第4話 サキュバスさんを焦らしてみた
「メグー、最近ずっと構ってくれなかったけどどうしたのー?」
さきゅちゃんが突然私の背中にだらりとのしかかってくる。もっちりとしたさきゅちゃんの感触がちょっぴり気持ちいい。
「ちょっとゲームの公式大会に出てたのです」
「あぁ、あのクソゲーね」
「こら!クソゲーなんかじゃないのですー!」
のしかかってくるさきゅちゃんを強引に突き放して文句を言う。自分の好きなゲームを貶されるのは気持ちよくないのです、まったく、サキュバスの癖にそんなこともわからないのです?
ちなみに私のプレイしているゲームは事実として世間一般にクソゲーと言われているのだけど、本当のことを言わない優しさも必要だと思う。
「だってメグってばゲームやってると私に構ってくれないんだもん。仕方ないわよね?これは嫉妬なの」
「はいはい、寝言は寝て言ってくださいなのです」
さきゅちゃんの何やらいかがわしい発言や意味深な誘惑も流石にここまで来たら完全に慣れた。
最近も美味しいステーキを召喚したりマッサージ椅子を召喚したりとあの手この手で気持ちよくしてくれているけれど、一般にサキュバスという名前から想像できるような事は何もしてこない。今の発言も基本的に『そういう台詞を言うとエネルギーが稼げる』というどこかから仕入れた情報を参考にしているのだろう。
「もう、メグってばほんと冷たいわね。倦怠期なのかしら」
「前々から気になってたのですけど、意味をわかってて言ってるのです?」
「えっ……」
さきゅちゃんが止まった。
「え、その反応は予想外なのですけど……。いつもの流れならからかってくると思ったのに」
「ま、全く。もしかして誘い受けってやつかしら?」
「ちなみに誘い受けってどういう意味なのです?」
「…………ツッコミ待ち、的な?」
ある意味ではこれ以上なく正解なのかも知れないけど、彼女が言いたいのはボケとツッコミの事なんだと思う。
カマをかける意味も兼ねてじーっと見つめていると、「あたしに惚れちゃった?」とか「欲求不満みたいね」とかそれっぽい軽口を叩き始めるが、それを軽くスルーしてじーっと見つめ続ける。
そしてさきゅちゃんが屈した。
「ご、ごめんなさい。知ったか振りでした」
「やっぱり」
最初は全部わかった上で焦らしてるのかと思ってたけど、違ったのですね。
けれどしょんぼりとするさきゅちゃんの姿は私の本意ではない。さきゅちゃんはなんだかんだいって既に大事なお友達なのだ。
そして同時に良いことを思いついた。
「仕方ないのです、今日は私がさきゅちゃんを気持ちよくしてあげるのです!」
「え、えぇー!?」
いつもの意趣返しという奴だ。さきゅちゃんの手を引っ張って寝室まで誘導し、ベッドをぽんぽんと叩く。
「ほらさきゅちゃん、このベッドに横になって」
「ちょ、ちょっと」
「気持ちよくなりたくないのです?」
「……わ、わかったわよ」
「つまり気持ち良くなりたいのです?」
「うるさいわね!従ってあげてるだけじゃない!」
ぶつくさと文句を言いつつも恐る恐るとベッドに乗り、ごろんと横になるさきゅちゃん。同時に掛け布団を身体に被せて身体を隠してしまった。
「まったく、いつも肌面積の多いコスプレみたいな衣装をしてるのにどうしちゃったのです?」
「なんかいつもと雰囲気が違うから……恥ずかしいのよ」
おどおどするさきゅちゃんの隣に乗り込み彼女が占領する掛け布団を半分だけ引っ張って私もころんと横になる。
「まったく、1人で使わないで欲しいのです」
「べ、別の布団持ってきなさいよ」
さきゅちゃんは今日に至るまで散々私の事をいじってきたけれど、どうやら攻められるのには弱いらしい。私の顔なんて見たくもないとばかりに背を向けて横になるさきゅちゃん。私はそこにぎゅっと抱きついた。
「ひゃんっ!?」
上擦ったような声をあげるさきゅちゃん。私はそれに対してすっとぼけながら疑問を投げかける。
「どしたのです?」
「な、なんでもないわよ」
なんでもないなら問題ない。と言うことでぎゅーっとさらに強く抱きしめて、彼女のもちもちボディの感触を楽しむ。
「やっぱり柔らかいのです。抱き枕に最適ー」
「抱き枕ならネットで買いなさいよ……」
「既に持ってるのにわざわざ買う必要無いのです」
さきゅちゃんの近くに居るとなんだか心が落ち着いてくる。向こうは全く落ち着いていないらしくもぞもぞ動いていたりどんどんと体温が上がってきている気がするけど、そのぽかぽかとした暖かさがさらに私をリラックスさせてくれる。
「それじゃあそろそろ……いいです?」
「……は、はい」
何がいいのかはわからないけど言質は貰った。というわけでお言葉に甘えて私は目を閉じる。
「ありがとなのです、じゃあおやすみなのですー」
「……えっ?」
「えってなんなのです?」
「いやいや、この流れなら絶対何かやらしー流れに」
「期待してたのです?」
「してない」
「じゃあ改めておやすみなのです。ゆっくりお昼寝すると気持ちいいのですー」
時間に縛られずおふとんでぐっすりおやすみ。あらゆる人間が気持ちよさを感じるであろう至高のひとときだ。ついでにレベルの高い抱き枕まで付いてるのだから言うことなし。
多分エネルギーは補給できているだろうし文句を言われる筋合いもない。すやすや。
「……メグのバカ」




