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エピローグ:始まる日々

最終回です!!

 五日後


「いやぁマジでボディガードになれんのかよ俺ら」

「ボディガードじゃなくて『ボディガード見習い』だ」

「へへ似たようなもんだろぉ?」


 そう言って武人は優佳の肩を組んだ。


「それにしても、面倒臭い」


 歩きながら相馬はそう言葉を漏らす。

 見習いとして武人達が与えられた仕事は一週間の内の火曜日に瑠々の学校の行き帰りの警護をするというものだった。その仕事を遂行するため三人は現在徒歩で瑠々の家へ向かっている。


「文句を言うな。見習いとは言え専属のボディガードになれるのは光栄な事なんだぞ」

「まぁ火曜だけ朝起きるのが早いのはキツイぜ」


 武人は大きく欠伸をする。


「同感、前日に夜更かしが出来ない」

「それに学校も久し振りだしよぉ。体が拒否してるぜ登校をよぉ」


 事件の日から昨日まで武人達は御代家のボディガードとして学校側での登録手続き、また今回の騒動の罰として申し訳程度に寮での謹慎も言い渡されており五日間、正確には休日を挟むため三日間授業に出れなかった。


「お前らな……」


 武人と相馬の暢気な言い分に優佳は呆れを隠し切れなかった。


「あ、見えたぞ」


 だがそんなくだらない会話をしている内に三人は御代家の邸宅の近くに来た。


「今日から見習いとして働かせていただきます。成宮優佳です、よろしくお願いします」

「伊尾相馬、よろしくお願いします」

「覇原武人です、オナシャース」


 正門まで歩いた三人はそこに居たボディガードの一人に挨拶をする。


「御代家で専属のボディガードをしている横田だ。そうか、覇原武人……お前が」

「うん?俺の事知ってんのか?」

「ほぉ……! 覚えていないかそうかそうか……!!」


 横田は表情に青筋を浮かべながら引き攣った笑みを見せた。


「一週間経った今でもお前に頭のお前に殴られた部分が痛んで忘れたくても忘れられないんだがなぁ……!!」  


 怒気の籠った言葉に武人は目を見開く。


「あぁ!アンタ遊園地で襲って来た奴か!」

「違う!?お前の魔の手から瑠々様を助けに行ったんだ!!」


 合点がいったように指差す武人に横田は声を荒げた。


「いいか、あの時は本調子じゃなかったんだ。でなければ俺が高校生相手にKOされるはずが無いからな」


 訓練生である武人に倒された事をよっぽど根に持っているのだろう。横田は必死に取り繕うように言葉を畳み掛ける。


「え、そうなのか?なら今度本調子の時戦おうぜ!」


 一切の悪意無く言う武人に一瞬「うっ」とたじろぎそうになった横田。それをしたら武人が自分より強い事を認めている事に他ならないからだ。ここは何とか堪え平静さを装う事に成功した。


「あ、あぁ勿論だ。だ……だがまぁ暫くは仕事に慣れてもらう方が先決。『見習い』ボディガードとして上司の俺からしっかり学ぶんだぞ」

「おう!これからよろしくなセンパイ!」


 威厳を保つように上から目線で喋る横田だがそんな真意など全く察していないのだろう、調子よく「センパイ」などという単語を吐く武人。

 だが自分を慕う意味を示すその言葉に横田は悪い気はしなかった。


「お、何だ素直だな……ん、んン……!! ま、まぁさっきは怒鳴ってしまったが実際そんなに怒りがあった訳じゃない。む、寧ろ感謝してるくらいだ。あの一件以来瑠々様と明良様が心なしか明るくなってな。俺達使用人に対しても業務連絡以外で話し掛けて下さるようになった。こんな事は今まで無かったんだぞ」

