突然の出会い
止まない攻撃の嵐の中、そのヒトは、地べたを這いながらひたすらに前を進む。
目の前には無惨に横たわる仲間の姿。
それを乗り越え、なおも進む。
地面は焼けるほど熱く、さらに進むと、痛いほど冷たかった。
仲間の1人が背後から魔術を唱える。
「こ、このまま…終わって…た、たまるかぁ!」
彼の放ったそれは敵国の絶え間ない攻撃の波によって一瞬で弾かれてしまう。
地面が揺れた。
仲間の悲鳴が聞こえる。
ー
仲間の悲鳴なのか、敵の攻撃の音なのか、分からなくなる。
手足の感覚がなくなった。
「か…からだが…うご…かない」
もう、腕を動かす力もない。
それでも、そのヒトは顔を使い、進む。
一際大きな攻撃が放たれ、あたりを痛々しいほどの光が包む。
やがて、光が晴れると、
ズサァ...
ズサァ...
そこには、白骨化してもなお進み続ける、骸骨の姿。
いくら攻撃をしても、こちらに向かってくるそれに恐怖を覚えた兵は攻撃を止め、
それを戦場跡地に埋めた。
ーー
魔術、それを使えるものは英雄になれる。
そう言われていたのは何百年前だろうか。
ルミナス学園に通う男の子であるモロは、魔術が使えず、落ちこぼれの評価を受けていた。
彼は次第に内気になり、塞ぎ込むようになった。
そんな彼の楽しみは、自宅の近くにある森で、自然に触れる事であった。
「ここには人がいない…」
彼がここに来るのには十分な理由だった。
ーー
ある日、いつものように森に来ると、木にもたれ、座り込む骸骨を見つけた。
「なんだ…あれ?」
モロは骸骨に対し、不思議と恐怖はなかった。
本当に怖いのは人だということは、彼の短い人生観でも理解していた。
彼は枝を拾い、骸骨をつついた。
「うーん…」
反応が無い。
「骸骨…だよね?」
彼はそれの頭に触れようと、右手を伸ばす。
キラー...
その時ーー青白い光が辺りを照らす。
「うわっ?!」
顔を背けるモロ…その光が晴れるとそこには彼を見下げるように立つ骸骨の姿。
それは何をするでもなく、ただ彼を見つめている。
彼は再び枝で、それをつつく。
彼は長い孤独の中で、誰かにかまって欲しい…
遊び相手になって欲しいと感じていた…
そんな欲求をそれにぶつけている。
「はぁ…やっぱり…僕なんて…
誰にも相手されないんだ…。」
彼は無反応なそれに呆れ、枝をその場に捨てた。
もう一度頭に触れようと右手を伸ばす…その時、それは左手を挙げていた。
「う…うごいた?!な…なんで動いたの?」
彼は背伸びをし、さらに高く右手を伸ばす…
それも同じようにさらに高く左手を伸ばす。
「ぼ…僕の動きを真似してるの?」
「な…なら…左手!左手挙げて!」
彼は勢いよく左手を挙げる...それは右手を挙げた。
鏡合わせの状態である。
「す…すごい!じゃあ次は…これ!」
彼はその場で一回転をする…それも同じように一回転した。
「ははっ!楽しい!…骸骨さん。今日から君は、骸骨さんだ!」
まるで、お気に入りのおもちゃに名前をつけるかのように、そう呼んだ。
「……この魔術があれば…きっとみんなも…」
「ちょ…ちょっと待ってて!」
彼は大急ぎで自宅の方向に駆け出した。
ーー
激しく息を切らし、学園に登校する際に使う鞄を持ってきた。
「みんなを驚かせたいんだ…骸骨さん。この中…入れる?バラバラになれば入れると思うんだけど…」
再び青白い光が辺りを照らす…そこにはバラバラになった骸骨の姿。
彼はその骨を鞄に入れると、自宅へ向かって走り出した。
ーー
彼は布団の中で、明日、学園へ登校する自分の姿と、隣を歩く骸骨を妄想する。
「骸骨を操るなんて…
きっとみんなびっくりするだろうな!」
彼は連日不眠気味だったが、今日は深い眠りにつくことができた。
彼を待つのは輝かしい未来か…それとも…
カタッー
カタカタッー
骨が揺れる音が、モロの静かな寝室に響く。




