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エヴァの助言

時刻は午後六時を回り、共に酒場のカラウィンに向かう事を提案したエヴァだったが、落ち込んでいる様子のモロを見かねて、一人でヒナを見送りにいった。


「ノワールさん…僕、何もできなかった。…あんなに練習したのに…。」


魔術修練場に佇む二つの姿。


そこに設置している木製の的は、何かが刺さった跡、少しの窪みができていた。


「ヒナちゃん…同じくらいの年なのに…。」


ツー


自然と涙が溢れ、ノワールに体を預けるようにもたれかかった。


「…やっぱり。僕は…」



「—モロ!何泣いてるのよ!」


その時、背後から自分を呼ぶ声が聞こえ、振り向くと、そこにはエヴァがいた。


「ぐすっ。な、泣いてなんか…いません!」


「…嘘つき。ふふっ、顔が真っ赤になってるわよ!もしかして、まだ私に照れてるの?」


「…じゃあ、泣いてます。」


「あははっ……そう。泣くほど…悔しかったのね。」


ポロ…


「…僕、ここに来て…二人にも…お世話になってるのに…何も、出来なかった…。」


「ええ。…確かに、手も足も出なかったわね…文字通り。…でも。」


そういうとエヴァは、モロの肩に自身の手を置いた。


「何も出来なかった、訳じゃないわ。あなたは、私が言った”無力化”を、聞いてすぐに実践した。それは、凄いことだと思うわ。」


「ありがとう…ございます。」


「いいモロ。あなたに一つ、アドバイスしてあげる。」


「…アドバイス?」


涙を堪え、俯いていた顔を彼女に向けた。


「ええ。あなた…そのノワールと一緒に、並んで戦っていたわよね。その方が安心するのは分かるわ。でもね、あの場合…それを前に出すのも一つの手よ。」


「ノワールさんを…前に?」


「ノワールを前に出すと、何ができると思う?少なくとも、”あれ”は回避できたかもね。」


「あれ…あれ…あ!ノワールさんを拘束されたこと!」


「そう!あなたがヒナちゃんの攻撃から目を逸らした時、ノワールからも注意を逸らしてしまった。」


「だから、僕とノワールさんは簡単に拘束された…。」


「そうね。…ヒナちゃん。ノワールの抵抗が無かったことを不思議がってたわよ?」


「私は、その魔術をどんな感覚で使っているのかは分からないけど。やっぱり、前に出してあげた方が戦いやすいと思う。…あなたの魔術がバレない為にもね。」


「分かりました!早速練習を!」


「ちょっと!ちょっと、ちょっと。もうこんな時間でしょ!練習はまた明日ね!」


——


「今日は、いい事教えてもらったなぁー。骸骨さんも、そう思うでしょ?」


モロの自室では、涙の跡がほんの少しだけ残るモロが、ベッドに腰掛け、佇むノワールに話しかけていた。


「ヒナちゃん…本当に強かった。でも、あの子に勝てないと…依頼なんて…。」


ヒナとの実戦を思い出し、布団を少し強く握った。


「今日が日曜日…ヒナちゃんとの最後の特訓が、来週の土曜日で、その次の日は…。」


「ノワールさん。これからも、一緒に頑張ろうね!」


そう言うと、モロは布団に潜り、眠りについた。

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