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なんでもない、日常の先に。  作者: 夜月黎


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9/9

9.焦り

虚しく鳴り続ける呼び出し音を、俺は焦りを抑えきれずに聞いていた。


どれだけコールしても、雪は電話に出なかった。


「くそっ」


俺はスマホをベッドに投げ付けた。


そのままベッドの端に座り、頭を抱える。


家まで行くか……?


いや、雪が拒否すれば話すらできない。


でも、ずっとこのまま……?


焦燥感が駆け巡り、ゾッする。


昨夜の少し元気のない雪の様子。

逃げるようにして帰っていった雪。


「……せめて、なんか言ってくれよ……」


そう呟いてから、気づく。

俺は拳を強く握りしめた。


「……雪が言えるわけねぇか」


いつも言葉を飲み込む癖がある。

それを俺は知っていた。

知っていたのに……。


放り投げたスマホを手に取る。

雪へのメッセージ画面。


最後のやりとりが、眩しい。


『久しぶりに一緒にご飯行けるの、楽しみです』


俺はその文字を何度も目でなぞった。

久しぶりに一緒に食事に行けた日、雪は本当に嬉しそうに笑ってた。

俺も……久々に楽しかった。

そして……飲み過ぎた……。


ひとつ、溜め息を吐き出してから新しいメッセージを打ち込む。


『ちゃんと雪と話がしたい。明日、仕事終わりに一緒にいつものところに行きたい』


何度も考えて、消して、打ち込んで、それだけを送る。


すぐに既読がついたが、返事は返ってこなかった。

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