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ぱんつは! ぱんつだけは!! 履きたいぞ切実に!!!

 素肌に借り物の生成りのローブを着用し、手洗いした黒のTシャツ黒パンツ(施術者仕様の仕事着だ)に、ぱんつとブラジャー黒靴下を包んで隠しておいて、私は改めて思う。


「カノン様って、やっぱ見た目より体格いいんだな……」


 私の予備ですみません、と言っていたからこのローブは彼のものなのだろう。多分、彼が着ればフツーのローブなのに違いない。

が。


「袖がぶらんぶらんするわー……」


 私は袖の先を見た。袖口から手が出ない。萌え袖どころか布が余りまくっている。

 襟ぐりはよくある普通の丸襟なのだが、私が着るとずり下がってオフショルダー状態。裾も床に引きずりそうなくらいに長い。

 だぼだぼの生成りのローブの上に申し訳程度に黒革のライダースジャケットを羽織り、脱衣所を出た。一応、来た時よりも美しくをモットーに簡単にささっと目につく範囲は掃除しておいた。




 洗濯物を抱え、人の気配を求めて、そこはかとなく飯場っぽい建物内をぐるぐる歩いた。

 夜勤の者が休んでおりますので、とカノン様が言ってた通りで誰にも逢わなかった。時間帯的に起きてる人は仕事中で外してて、夜勤の人は寝ているのだろう。

 浴室がある棟を出て、こぢんまりした風情のある建物に近づくと、ランス隊長と同じ色の制服を着た兵がいた。敬礼してきたので、お辞儀を返す。


「何かお困りですか?」


 空色の制服の兵が声をかけてくれたので、


「カノン様を探しています」


と、答える。すると彼は王子様ばりのキラリン☆ スマイルと共に言った。


「ラディウス卿なら隊長の執務室にいらっしゃいます。こちらの建物です」


 私は目の前の小屋に通された。




 自ら案内役を買って出てくれた空色の制服の青年は、頼みもしないのに色々と教えてくれた。

 先程までいた浴室のある棟は兵士が生活を営むいわゆる宿舎で、食堂などもそこにある。今いる小屋は事務所として機能していて、手前のドアは医務室でここは資料室、こちらは会議室です……etc.etc.

 この人も随分といい筋肉をしている。臀筋と背丈はランス隊長の圧勝だが、大腿四頭筋と下腿三頭筋はこの人に軍配を上げたい。何が言いたいのかというと、つまりは素敵なおみ足だな、ということである。

 うねりの強いアッシュグレイの髪を自然に後ろに流して(日本式な表現をするならオールバックってヤツね)瞳は淡褐色。派手やかさはないが涼やかな顔立ちで、全体的にシュッとした男前ってイメージだ。ホルダーには半月刀。ランス隊長が背中にしょってたでっかい大剣(って、これも日本語として不適切な表現、頭痛が痛い的な)と比べたら小ぶりだが、それでも充分な存在感だ。


「隊長の執務室はこちらです」


 シュッとした男前が手振りで最奥の扉を示し、ノックしかけたちょうどその時。



「お前はオラクルだろう」



 閉ざされた扉の向こうから、低いハスキーな声が威圧するように響いた。




 その後、カノン様の切れ切れな呟き声、それにかぶせるようにランス隊長の諭すような声が続く。話の内容までは聞き取れないが、何やら深刻そうな雰囲気だ。


「お取込み中のようですね」


 ノックしようとした手つきのままで塩顔オールバックがこそっと囁いた。ですね、と私が頷いた時、



「使命に総てを奪われたお前がそれを言うか」



 さくっと鋭く切り込むようなランス隊長の声。空色制服の涼やかイケメンはうーむ、と低く唸って、


「どうしたものかな。半殺し覚悟でラディウス卿を救出すべきか、何事もなかったかのように立ち去るべきか、それが問題だ」


 お前はハムレットか、とツッコみたくなるひとりボケをかましてくれた半月刀の青年は、ノックのポーズを維持しつつ、


「聖女様はいかにお考えでしょう?」


と、私にふってきた。え、私!? と、戸惑って……あれ、私この人と初対面だよね? 自己紹介とかまだだよね? と、そちらに意識を持っていかれた。

 そうこうしているうちに、



「そんな顔をするな、お前が揺らぐと周囲も不安になるんだぞ」



 一転、吃驚する程優しいランス隊長の声が響いた。

 その後もカノン様とランス隊長のヒアリング不可能な会話が続き、私は何となく安堵で息をついた……何か大丈夫そうみたい。


「一端出直しましょうか」


 私はアッシュグレイの髪の兵に言った。そうですね、そうしましょう、と彼はニヒルに笑って、


「わたくしも隊長に半殺しにされるのは御免被りたいところです」


と、言った。




 と、いうわけで再び外に出た。


「食堂でお茶でもいかがですか、聖女様? むさ苦しい所ですが」


 塩顔イケメンはさらりとナンパちっくな文言を吐いた。うーん、まったく嫌らしさがない。涼やかな男前は得だな。


「魅力的なお誘いですが、その前に、」


 私は抱えていた洗濯物を示し、


「コレ、干せるトコありません? いいお天気だし、今から干しても日暮れまでには乾くんじゃないかなー、と」


 正直に申告しよう、今私はノーパンノーブラで外を歩いている! 我が日本国でやろうものならうっかり通報されかねない! 他はともかく、ぱんつは! ぱんつだけは!! 履きたいぞ切実に!!!

 おや、と、彼はキザったらしく肩などすくめ、言った。


「これはこれは、気づきませんで。そういうことでしたら是非ともわたくしめにお任せを。

 一瞬で、とは言えませんけど、10分ばかりいただけましたら街の洗濯屋よりもきっちりと仕上げてみせますよ」

お読みいただきありがとうございます。

幕間三部作(?)無事終了です。

ここからはまたミオちゃん登場。はやくぱんつが履けるといいね……。

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