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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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ほんのちょっと息苦しいような恋しさ。―枕草子

 過ぎにし方恋しきもの。ふと見つけてしまった、幼い時の思い出。十年の昔が恋しく思い出される。




 新年度を迎える準備をしましょう、とばかり机周りを親子でガサゴソしだす年度末。教科書はまだ処分しないよね? プリント類見てくれる? と声を掛け合い進めていきます。図工で刷った版画や夏休みの宿題の一研究。一年間の頑張りを褒め合いながら、いらないもの、いるものを選別していきます。




 机の奥にあった紙袋。なんだろう? 開けてみると⋯幼稚園時代にたくさん折ってためておいた折り紙たちが出てきたのでした。



 ふと見つかった過ぎにし方恋しきもの。枕草子二十七段が思い出されます。



 「過ぎにし方恋しきもの。枯れたる葵。雛遊びの調度。⋯」



 折り紙で作ったクリスマスのサンタさんとトナカイ。七夕飾り。ハートや花飾り。箱。

 決して折り紙なんて得意ではないけれど、幼稚園の先生を真似してよく泣く我が子をなだめるために四苦八苦して作ったのでした。本を見てもよく分からなくて、動画を観ながら作ったこともありました。出来上がるまでじっと隣で見つめる我が子の目線は、純粋過ぎて困ってしまうのです。なんとか折れたなら、一安心。我が子の笑顔を見ると、夢中で作った母の苦労は吹き飛ぶのでした。



 

 そんな追憶の日々が鮮やかに思い出される。ほんのちょっと息苦しいような恋しさ。




 心が震える、鮮やかで色とりどりの折り紙の思い出。ひとつひとつ手に取って、思い出話に花が咲く。




 学用品の片付けの終わった部屋に、もう一度思い出の品を引き出しにしまって。いつでも、また遊べるようにと。





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