表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/157

幕間 ~騎士団員ポールの供述・4~

 水の癒しの気配で覚醒した。

 と言えば聞こえはいいが、実際のところは、水の塊にどつかれて起こされた、って表現のが正しい。


「んだよ、もっと優しくしてくれよ」


 俺は悪態をついた。これじゃ癒しってよりは気つけの水責めみてぇだぞ。


「ごめんなさいね、なにぶん初心者なモンで」


 心配そうに屈み込み、俺を覗き込んでいたのはミオ様だった。


「謝る必要はないですよ、ミオ殿。むしろとどめを刺してしまってもいいぐらいです」


 だって貴女を泣かせた輩ですよ、と、うっそりとした笑みで言い放つカノン様はもうハイプリーストを名乗ってくれるな。


「けれど、こんな輩の為に貴女が手を汚すことはありません。さ、次へ行きましょう」


 カノン様はミオ様を促した。はい! と元気なお返事と共にミオ様は気絶した騎士を次々に水魔法でどつき回していく。オイオイ今日アチューメントしたばっかでもう使いこなしてやがるぜ。回復魔法と呼ぶにはちっと優しさが足りないが、末恐ろしいな。流石は光の一族(ラディウス)の当主が太鼓判を押した聖女様、って讃えなきゃなんねぇのかなコレは。

 ミオ様が魔法を使う度、ヒィ! とか、ギャー! とか、うげぇ! とか、断末魔のような叫びが上がるが、気絶した本営の総員が意識を取り戻した。


「よかったぁ……皆生き返って。増幅器(上)がポンって言って煙吐いて、食堂に来てみたらひとり残らず倒れてて。死んだのかと思って慌てちゃったわ。一体、何があったの?」


 それはコッチが聞きてぇよ、という本営人員の声無き声に答えたのはカノン様だ。


「魔導具からの魔力を辿って土魔法で術師を捕縛し、魔導具越しに光魔法を行使致しました」


「えっ、増幅器って完全なる一方通行と違うんですか!?」


 ミオ様は驚いたように言った。カノン様はしたり顔で、


「本来なら、そうですが。術師の魔力と魔導具そのものを圧する力量があれば理論上は可能です。本来であれば流れに掉さす行為ですから推奨されるものではありませんがしかし機会に恵まれたなら一度試してみたかったのですよこんなに上手くいくとは思いませんでしたがえぇもちろん力は抑えておきました建物には一切被害を出さずに生物のみにダメージを与えるギリギリのところで調整しましたいやぁ~この術はなかなか実用的ですね敵陣をそのまま自軍の陣地として活用できますやはり使えるものは有効に活用したいですからねあぁもちろん良い子は真似をしてはいけませんよ力押しに負けた暁には敵の魔力と自分の逆走した魔法とで自爆するのがオチですからね」


 あぁ始まっちまったぜ魔法バカのカノン様のご高説。ミオ様的表現でデュフフコポォモードとか言うんだったか? 誰か止めてくれよ。頼みの綱のミオ様は、何その中性子爆弾……と謎の言葉を呟いていた。肝心なトコで役に立たねぇ聖女様だな。俺のコト売りやがったし。


「それにしてもミオ殿は本当に飲み込みが早いですね。増幅器の特性も理解しておられるようですし、水魔法も詠唱無しで行使なさるとは」


「それは先生がいいからですよ」


 って、らぶらぶもーど発動中みてぇなコトしてんじゃねぇぞコラ。こちとら死にかけたんだ。ミオちゃんまで詠唱無しか……と落ち込むヘイゼルの身にもなれ。僕の虎の子の魔導具が……と涙目のフーガには同情しない。こんな訳アリのブツはさっさと手放した方が身の為ってヤツだぜ。




 その後、事情聴取と称してカノン様にこってり絞られた。生成りのローブに素足というゆるゆるのカッコなのに戦場仕様の騎士服着用の時よりおっかなく見えた。

 カノン様のお怒りはただ一点、ミオ様を泣かせたってコトのみに集中していた。公平を期すため皆様にお話を伺いたい、なんて言ってっけど私情丸出しじゃねぇかよカノン様。そんな怒らんといて、もうおしおきは充分やないの、と、とりなすミオ様が女神さまに見えた。

 でも、冷静になってみっと全部ミオ様のせいなんだよな。俺のコト売ったし(数時間ぶり2回目)。ミオ様がポロッと口滑らせなけりゃよかっただけだろ。大体ミオ様、アンタのアレ嘘泣きだろーがよ。


「とにかく、今日はもう遅いですし引き上げましょう」


と、カノン様がようやっと解散の号令をかけた頃にはもう日付なんかとっくに変わってた。良い子は寝る時間だぜ。カワイソーにお子ちゃまフーガなんかうつらうつらしてんじゃねぇか。もちろん、素直に解放してもらえるワケもなく、


「続きはまた明日。そして、本営の原状回復も。後片付けまでが戦争ですよ」


 カノン様、アンタ根っからの軍師だな。

 俺達は本営こと食堂の片付けもカンペキにこなし、寝た。でも、続きはまた明日、というカノン様の言葉の裏の意味をよーく考えとくべきだった。


お読みいただきありがとうございます。


聖女様勝手に俺らのコト殺さないでくれませんかね!?(by.某騎士団員P殿)

というお話です。


捕縛の術とやらについてカノン様にどういう技を用いたのかを説明してもらったところ、とんでもない長さになったので大分削りました。ノンブレスでは死んでしまう!

ミオちゃんがもうちょっと魔法に慣れて、熟練のマジシャンに成長した暁には改めて実技コミで教えてもらえることと思われます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