警備隊の駐屯地
目的地に到着したのは、カノン様の預言通りに山を下って7日目の昼過ぎだった。
ユタの街が管理する警備隊の駐屯地は、実質関所の役割を果たしているらしい。
山間の平地に、『内』と『外』を隔てるように築かれた石造りの高い塀。大きな木製の扉の前には、アースカラーの制服を着用した兵が2人、狛犬のように立っている。
「お帰りなさいませ、ラディウス卿!」
「ランス隊長がお待ちです!」
警備兵乙兵は、カノン様を見るなりシャキッと敬礼。
カノン様も、ご苦労様です、と返礼し、おや、というように眉根を寄せて、
「ランス殿が……?」
呟いて、背後に控えるヨロイー’sに、
「貴方がたも有難うございました。先に街に戻っていて下さい」
「はっ! 了解しました!」
鎧騎士達はガチャガチャと鎧を鳴らして扉の向こうに消えた。
通り抜けざまにポール殿がポンと私の肩を叩いて、
「ミオ様、街でお待ちしてますよ。カノン様、露払いはお任せを」
「早くお行きなさい、遅れますよ」
カノン様が言葉でポール殿の尻を叩いた。
鎧騎士達が難なく通った扉の前で一悶着あった。
狛犬じゃねぇや制服の警備兵が私の身体検査を強行しようとしたのだ。普段は滅多に表情を変えないカノン様が血相を変えて、
「こちらの方の身元は私が保証致します。彼女はミオ・サクラ殿、神託の聖女です」
と、訴えても警備兵達は、
「規則ですから」
「いかにラディウス卿のお連れ様であっても例外を認めるわけにはいきません」
と、にべもない。見かねた私がカノン様の袖を引く。
「カノン様、私なら構いませんから」
「しかし、ミオ殿……」
珍しくオロオロしているカノン様にふんわり笑いかけておいて、
「で、具体的に私はどうすればよろしいでしょうか? ここで服脱いで、全裸にでもなればいいのですか?」
警備兵には口元だけでにっこり笑って、でも目には険を含んで睨み上げる。当然門番兵はそんなことでたじろいだりはしない。
「では、別室へ――」
「お待ち下さい、せめて彼女の検査は女性の方に……」
カノン様が私の左右を固めた警備兵に言った。警備兵(右)は呆れたように、
「ラディウス卿もご存知でしょう、ユタ竜騎兵隊は女人禁制です」
「では私も立ち会います。私は彼女に対して責任が――」
門前でゴチャゴチャもめていたら、
「どうした、何をしている?」
閉ざされていた木製の扉が開き、ドスのきいたハスキーな低い男声が威圧する。
開かれた扉の向こうに、大柄マッチョなスキンヘッド野郎の姿が見えた。
お読みいただきありがとうございます。
ようやく第一の目的地に到着しました。
ここへ来てちょっとだけ不穏な雰囲気です。ミオちゃんの内心での口の悪さも二割増し?




