41 オーティナティック実況(11)
俺たちはそのオーディンを倒すためにシェルターの扉から出て、ハシゴの前に立っていた。
ユーゴに事情を話すと、ぜひ協力させてほしいと言ってきた。
亡くなった3人の男性兵士の中には、彼が小さい頃に遊んでくれた人も混じっているようで、その話を聞くと少しショックを受けているようだった。
俺たちはハシゴを登って地上へ出る。ランがマンホールの蓋を開ける時に注意喚起をしてくれた。
「これはあくまであたしたちの問題だから、いざという時になったら迷わず逃げてね。あたしたちの復習に巻き込んで犠牲を増やしたとなったら、天国にいる3人に申し訳なさすぎるから」
「そこら辺は我々も理解している。安全マージンはしっかり取り、危険だと判断したらすぐに撤退するつもりだ」
「そう、ならいいわ」
ランがホログラムからこの辺りの地図を確認する。そのオーディンがいるというところを見ているのだろう。
「ついて来て」
案内された場所に着くと大きな穴があった。底が見えないほどの深い穴だ。
「ここにそのオーディンはいるんですか?」
「えぇ、そうよ。こいつは夜だけに活動するから今は何をしたって出てこないけど」
俺は時刻を確認する。今はゲーム内時間で午後5時だ。
「その夜ってのは具体的に何時からなんですか?」
「日の入りしてから少し経ってからね。今の季節だと午後7時ごろって感じかしら」
「それじゃああと2時間ほど時間がありますね」
「そうね、でもその前にやっておきたいことがあるの」
ランがなにかの道具を取り出した。小さな丸い物体に2枚の羽のような機械がついている。
それが数えきれないほどたくさんある。
「これは………?」
俺が問いかけると、ユーゴが代わりに答えてくれた。
「人工蛍か、こんなものよくここまで集めることができたな」
「ユーゴ中尉、人工蛍というものはなんでしょうか?」
「照明器具のひとつだよ。主に野外で活動する時か、装飾に使われる。ここの丸い小さな部分が夜になったら光って、辺りを照らしてくれるんだ。ここにある羽根で飛ぶことができるから、わざわざ設置する手間もない」
「へぇ、便利な道具ですね」
「そうだな、しかしここまで集めるには随分苦労したはずだ」
ユーゴの言葉にランは静かに頷いた。
「このオーディンは夜にしか活動しないということがわかってから、シェルターのみんなが、特にマリアさんが少しずつためていっからね」
彼女はそれらを俺たちに渡した。
「この人工蛍を夜になるまでに飛ばしておきたい。手伝ってくれる?」
「もちろんだ」
「了解しました」
人工蛍の扱い方は結構簡単で、俺でもすぐに理解することができた。
自分たちの持っている人工蛍を全て飛ばし終わった時、太陽は地平線に沈みかけていた。
「中尉、日の入りまでそろそろですね」
「そうだな、気を引き締めていけよ」
「了解です」
あたりは暗い夕焼けに染まっている。暗い夕焼けはこの退廃的な世界観と最もマッチする光景かもしれない。
こんなところまで作り込んでいるなんて、オーティナティックを作った運営は相当なド変態だ。
あたりが徐々に暗くなり始める。人工蛍たちもポツポツと灯りを灯し始める。
俺は自分の中で緊張が高まっているのを自覚する。
「おれは狙撃レールガンのチャージに入る。敵が出て来たらNeoはオーディンを引きつけろ!」
「分かりました」
「ランも安全なところに身を隠してくれ!」
「オッケー!」
ランが慌てて瓦礫の影に身を隠した。ユーゴがレールガンをチャージする音だけが聞こえる。
深く息を吸って吐いた後、地面が少し揺れた。
「オーディンが目覚めました。攻撃を開始します!」
穴から大きな影が接近してくるのを確認する。俺はレールガンを構えてスパイクを作動させる。
「狙撃!」
後ろから大きな光が発射されて、その影にぶち当たった。爆発音とともに煙がまった。
金属で作られた敵にエネルギーの塊を当てても煙は出ないだろうと思ったが、まぁゲームだから仕方ないね。
あの狙撃レールガンの威力は絶大だ。結構大きなダメージを入れることができたと思う。
「やったか………?」
レールガンを発射したユーゴがつぶやいている。
NPCが『やったか………?』と言う時は絶対に相手は倒れていない。俺は油断せずいつでもレールガンを撃てるようにする。
煙が晴れて敵の全容が見えるようになった。
案の定オーディンは倒れていなかった。しかもさっきのレールガンの攻撃でダメージを受けている様子すらない。
体格の大きな人型ロボットで、黒を基調とした機体に赤色の塗装がなされている。黒い頭の部分の中で、目のように赤い光が輝いている。
……こいつがマリアさんの息子たちを殺したオーディン。あのチュートリアルボスとはまた違う。
スピード系かパワー系のどちらかだろう。これは戦闘が長引きそうだ。




