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第5話 サキュバスさんにお願いしてみた

「メグー!!おはよう!今日も気持ちよくしてあげるわよ!だから離して!」


「うーん、抱き枕がうるさいのです」


 さきゅちゃんが離してと言わんばかりに抵抗しだす。仕方ないので開放してあげると凄まじい勢いでおトイレに向かっていった。


 さきゅちゃん抱き枕があまりにも気持ちいいので、ここ最近は必ず抱きしめて寝ている。さきゅちゃん的にも日常的にエネルギーを補給しやすいと思うのでWinWinの関係だと思うのだけどなぜか毎回嫌がられる。


 さきゅちゃんが居なくなって眠れなくなってしまったのでベッドから起き上がり外をみるとまだ深夜。今回は単純に我慢できなくなってしまっただけらしい。


「ふぅ、すっきり。気持ちよかったー。あ、おはよう」


「おはようなのです」


 拘束していたのは私の方なので文句は言えないし言わない。時間的にはあまり眠れてないはずだけど、抱き枕のおかげでぐっすり眠れたので元気も十分。というわけで私も起きる事にした。


 彼女はおトイレに行っていた筈なのだけど気づくと朝ご飯がテーブルの上に置いてあった。普通なら割と驚くべき事だけど多分エネルギーを使って創造したのだろう。


「この料理ってどうやって作ってるのです?今更だけどさきゅちゃんの能力は凄いのです、しかも美味しいし」


「あぁ、これはコピーしてるの。世界の何処かでリアルタイムに出来た料理を複製して召喚してるのよ」


「……現物がなんとも無いのならセーフなのです?」


 何やらグレーゾーンの領域を走ってる気がするけれど、料理の複製体を作ってはいけないなんて法律は聞いたことがないのでなんとも言えない。ついでに言うと今更ながら人体の悪影響的な物が発生しないのか不安になるけど——。


「美味しいからセーフよ」


「なのです」


 こうして人類は堕落していく。眼の前に美味しい料理があって我慢できる人なんていない。さきゅちゃんは一般的にイメージできるサキュバスとは印象が違うけど、やっぱりサキュバスなだけはあるのです。


 食卓を囲み、卵焼きと野菜炒めをもぐもぐと頬張る。コピーということはこの時間にこのメニューを食べている人が他にもいるのだろう。時差がある海外から持ってくることもできるのだろうけど、どんな人が作ったのかなーと想像が膨らむ。


「ちなみにこういう料理って呼び出しコストと得られるエネルギーの釣り合いとれてるのです?」


「今日のメグから取れてるエネルギー分だけで料理を10回は呼び出せるわね」


「実質無限に出せるのですね」


 こんなにコスパが良いのに出会った時は行き倒れていたのはなんだったのか。


「メグのコスパが良すぎるのよ。こんなに何をしても気持ちよくなってくれる人なんて中々いないのよ?サキュバスによっては良かれと思って投資したエネルギーが不発に終わって大損することも珍しくないんだから」


「なんか言い方がやらしくて嫌なのです」


「仕方ないじゃない、事実なんだから。他所のサキュバスにバレたらメグなんてモテモテよ?」


 さきゅちゃんの話によると、エネルギーを使ったご奉仕は基本的にハイリスクハイリターン。相手の好みを分析しなければならないのは当たり前だけど、かといって好みの物を出し続けたからといって常に同じリターンが得られるわけじゃない。普通は段々と飽きてきて、得られるリターンが減っていってしまうのだとか。


 それと比べると私は最大リターンのエネルギー量としては同じ。だけどもう何回同じネタでエネルギーの投資をしても決まって同じだけのエネルギーを返してくれるらしく、安定感が凄いのだとか。


「つまり常にハジメテの時と同じ感情を出してくれるってことなの。これは凄い事なのよ」


「ふーん、つまりさきゅちゃんは私の事を餌か何かだとしか思ってないです?」


「もー、イジワルね。メグは大切な親友よ!」


 もちろんさきゅちゃんがそんな悪い子じゃないのは私もわかっている。単なる軽口だ。


 けれど……そんな軽口の勢いに余ってつい、願望が口から漏れ出してしまった。


「じゃあ——私の言うこと聞いてくれるです?」


「なんか脈絡が無いけど……まあ私に出来る事ならやってあげる。またお肌がぷにもちになるお風呂に入る?」


 やめろ、私!今なら引き返せる!ぷにもちお風呂でいいのです!あるいは無難にお背中を掻いてもらえばいいのです!そういえば最近は久々にラーメンを食べたいと思ってたのです。そう、どこか有名店のラーメンを召喚して貰えばいいじゃ


「サキュバスっぽいことして欲しいのです」


「……えっ?」


「サキュバスっぽいことして欲しいのです」


 引き返せなくなったので2回言ってみる。


「……サキュバスっぽいことはいつもしてるじゃない。今日の朝……深夜ご飯もサキュバスっぽいでしょ?」


「本当にそう思ってるです?」


「……もう!」


 サキュバスはこれまでの私の価値観ではあくまで伝承とか創作上の存在に過ぎないものだ。


 だからあるいは当事者である本物のサキュバスとしてはご飯を召喚したりするのが当たり前の可能性もあったけど……どうやら違うみたい。


「メグのえっち!」


「それらしい言動でひたすら焦らしてくるさきゅちゃんが悪いのです!」


「そんなこと言われても、本当のサキュバスっぽいことってよくわからないし」


「じゃあさきゅちゃんの思う本当のサキュバスっぽいことで良いです」


「わ、わかったわよ。それじゃあご飯食べ終えたら寝室で……き、期待して待ってなさい!」


 拝啓、父上。母上。私はついに穢れてしまったみたいなのです。さきゅちゃんに初めてあった時は興味のない素振りをして体面を保つことが出来ていたのに、ついに勢いに任せてとんでもない事を口にしてしまいました。


 もう私は駄目かもしれません。でも悪いのはさきゅちゃんです。敬具。

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