禁術、それは
チュンッチュンッ—
「うん…はぁ〜。」
モロはいつもより深い眠りにつくことができた。
いつもなら憂鬱な朝だが、彼の表情は希望に満ちていた。
カタッ—
鞄の中から音がし、その鞄に目を向ける。
(もう少しだ!もう少しで皆から...)
「モロー!起きなさーい!」
母親の声が、階下から聞こえた。
—
パクッ!
食卓の席につき、朝食のパンにかぶりつく。
もぐもぐ・・・
「今日は…なんだかご機嫌ね。」
「ふふっ…分かる?実は僕...いや、やっぱりなんでもない!」
「なーにー、気になるわね...ま、元気そうでよかったわ!最近、なんだか元気がなさそうだったから...」
(ふふっ。それも今日まで、だよ!)
——
ご飯を食べ終え、バラバラになった骸骨が入っている鞄を持ち、玄関の扉を開ける。
「行ってきまーす!」
「はい!行ってらっしゃい!」
外に出て、早速鞄を開けた。
シュッ!
そこには骸骨の頭や胸部が所狭しと詰まっているそれに、手をかざし、魔術を唱える。
カタッ—
カタカタッ—
カバンが発光し、バラバラだった骨同士が結合していく。
次第に人の形を成していき、
カタッ…
カタ…
光が消え、音が止むと、そこには骸骨が彼を見下ろし、命令を待つように佇んでいた。
「ついてきて!」
カクッー
それは頷き、彼の後ろを着いてくる。
——
普段はうつむきがちな登校時だが、今日は周りがはっきりとよく見える。
ざわ...
ざわ...
校門前に着くと、次第に周りの生徒がざわつき始めた。
(みんな驚いてる!そうだよ。僕、こんなすごい魔術が使えるんだ!)
心の中でそう繰り返し、周りの生徒を横目に、学園の入り口を目指す...
―
学園の校舎前で、担任の教師がその姿を凝視し、呆然と立ち尽くしていた。
「先生!おはようございます!見てください、これ!」
普段自分から挨拶なんてしないモロが、自慢げに後ろの骸骨を指さす。
カチッ―
カチカチ―
何かが揺れる音がし音のする方を見ると、先生のメガネがかちかちと音を立て、震えていた。
その目はモロの嬉しそうな顔ではなく、骸骨をしっかりと捉え...
「…終わった…私のクラスから……き…禁術を…」
カチ...
やがて音が止み、先生が後ろに倒れた。
その背後には、とてもヒトを見るとは思えない目を向け、その姿を見つめる教師たち。
——
気づけばモロは椅子に座っていた。
(ここは、職員室...なのか?)
ひっ!
突如大きな怒鳴り声が聞こえ、とっさに耳をふさぐ。
廊下側の窓をみると、生徒からの冷たい視線がこちらに降り注がれた。
(もう、何も見たくない...聞きたくない!)
目を伏せ、頭を抱き抱え、頭の中でそう唱える。
「チッ、ちゃんと聞いているのか?!」
がばっ!
モロの頬を掴み、顔を近づけ、睨む教師。
「お前は禁術も知らないのか?!全く非常識なやつだ!
お前みたいなやつがこの学園にいたなんて...学園の恥だ。
いいか禁術というのはな!」
禁術とは何か、そのことを長々と説明する教師。
魔術協会、使用禁止、危険思想、死者への冒涜――
聞き慣れない言葉が次々と、モロの耳に叩きつけられる。
―
ガラガラ!
ガミガミ..
扉を開けるような音が聞こえ、突然、怒号が止んだ。
「が、学長!」
そこに目を向けると、大きなとんがり帽子をかぶり、長いひげを蓄えた老人。
ルミナス学園学長が状況を確認するように、二人を見ている。
「そのものが禁術を使った生徒かの?ふむ…お主は下がっておれ。」
学長はモロの前に座ると、俯く彼の頭を撫でた。
「やれやれ…怯えきっておるではないか。」
温かく、自然と安心できる大きな手。
「…当然の報いじゃ。」
その手が遠ざかっていく...
「お主には即時退学を命じる!二度とこの学園に足を踏み入れるな!」
モロは俯きながら、骸骨の入ったカバンを片手に、学園を去った。
「よろしいのですか…学長。その…魔術協会の到着を待つべきでは?」
「よい…魔術協会には…あの子の家に向かうよう言っておる。」
「は、はぁ…しかし...」
「禁術……のう。」
学長はどこか遠い空を見上げ、つぶやいた。




