虹がかかる青空
あれから何年、いや何十年経っただろう。
気づいたら私は4児の母。
どういう事かと聞かれても、私の方が聞きたいくらいだ。
魔法の力とはいえ、こんな年寄りが子を授かるなんてなんとも不思議な光景だった。
父親は何十年経っても中身が子供のあの男。
それでもだいぶ経験や知識は増えたようだが、年齢はやっと百を超えたばかり。私からすればまだまだ。
あの後、私は彼と結婚した。
というより、結婚までなんだかんだ無理矢理流れを持っていかれてしまって、あれよあれよという間に……だ。
預かっているだけのつもりが、試しにはめてみろと言われ、次はしばらく着けていてくれとなって……
要領悪いくせにそういうのはうまいのだ、あの男は。
長女アイリス、次女ソフィア、長男アントニー、三女ブリアナ……両親共に魔の血を引く者であるが故に、みんな魔女や魔人として産まれてきた。
彼らは健康にすくすく育っていった。
魔法も飲み込みが良く、全員あっという間に一人前。
今や自慢の娘と息子達。
もうみんな、立派な大人だ。
しかし、そこで問題が。
子供達に愛する人ができた時、どうするか。
それも相手が人間だった場合は……
それは私が子供を授かった瞬間から恐れていた事だった。
人を愛さないようにする?
そんな事は無理だ、私達も心を持っているのだ……そしてなにより、私とエディという隠しようもない前例がある。
ハナから無理だと分かりきっている。
しかし、身を切るようなつらい別れ……なるべくなら子供達には経験させたくない。
ここで、昔の私なら……だったら、最初から人間と関わらなければ良い!なんて短絡的に考えていただろうが……今の私は違うのだ。そうは思わない。
どこかの誰かさんのせいで、考えがすっかり変わってしまって。
トマトが未だに克服できない、とある情けない男のせいでな。
そいつはとんだ破壊神で、私と結婚したいがために魔族の常識を壊してしまうような奴だ。
そんな奴に私がこの事を相談してしまったせいで、今回もまた一つ当たり前が破壊されてしまった。
私との結婚もなかなかごり押しだったが、それ以上に強引に。
つまり、どうしたかというと……長命の魔法を込めた薬を自分で作ってしまったのだ。
そういう事に関してはまるで別人のように頭が切れるのだ。
だから、結婚相手にそれを飲ませればいい。
婚約をしたら錠剤を一口ごくり。それだけだ。
もちろん、その人間と長い時を共に過ごす事になるがゆえに……その先に苦しみがないよう相手の人格をしっかり確認してからだが。
魔族の者として一人の世界に篭り、孤独に生きるよりも。
こうして他種族……つまり人間とも交流して、充実した人生を送る方がいい。
それが彼の持論でもあり、今の私の思いなのだ。
「お〜い、イザベラ!支度はまだかい?」
「ああ、すまない。ちょうど終わったところさ」
「早く早く!」
「まぁまぁ、そう急かすな……少しは落ち着いたらどうだ、エディ。式場は逃げないよ」
子供のように急かしてくる彼を嗜めつつも、私もはやる気持ちのあまり声がうわずっていた。
式場……そう、今日は長女アイリスの結婚式だ。
身支度を整え、会場までの道のりを夫と並んで歩いていく。
青空に恵まれ、心地良い風も吹いていて……なんとも良い天気だ。
幸せを噛み締めながらふと空を見上げると、大きな虹がかかっていた。
「おや、虹だ」
「うわ〜すごい!」
「いつぶりかしら、こんなにくっきりしたのを見るのは」
「僕もこんなの久しぶりだよ。ああ、綺麗だなぁ……」
「ええ、綺麗ね」
「……といってもイザベラ、君には敵わないけど」
「ふふっ。何言ってんだい、もう……」
笑いながら彼の方を向くと、彼もこちらを向いてニヤリ。
しばらく顔を見合わせると、お互いにっこりと微笑んだ。
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