「おっ門開いた。行こうぜ」

「そうだな」

「レッツ、ゴー」

「って聞けェ!?」


 感謝の言葉を遠回しに述べている横田を他所に三人は御代家の敷地に足を踏み入れた。

 正門から二十メートル程行くと大きな扉に着き、屋敷の玄関の扉は三人を招き入れるように開いた。


「おはよう」


 玄関には既に靴を履いて登校の準備が完了している瑠々が立っていた。

 だが、居たのは瑠々だけではない。そこには瑠々を除き四人の人物が居た。


「おっはよう三人共!!」

「この時間に起きてる武人と相馬を見るのはレアだな」


 まず二人、興花と彼女のボディガードの昌義。


「いや何でお前ら居るんだよ!?」

「武人達の初仕事でしょ?面白そうだから見に来たわ!ついでに瑠々ちゃんの家で朝ごはんも頂いたの!!美味しかったわ!!」

「マジかよ俺も食べてぇ。まだ食ってねぇんだよ朝飯!」


 今日は随分と早く寮を出たため武人達は寮の朝食にありつく事が出来ていない。

 そのため興花の話は武人の空腹を加速させた。


「ど、どうする。多分用意できるから食べるか武人?」

「頂こう、料理を持ってまいれ!!」

「どこの人間だお前は!?」

「ってぇ!?」


 食事が可能な事に舞い上がった武人の頭を優佳は強く掴んだ。


「瑠々様、武人を甘やかさないで下さい。数秒でつけあがります」

「それに、これ以上朝食に割ける時間が無い。そろそろ家を出ないと」

「ん、それもそうだな」


 優佳と相馬の言葉に納得した瑠々はそのまま家を出る選択を取った。


「じゃあ行ってきます。お父さん、間島一号さん」


 四人の内残りの二人は父親の明良と明良の過去に関係し今も関係が続いている間島一号である。


「あぁ、しっかりな」

「いってらっしゃいませ瑠々様」


 先程の横田の言葉通り、明良はこの前の事件を契機に雰囲気が少し柔和になり、屋敷内の人間と少しづつだが積極的にコミュニケーションを取るようになっていた。こうして瑠々が家を出る時に玄関まで出向き送り出すのもこの間までは考えられない事だ。

 しっかりと二人の顔を見て挨拶を交わした瑠々は武人達の方へ向き直る。


「じゃあ行こう」


 沢山の友達に対して瑠々を待っていた。



「変わりましたね。瑠々様」

「あぁ、だから俺も……変わっていかないとな。そのためにお前に斎条家の監視と定期調査報告の任務を取り下げたんだ」

「本当によろしかったのですか?あなたは斎条家に復讐するために今日まで生きて来たはずでは?」

「忘れてたんだ……流華との約束を」


 明良が思い出すのは流華が残した手紙、大事な形見として今も大事に保管してある手紙

だった。


「斎条家に対する怒りや憎しみは消える事は無い。だがその感情に身を任せ行動した場合どうなるか、本当は分かっていた、気付かない振りをしていた……馬鹿な話だ。俺は結局自分の欲望に身を任せていただけ、あの日から何一つ変わっていなかった。だから瑠々を危険に合わせてしまった。俺がもっとあの娘の親としてしっかりしていれば、今回の事は防げていた」


 拳を強く握りしめ唇を噛み締めた。


「俺がしなくちゃいけなかったのは、斎条家を潰す事じゃない、瑠々を、俺と流華の最愛の娘が笑顔で生きられる未来を創る事、そして何時か流華が目覚めた時、成長した瑠々の姿を見せてやる事だ」


 幾度となく選択を誤り、後悔し、自分の無力感に苛まれていた明良。だが、彼はもう迷わない。彼は過去ではなく、ようやく未来に向けて歩き出したのだ。


「お前には屋敷内で瑠々の護衛をしててもらう。これからは瑠々を護るためにその力を生かしてくれ」

「主のご命令ならば、断る理由などありません。ですがよろしいのですか?」

「何がだ?」

「いえ、恐らく明良様は自分の顔が斎条家に知られているため外での警護が出来ないと判断し私の警護任務を屋敷内へ限定したのだと思います。ですがそんな煩わしい処置を取らなくとも私が顔を整形すればいいだけでは?」

