魔術決闘・前編「魔術のぶつかり合い」
夕日が沈みアリステアの街には街灯が灯り始めた。
酒場の外にある石畳でできた通り。
そこにはすっかり酔いが覚め、
準備を終えた二人が背中合わせで立っている。
シンバは肩の力を抜き、深く深呼吸する。
エヴァは身体を伸ばし、リラックスする。
「モロ…よく見ておくといい。」
ドリューはモロに告げる。
「は、はい。」
胸の奥が、きゅっと縮む。
これから何が起こるのか。
二人にとっての”最後のあれ”とは。
モロの視線が二人の背中を行き来する。
「準備はいいかー?! 二人とも?!」
店主が酒場の扉を開け、声を張り上げる。
「ふぅ…よし、いいぜ!」
「いつでもいいわよ!」
二人の声が重なり、空気が張りつめる。
「─いくぞ。
5……
4……
3……
数字に合わせ、二人の足音が石畳に響く。
2……
1……
ついに、その瞬間が来る。
0!」
数字が響くと同時に、2人は動き出す。
エヴァの足元が赤く光る。
視界が歪むほどの速度でシンバとの距離を詰める。
「先手必勝よ!」
「あめぇーよ!」
そういうと、シンバの姿がーー消えた。
「な…何が…起こったんだ?」
圧倒されるモロを横目に、
ドリューは冷静に答える。
「魔術決闘だよ。」
「これが、魔術決闘…」
魔術の授業の時に見ていたそれとは、次元が違う。
「…いつまでそうしてるつもり!」
エヴァの周囲で、赤い光が弾ける。
見えない何かが衝突し、衝撃波を放つ。
「シンバの魔術は【透明の魔術】。
姿を消すだけではなく……」
攻撃が止み、エヴァから距離を取った場所で、
ふっと空気が歪み、シンバの姿が現れる。
「ったく。埒が明かねぇーな。」
シンバは腰からナイフを抜いた―
次の瞬間、そのナイフが消える。
「なら…こういうのはどうだぁ?」
消えたままのナイフが投げられる。
何もない空間から、突如衝撃だけが響く。
ドンッ!
エヴァの周囲で赤い光が弾け、
不可視の刃を弾き返した。
「エヴァの魔術は【衝撃の魔術】。
魔力で衝撃を放ち、移動、攻撃、防御……
なんでもできる。しかし、弱点がある。」
ドリューは淡々と続ける。
「同時には一つしか使えない。
防御している間は、攻撃も移動もできないんだ。」
「おらおらぁ!どしたぁ?
そのままだと魔力切れで、そっちの負けだぜぇ!」
シンバはナイフを消したり、
消さなかったりしながら投げる。
そればかりか、足元の石や、
道端の小物まで拾って放り投げる。
見えない攻撃。
見える攻撃。
間合いを揺さぶる、いやらしい連続攻撃。
「しつっこいわね!…こうなったらーー」
エヴァは赤い光を解き、
身体能力だけで攻撃をかわし始める。
「シンバの攻撃を無視して、
【衝撃の魔術】で距離を詰めたら…
あの石ころ一つでも致命傷になる。
ま、エヴァなら何とかするさ」
ドリューの言葉を、モロは少しずつ理解する。
(…正直、怖い。)
モロは、鞄を抱きしめる。
(でも、目を逸らしたら…)
ドリューの顔を見て、彼の言葉を思い出す。
「ここを出て、彼らに捕まるか…」
(いいや。)
首を振るモロ。
(僕は、もう決めたんだ!
この人達についていくって!)
モロは二人の戦いを見届ける。




