深夜のお礼セラピー ~曲池と合谷に関する勝手な考察~
あおむけの施術で、鍼灸師のケイ先生は重要視するけど柔整師の院長は見向きもしない技がある。
曲池と合谷。どちらも痛みに直接アプローチするとされているツボだ。
「カノン様、ちょっと肘曲げさせてもらいますよ」
「? ……えぇ、どうぞ」
「ありがとうございます」
曲池は肘を曲げた時にできるくぼみ――浅い池に似てるからってことでの命名だそうな。風池もそうだがツボ一族は池がお好きなんだなー(?)。上腕骨外側あたりの、へっこんだところを目指せば大体合ってる、って感じだ。ポジション取りは比較的楽なツボなんじゃなかろうか。
「ここ、曲池ね。痛みにいいってされてるツボです。カノン様、頭痛持ちとのことですから、かるーく押しときますね」
「はい、お願いしま……っっ、ぅくっ! イタタタタ……!」
曲池は古くは歯の痛みの治療に用いられていたというが、目、鼻、喉等の疾患や炎症までをもカバーするとも言われている。歯痛が引き起こす頭痛なんかにも対応していて、だから「頭痛には曲池!」ってなっていったのかな、と、私はぼんやり想像をふくらませていたりするが……ツボ一族の中では割と判り易い位置でもあるし、セルフで押せる箇所でもあるし、曲池はもっと評価されてもいいと思うの。内臓整体の仕上げに押すツボでもあることだし。
「ミオ殿、ミオ殿、『かるーく』って、嘘でしょう……」
結構な痛みですよ、と訴えかけるカノン様に、
「じゃあやめます?」
と訊くと、
「やめっ、やめないで……!」
この痛みが快感なんです、と口走るカノン様。……んんっ、だからコレどーゆープレイだよと。
「んじゃ、続けます。今度はそっちの腕ね」
曲池も左右に2箇所ある。左側は、先程よりは大騒ぎしなかった。カノン様は不思議そうに、
「おや、イタキモですね」
この程度なら耐えられますよ、と、小首をかしげていた。ウホッ何この可愛い生物は。愛でたい。
「力加減はさほど変えてないんですよ、右と左とで」
やっぱりこの患者さんいやカノン様は『右側の人』なんだな。
「さて、お次は合谷ね。このままお手々貸してて下さいね」
「ゴウコク……魔力回復のつぼですね」
うーん、ちょっと違うかも?
合谷は、曲池と同経脈上にあり、やはり痛みにいいとされているツボだ。
わかりやすくAKBで例えると、経絡というプロデューサー(仮にこれをAKMT氏としておく)が、正経十二経脈とか奇経八脈とかいう組織を立ち上げ(AKBGとか坂道とかに相当するか)、その正経十二経脈が手とか足とかその他諸々の陰陽経脈というグループに細分化され(HKTとかSTUとか)、その細分化された手の陽明大腸経というグループの所属メンバーに曲池とか手五里とか手三里とかがいる。
彼女(彼?)達の多くは鎮痛に特化した癒し系のメンバーであり、合谷は手の陽明大腸経グループの絶対的エース。実力も知名度も圧倒的なナンバーワン。それこそNMBのジュリナ、欅のてち(改名しちゃったじゃんとか卒業してもうたやんとかは置いといて)よ。いや合谷はむしろサシハラさんかも知れん。ツボと言えば合谷、AKBと言えばサシハラ。
ケイ先生がとりあえずビール的なノリで合谷押しときゃ何とかなるよ、と豪語したように、サシハラに任しときゃオールオッケーという万能キャラな合谷。頭痛生理痛歯痛に疼痛、何なら乗り物酔いまでお任せあれのオールマイティーな活躍を可能にする確かな実力と圧倒的な存在感。ツボ界を背負って立つ一枚看板、それが合谷。
押すとちょっと痛いけど、そんなきりりとした芯の強さがまた魅力的。ブレない、媚びない、ひよらない。この世界へ来て何と魔力回復の効果まであると発覚した底知れぬ力を秘めた合谷。歌って踊れてMCもイケる、故郷の災害には多額の寄付を迅速に、後輩の指導や総支配人的な役割までこなすグループの顔サシハラさんみたいなキャラですやん合谷。
ちなみに私の某アイドルグループ(ってもう某の意味ナシ)の知識は隣の部屋の大学生(黄色いインコの飼い主、バイト代は推しにぶっこむ、坂道の握手会とか行ってるっぽい)からのうっすい知識なので、これで合ってるのかどうかはわからない。
イエローボール(=黄色いインコの御芳名)の飼い主さんが某アイドルグループの誰それちゃん(名前忘れた)の話になると、魔法狂いのカノン様みたいなテンションになるからちょっと引いてしまいがちだが、ツボツボマッスルしてる時の私だって多分他者から見ればドン引きだろうな、という自覚はあるので、へーほーふーんと生温かい眼差しでテケトーに相槌を打っていたものだ。
手のひらの、拇指と示指(親指と人差し指ね)が合うところ、指を開いた時の形が深い谷のように見えるから、合谷。
筋肉’sの命名は読んで字の如くでもう少しひねれよ、と思いきや、ツボグループもなかなかどうして見たまんま。
誰にでも判り易くて、セルフでも押せる万能のツボを、右は少し軽めに加減して、左は普通に、押してみる。
「あぁー……」
カノン様はうっとりと目を伏せた。合谷の痛みには多少慣れたらしい。
「魔力、回復しましたよ……」
そうですか、としか私には言えない。何せ魔力の概念がわからない。どういう感覚なんだろうな、魔力が増えるっていうのは。
「ゴウコクは、自分でも押すのです。とても重宝していますよ。でも私が押しても、これ程多くは回復しません」
何故なんでしょうね、と、うっとりほわほわゆるるん口調でのたまうカノン様に私は、とにかく練習あるのみですよ、と、テケトーなことを言っておいた。
お読みいただきありがとうございます。
作中の考察はあくまで個人の感想です(?)
私個人と致しましては、筋肉'sでは梨状筋担、でも棘下筋も捨てがたい。もちろん同担歓迎です。
ツボグループは箱推しです。当然同担大歓迎です。
リンパも足裏も激萌えです。
みんな違ってみんないい。