「顔を変えるのはもう俺だけで十分だ。それに……」


 吹っ切れたように、その後明良はこう言葉を繋いだ。


「期待の新人達が入ったからな」



「な、なぁ」


 道を歩いていた瑠々が突然止まると、全員に向けて言葉を放った。


「ん?何だよ瑠々」

「改めて今回の事……本当にありがと」

「ありがとってお前それ俺らが謹慎中の時電話で言ってたじゃねぇかよ」

「武人、謹慎なんて言葉知ってたのか」

「うるせぇよ!?話の腰をバキバキ折るんじゃねぇ!」


 武人の言う通り、瑠々は今回の一件で協力してくれた人全員に個別で感謝の言葉を述べていた。


「い、いや改めて言っておこうと思って。こうしてあの時のメンバーが全員居る訳だし、あと……もう一つ、言いたいことがあって」


 言いたい事、それは言うのが憚られた事。

 だがこれ以上先延ばしにするのはいけない。そう思い瑠々は決心した。


「みんな……私と、友達になってくれ……!」


 目をキュッと瞑り、しっかりと彼らに聞こえる声量で瑠々は言う。

 初めて自分から発した友好関係を広げるための言葉。慣れないそれは瑠々の体に不安と緊張を走らせる。それでも今日、瑠々がこれを言ったのは彼女が心から彼らと友達になりたかったからだ。

 返答を待つ瑠々、その時間はとても長く感じたが実際は数秒。その数秒の後、一番最初に口を開いたのは武人だった。


「瑠々、俺達を見ろ」

「……?」


 言われて彼女は顔を上げた。そして自身の視界に立っている人達を見る。そこには誰一人として不満の表情を見せる者は存在しなかった。


「俺は瑠々様のために剣を振るうボディガードです。そして願わくば、友人としても瑠々様と交流を深められればと思っています」

「友達で、ボディガード」

「俺が護るのは興花様ですけど……友達って事でこれからもよろしくお願いします」

「瑠々ちゃんはもう私達の友達よ!これから一緒に色んな事を楽しみましょう!」

「だとよ。まぁこの馬鹿共のせいで色々面倒な事はあるけど、楽しいぜ♪」


 武人はそうキメ顔で言うが


「「「大体お前のせいだろうがァ!!」」」

「ぐうぅふぉあ!!!???」


 次の瞬間、優佳、相馬、昌義の拳が武人の顔面に放たれた。三つの顔面打撃を受けた武人は吹き飛ばされ地面に転がった。


「ふふふ……あはははは!!」


 そのやり取りを見て、瑠々は自分があれこれ考えていたのが馬鹿馬鹿しくなった。

 だから、彼女は思わず笑ってしまった。

 瑠々は思い出した。今私の目の前に居る人達は、こういう人達だという事を。

 もう不安も、迷いも無い瑠々。なればこそ、彼女が次にする事は。


「武人」


 瑠々は自分から拳を突き出す。

 それを見た武人は顔面パンチによって出た鼻血を拭うと


「へへ……おう!!」 


 自分の拳を瑠々の拳に合わせた。

 

 こうして、騒がしくも愉快な新しい日常が始まった。

ここまで読んでいただきありがとうございました!!

これにて本作は完結とさせていただきます!!


新連載始めました!!

よろしければ読んでくださると嬉しいです!!


パーティーから追放された魔力ゼロのお荷物冒険者、十年の時を経て再会したヤンデレ気質の幼馴染達に求婚を迫られる~幼馴染達がSランク冒険者や立派な令嬢に成長した中、俺だけ【ワケアリ】になっていた~

https://ncode.syosetu.com/n1186gl/

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