Last scene:『ゴミクソパパ認定、そして制裁』
『真理は神であり、真理への到達の方法は愛を通じてである。 愛はすなわち非暴力である』from マハトマ・ガンディー
この言葉は彼の真意とは捻じ曲がり理解されることが多い。
彼は「臆病者の無抵抗か暴力を用いた抵抗かを選ぶとしたら、迷うことなく暴力を勧める」とすら言っているのだ。
しん……。
……静けさが、焚き火のあとに落ちた。
私は……何も言わなかった。
ほとんど闇とまじって見えなくなった地面に、
ギターの余韻だけが、ふるえるように残っていた。
ギリッ……。
その静寂をかき消すように、
ロメラの奥歯が鳴った。
「……、クソがっ」
そっと地面においたギターから
やさしく手をはなすと、
ロメラはふらりと立ちあがった。
その仕草、コワイ。
妙にやさしいの……逆にコワイ。
私は両手をバッと広げて、止めに入ろうとする。
「お、おい? な、なんだその、
なんか妙に“置き方”に愛がこもった
儀式的ムーブは……?」
ロメラが、近づいてくる。
ブーツのつま先が、月の光でピカッと光った。
「ま、まって? 音楽って、
広めたほうがいいっていうか……えーと……」
「……Rockはなぁ」
——スッパァンッッ!!
そのとき、なにかが鳴った。
いや、私が鳴った。
ロメラのブーツが、
ドンピシャで私の腹をケリ上げた。
「がはっ!?」
私はふっと浮いて、地面にゴロゴロ転がる。
「Rockってのはな……“響いた”ヤツだけが、
それぞれの中で育てりゃいいんだよ。
てめーみてぇな押し売り野郎の、
クソダサ呪術放送網で押しつけんじゃねぇ(怒)」
「こ、これは啓蒙のための情報共有であって、
あの、その、意義ある文化普及活動であってっ!」
「黙れゴミクソ」
次の瞬間、黒い糸が、ふわっと空中にひろがった。
ロメラの身体を縫い、現世に留めている黒糸が、
ツギハギの皮膚からスルスルと伸び、私にせまる。
そして、腕に、足に、腰に、
容赦なくまきついてくる。
「おぉっと!? 糸!? これ、制御系!?
拘束術式か!? もしくは新しいスタンド能力か!?」
「どーでもいい。
いまは、おまえがキモいってこと以外、
どうでもいい」
ぎゅるるる……
糸がしぼられ、私はカカシのように吊るされた。
そのまま空中でブラブラしてる私の前に、
ロメラが立つ。
そして、コツンとブーツのかかとを鳴らした。
「ぴぎゃっ」
右ほほ、左ほほ、アゴ、腹。
急所をギリギリ外しての、正確無比なケリ。
ヒザげり、回しげり、かかと落とし、
ぜんぶきっちり命中。
ギリギリの射線をねらった、
ぜいたくなバイオレンス・フルコースだった。
見事な黒糸での緊縛に、
ロメラの小柄な体に似合わぬ、
スラリと長い足と、ピカピカの黒いブーツ。
見る人が見れば“ごほうび"の図式かもしれない。
だが私にとっては、ただの悪夢である。
「ロックをナメんじゃねぇぇぇ!!」
「こ、これはっ!!
発達心理学における反抗挑戦性障害!!
しかし、それをも受け入れてこその父!!」
月あかりの中で、
かつて“創造主”と呼ばれた男が
ゴミのような断末魔を上げていた。
ズルンッ。
ようやく糸がほどけ、私は地面に落ちた。
ロメラはギターのもとへ歩いて戻ると、
こっちを見ずに、ポツリとつぶやいた。
「クソが。もっとマシになって出直してこい、
TrashDaddy」
──to be the epilogue.
彼女を造り出したのは、この私である。
演奏を王国中に流したのも、この私である。
そして今、吊るされたまま正確なコンボを浴びているのも……この私である。
だが誤解しないでほしい。これは、教育的指導だ。父と娘の対話だ。
……“ブーツによる対話”という新しいロック様式なのだ。
——次回。
Epilogue:地獄の帰還、そしてアジュールママ登場。
——
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