


 

 「……ありがとう、九重」



 そう口にした私に、九重は目も合わせず、ただ、



 「かましまへん」



 とだけ言って、お茶をすすった。


 

 ——私は思うのだ。



 たとえ焼かれようと、吊されようと。

 こうして娘と、茶を交わせる。

 それだけで、父としては本望ではないか。


 しばしの沈黙のあと。

 九重が、ふと口を開いた。



 「……ウチが(だん)はんに契約されてから、

 だいぶ、たちますなぁ」



 その声には、いつになく“奥行き”があった。



 「正直、最初はアホくさ思てましたえ。

 おかしな術師やなぁ、って。

 ほんまに、ようこんなんで生きとるなぁって」



 私は、黙って聞いていた。



 「けど、まあ。

 おもろいもん見られるかもしれへんし……

 ちょうどヒマやったしな」


 「ウチの本体は、封印されてもう動かれへんから。

 このくらいの、遊びやったらええかな、って」



 九重は、(あわ)く笑った。



 「それが、まさか。

 こんなけ長いこと付き合うことになるとはなぁ」



 茶の表面に目を落としながら、ぽつりと。



 「けどまあ、なんやかんやで……

 こうして、お茶淹れてるあたり」


 「……面倒見てるの、そんな嫌やないんやろなぁ。

 ウチがここまで世話焼く性分(しょうぶん)やったとは……

 正直、自分でも思うてまへんでしたわ」


 

 私は、ゆっくりと頷いた。



 「それはつまり、“家族としての情”だな。

 君もまた、父性に目覚めつつある——」



 「いや、そないな方向ではないけど」


 

 私は、口元に笑みを浮かべた。



 「ふふ……だが、確かに。

 血でなくとも、契約でなくとも、

 こうして茶を囲むことで、我々は家族になるのだ」


 

 九重は、それには何も言わなかった。


 ただ、湯のみの中に揺れる茶の表面を、

 じっと見つめていた。


 

 ——やがて、ぽつりと。



 「せやけどまあ、飽きるまでは、

 旦はんの面倒くらい、見たげまひょ」



 私は、その言葉を胸の中で反芻した。


 それは、彼女なりの……。

 たったひとつの、肯定だったのかもしれない。


 私は、記録帳を取り出す。


 愛の軌跡。

 娘たちとの歩みを綴る、大切な記録。


 ペンを走らせながら、心の中でつぶやく。



 「……私は、働いている。

 吊られても、焼かれても。

 すべては、娘たちのために」


 「そして……」


 「彼女たちがいつか、こう言ってくれる日を夢見て」


 「“パパ、今日もおかえり”と」


 

 だから私は、書き続ける。

 家族という幻想にすがりながら。

 それでも……父でいたいと、願いながら。



——the episode’s end.

この物語に登場する、魅力的な“娘たち”──

実は、作者がひとりひとり、立体作品として造形しています。

  挿絵(By みてみん)

(※画像は、狐面のみやびな巫女「九重(ここのえ)」)


もしお時間がありましたら、彼女たちが登場する

〜もうひとつの物語〜

『君は、風に還る。』もぜひご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n3644kl/


異形の少女たちが、自分の翼で“生きる意味”を探し旅をする。

そんな、少しだけ優しくて痛みをはらんだ物語です。

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