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[自作フィギュア]モンスター美少女たちのパパになったら、全員俺を殺しにくるんだが!?  作者: 矢崎 那央
第6話 第1幕『キツネ面の巫女と、はたらくお父さま!』
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Scene5:『オブザーブ・オブ・ジエンド』


 次の仕事は、観測機材(かんそくきざい)のメンテナンスだ。

 依頼主(いらいぬし)は、辺境の神殿で、日夜観測(にちやかんそく)を続ける

 “星の巫女”の少女。

 

 依頼は、世界の未来を映し出す超古代文明の遺産、

 “星詠乃鏡 ≪アストライアグラス≫"の再起動だ。


 私は半日ていど機材を調整し、

 回路を数本繋ぎ直した。



 「…これでようやく、世界は(ほろ)びを(まぬが)れましょう。

 ……この奇跡をもたらす御業(みわざ)

 その使い手を、どのようにお(たた)えすれば?」



 「では、"DIYが得意なパパ"とお呼び頂けますか?」



————



 なお、その再起動を(さかい)に、

 世界滅亡の可能性が次々と顕在化(けんざいか)する。


 人々はそれを、

 "被観測破滅群 ドクメント・アポカリプス"と呼び、

 世界各地で巻き起こる奇異(きい)な現象は

 "予兆オーメン"として恐れられることになる。


 その回避のために奔走(ほんそう)することになるのは、

 他ならぬ私であるのだが……。


  挿絵(By みてみん)



 その件は娘と関係ないので、特に語らない。


 そんなこんなで、

 私は今日も、働くパパとしてがんばっている。


 だがそのすべては、ひとえに……。



 ——娘たちとの時間を守るためである。



 私は、働いている。

 働かねば、娘に会えぬ。

 娘に会えねばパパにはなれぬ。


 まったく、お父さんというものは

 こうも大変なものなのか……。



——to be the next act.

『オブザーブ・オブ・ジエンド』


Prologue:星を視る者


 蒼天を裂くように、彗星が尾を曳いて流れた。

 その瞬間、“星詠乃鏡(アストライアグラス)”が震えた。


 神殿の天蓋は静かに揺れ、鈍く低い音を鳴らす。

 それは、世界の運命が軋み始めた証。

 けれど、まだこの時、少女はそれに気づいていなかった。


 少女の名は、ルセリア・ルーンヴァイス。


 「……よくぞ、星の声なき声を携え、遥々まいられました」


 神殿を訪れた王国の使者に、彼女は静かに微笑みながら言った。


 「 星の巡りは定まらず、言の葉は、ときに霧のごとく……

 されど願わくば、いかなる翳りも宿さぬまま——

 この祈りの響き、ひと筋の光として、王の御許へ届かんことを」


 使者は深く頭を垂れた。


 「星の巫女様……今後とも、どうか、我らをお導きくだされ……」


 星の巫女ルセリア。

 美しき姿と、凛とした佇まい。

 青と金の外套。胸元には聖具杖が収まり、まるで神話の再演のようだ。

 

 まさに、古代の秘宝を守る、神秘の巫女に相応しい雰囲気。


 ……が、使者が帰ったあと。


  「……はぁ〜、まじで疲れるんですけどぉ〜……」


 外套のフードを脱ぎ捨て、彼女は奥の作業机へと向かう。


 「なんの変化もない、どデカい天球儀と毎日睨めっことか、ホント、やになんわ。

 ま、でも、おかげで食うに困らないし、趣味の模型作りに没頭できるから、良いんだけどさ」


 彼女の手には、作りかけの星舟の模型。

 竜骨からしっかり作り、操舵室の舵まである。


 「しっかし、この古代遺産とやら、ちょいちょい止まるし、ちっとも変化無いけど、ちゃんと機能してんのかね」


 「こないだ修理はしたけど、修理に来た奴、テンション変だったし、マジ胡散臭かったし…」


 今日も世界は平和そのもの……とまでは言わずとも、

 世界を滅ぼすような予兆の現れる気配など、微塵もなかった……その時までは。


 天球儀が鳴いた。

 低く、割れるような警告音。

 煌めくガラス球の奥に、血のように赤い光が広がっていく。


 「……なっ……!? なにこれ、なんなのこれ……」


 怯えを含んだ瞳のまま、ルセリアは観測室を飛び出した。


 「じーちゃん! 大変なんだって!! アストライアグラスが、すごい反応してんのっ!!」


 「じーちゃーん!! じーちゃーん!!」


 奥の書庫から、年老いた男が顔を覗かせた。

 星読みの衣の上に、白く長いヒゲ。片目にはモノクル。手には小さな星舟の模型(完成品)。


 「こら!、ルル! またこんなくだらん玩具をこさえて……観測はどうした観測は!」


 「ちがうちがう! いや、じーちゃん!! それどころじゃないんだってば!!」


 「なにが“それどころ”じゃないんだ! まさかまた、夜中にひとりで“星間戦艦ごっこ”でも……」


 「違うってば!! アストライアグラスが、真っ赤に光ってんの!! しかもあの警報音!!」


 ルセリアの声に、老人の表情が一瞬で引き締まった。


 「……赤、だと? 本当にか……?」


 「嘘ついてる場合じゃないってば! ほんとにヤバいやつだって! ガラスの奥、ぜんぶ血の色みたいに……!」


 老人は模型を机に放り、杖を掴んで歩き出した。

 その動きに迷いはなく、杖が床を打つたび、静寂だった神殿の空気がぴりりと緊張に満ちていく。


 「ルル! 観測記録を全転送! リレー制御を直結回路に切り替え! セントラムにも即時送信じゃ!」


 「う、うん!! 了解!!」


 ルルが駆け出すと、神殿内に設置された水晶板が一斉に淡く発光しはじめた。


 《緊急観測モードへ移行》

 

 神官服を纏った職員たちが、部屋の奥から次々に駆けつけてくる。


 「星の巫女様、どうかなさいましたか!?」


 「主観測装置が変調信号を受信……これは、まさか……!」


 「落ち着け、状況を逐次報告せよ! エネルギー値、惑星軌道図、すべて再計算だ!」


 「はっ! 解析班、即応モードに切り替えます!」


 神殿の静謐はすでに崩れ去り、星読みの聖地は、蜂の巣をつついたような騒然となった。

 しかし、誰よりも冷や汗をかいていたのはルセリアだった。


 (ちょっと待って……本当に、なにこれ……)


 動悸が止まらない。

 なにか、とてつもなく取り返しのつかないことが始まっている。


 ……そんな気がして、胸の奥が冷たく締めつけられていた。


 世界の命運を見届ける“星の巫女”の物語は、ここから幕を開ける。



(つづかない)

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