38 オーティナティック実況(9)
「すみません、あの方は何というのですか?」
「彼女はマリアさんよ、マモルくんみたいに身寄りのない子供たちをこのシェルターの中で世話しているの」
「協力しあって生きているんですね」
「もちろんよ。手を取り合わないと、とてもこんな世界では生きていけないわ」
彼女はホログラムで自分のデータを見せてくる。
「あたしの自己紹介がまだだったね。あたしはラン・ディーベル。気軽にランって読んでちょうだい」
「ランさん、いいお名前ですね」
「ありがとう。それじゃあシェルター内を案内するわ」
ランさんが先導してくれるので、俺たちはそれに着いていく。
「この集合シェルターには6世帯の人が住んでいるの。七人家族が一つと四人家族が3つ、あたしたち三人家族が一つ、そしてマリアさんところのグループにマリアさん含めて6人いる」
「だいぶ沢山の人が住んでいるんですね」
「これぐらい集合シェルターでは一般的か、ちょっと少ないレベルよ。もっと多いところだったら、シェルター内に学校すらあるって話もたまに聞くわ」
ランさんに礼拝堂や食堂、台所やシャワールームなどの共用施設を案内してもらった。
そして一つの部屋の前で立ち止まった。
「ここは今誰も住んでいないから、自由に使ってもらって構わないわ。ベットが2つと最低限の家具があるから、一時的に宿泊するぐらいだったら困らないでしょ」
ユーゴが机にレールガンを置いて、ランさんに礼を言った。
「ありがたく使わせてもらう」
「勘違いしないでよね。別にあんたのためじゃなくて、マービンさんに受けた恩を返してるだけだから」
「言われなくても理解しているよ」
「そういえばマービンさんは、まだあの個人シェルターに一人で住んでるの?もうすっかりおじいちゃんなんだから、ここでみんなと暮らせばいいのに」
ランさんの言葉を聞くと、マービンは声のトーンを落として淡白に言った。
「親父はつい先日息を引き取った。理由は老衰だ」
「そんな……」
ランさんは言葉を一瞬詰まらせた。
「なんというか、その、この度はお悔やみ申し上げます」
「気にしないでくれ。おれはこの件に既に自分の中で折り合いをつけているから」
彼女はしばらく居心地悪そうにした後、ちょっと用事があると言って席を立った。
「ごめんね、本当はもっと一緒にいたいけど、外に出て見たことをみんなに報告しなきゃいけないから」
「貴重なお時間をとらせてしまい、申し訳ありませんでした」
「別にいいよ。ここに外の人が来るのも随分久しぶりだから、あたしもちょっとは楽しかった」
そう言ってランさんは俺たちに与えられた部屋から出ていった。
ストーリーもある程度進めることができたし、そろそろ配信を終わろうかと思った時、オーティナティックのゲームメッセージが届いていることに気がついた。
〈ストーリーイベント【時の止まった思い出たち】が発生しました〉
これは、なんだ?
コメント:ストーリーイベントキタコレ
コメント:これ、新発見のイベントじゃね?
コメント欄がざわついている。なにやら俺はすごいことをしたらしい。
コメント:ストーリーイベントとは、オーティナティックのサブストーリー的な立ち位置のものですね。これを無視しても、本編のシナリオに影響はほとんどありません。今回Neoさんが発生させたストーリーイベントは今まで誰も見つけていない新発見のものとなります
なるほど、これはプレイしなくても本編には関係ないと。
俺はこのストーリーイベントやらを進めるかどうか迷う。
元々本編だけ進めて最短クリアを目指す予定だったから、あまり気乗りはしない。
しかし新発見のイベントということもあって、視聴者さんたちは大いに盛り上がっている。うーん、これはやらないという選択肢はないな。
俺はストーリーイベント【時の止まった思い出たち】の詳細を確認する。
〈まず地上の様子を報告しに行ったランの後をついていこう〉
これはランの報告を盗み聞きしろということだろう。
俺はユーゴに一言断りを入れてから、自分の部屋から出た。
33話で話が飛んでいるのに気づきまして、そこを修正いたしました
チュートリアルが終了しようとしたところで、オーディンの襲撃があり、ユーゴと一緒に逃走するという流れのはずだったのですが、オーディンの襲撃の話が飛んでいたようです
お手数ですが、もう一度33話に戻って読み返していただけると幸いです




