Epilogue:『傷ついた父は、癒しを求める』
体中が痛かった。
あらゆる関節が軋み、皮膚は火照り、
背筋はピキピキと悲鳴を上げていた。
これは間違いなく、おしっぽの対話の影響である。
——明らかに、やりすぎである。
私は地面に横たわったまま、天を仰いでいた。
だが、肉体の痛みとは別に、心の奥にひとつ、
奇妙な痛みがあった。
アクウェリーナとの間に、
確かに心の交流があった……はず。
それなのに、胸がチクリと痛む。
「ははっ、なるほど、これは」
「私の深層心理からの、
“もっとちゃんと向き合え”という警鐘だな?」
《それは普通に“拒絶された心の痛み”だ》
「我々は分かり合ったのだ。
激しく、濃密な、言葉を超えた対話によって!」
私はふらふらと起き上がり、
そして、腕と脚を同時に攣らせて、再び倒れた。
「……くっ、なんと過酷な愛だ……!」
焚き火の向こうで、
ウェーリーは静かに寝息を立てていた。
尾鰭が、ぴくぴくと動いている。
夢の中でも、私と楽しく対話しているのだろう。
《いや、引き続き男をしばいてる可能性が高い》
私はその寝顔を見て、静かに微笑んだ。
そして、ひとつの決意を胸に刻んだ。
「……よし」
「私は、父である。
ならば…再び立ち上がらねばならぬ」
私はゆっくりと、痛む体を起こした。
足を踏み出す。その歩みはぎこちなく、
まるでカカシのようだった。
「……だが、そうだな。そろそろ、
インターバルがあっても良いのではないか?」
「いや、むしろ必要だ。人間には、休息が必要だ」
私は、ばきばきと音を立てる関節を鳴らしながら、
背筋を伸ばした。
「というわけで、次は癒しの体現。
フィロレーナのもとへ向かおうと思う」
私は、ぼろぼろの体を引きずりながら歩き出した。
砂利を踏む足音が、痛々しくも、誇らしげに響く。
次なる“父性の試練”へ。
新たな娘のもとへ。
——その先に何が待つかは、まだ誰もが知らない。
《だが、ひとつ言えることは、きっとそこにも痛みがあるということである》
——the episode’s end.
しっぽで叩かれた背中をさすりつつ、私は歩き出す。
向かうは、緑に囲まれた廃園。
そこで待つのは、やさしくて、ふわふわで、やたらと胸の大きい娘。
だが油断してはならない。
癒しは、時に人を殺す。
次なる試練は——“無自覚えろす”との全面戦争である。
——ご期待ください。
——次回予告。
次回、第5話 第1幕 パパとしてお茶会に招かれたら、窒息と中毒で死にかけてるんだが!?〜ぽわぽわ系植物娘の癒しは命懸け〜。
——エピローグあとがき——
この物語に登場する、魅力的な“娘たち”──
実は、作者がひとりひとり、立体作品として造形しています。
(※画像は、静謐のマーメイド「アクウェリーナ」)
もしお時間がありましたら、彼女たちが登場する
〜もうひとつの物語〜
『君は、風に還る。』もぜひご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n3644kl/
異形の少女たちが、自分の翼で“生きる意味”を探し旅をする。
そんな、少しだけ優しくて痛みをはらんだ物語です。




