Scene9:『ゴミクソパパ プロデュース、全国デビュー(未遂)』
主人公のことは嫌いでも、「パパころ」のことは嫌いにならないでください
しん……。
焚き火は、いつの間にか、小さくなっていた。
木の音も、虫の声も、とまっている。
ギターの音だけが、夜の空気にふわっと残って、
そのまま少しずつ消えていった。
そんな中、私はひとり、
うんうん。とうなずいていた。
腕を組み、立ちあがる。
——満足げに。そしてエラそうに。
「……ふむ。やはり“心”だな、音楽には」
ロメラは、うしろむきのまま、
小枝をくべていた。
反応は、ない。……が、それでよい。
これは父娘の無言の共鳴である。
私はドヤ顔でつづけた。
「安心しろ、ロメラ。
お前の情熱は、すでに王国全土に響かせておいた」
……ピタッ。
ロメラの手が止まる。
「……今、なんつった?」
私は胸をはる。
「ふふん。我が特製の音響増幅呪式と
王国中継網ジャック装置により、
さっきオマエが演奏していた曲は、
リアルタイムで全土に配信済みだ」
静かになった。
風も虫も、ピタッと黙った気がする。
——あれ? 空気が、ヤバい?
ゆっくりと……ロメラが立ちあがる。
ギターを、すごく丁寧に外して、
地面にそっと、おいた。
その動きが、なんかもう……怒ってる人のやつだ。
「……おい、Trashman」
私はビクとして、半歩あとずさった。
「か、感動の余韻の流れだろう?
なぜ拳を……?」
ロメラは、手をぎゅっと握ったまま言った。
「……誰がそんなこと、頼んだよ?」
私はさらに下がる。心の中は全力で白旗。
「そ、それは。ほら、チャンスというか
……全国デビュー……?
あ、いや? 表現の自由というか、
えっと……君のその、音楽の魂を……」
「Rockはな。押しつけじゃねぇんだよ」
その声、焚き火より熱くて、夜風より冷たい。
「鳴らしたいヤツが、勝手に鳴らして、
聞きたいやつが勝手に聞く。
……それがRockだ」
「……おまえはそれを、
無理やり流しただと? 王国中に?」
「Rock、舐めてんのか。あ?」
ロメラの目が、完全に“あの目”になっていた。
私は、あせりながら、声をふるわせた。
「……やばい、これ“エモ”じゃない方のやつだ……!」
──to be the last scene.
“その瞬間だけ風が止んだ”とよく言うが、たぶん本当だった。私は体験した。
……本当にヤバい時って、世界のほうが先に察する。
——次回予告。
読者の皆様に不快な思いをさせたのは、すべてラストシーンに繋げるため。
Last scene:ゴミクソパパ認定、そして制裁。
——
『このすば』に笑ったなら。『ダンまち』に恋したなら。『リゼロ』に泣いたなら。
パパが。娘達が。作者が。おこぼれを頑張って拾います。
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