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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第五章:迫り来る影 ー 魔族の策謀と水都の試練 ー

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白亜の水都 ー 貴族の門 ー

第四章をお読みいただきありがとうございました。


幾度もの戦いと出会いを経て、エリス達はついに目的地の一つであるセントポルへと辿り着きます。

「白亜の水都」と呼ばれる大都市で、彼女達を待ち受けるものとは――。


第五章、開幕です。

エリス達は、セントポルへと到着した。


遠くから見えた時も大きな街だとは思っていた。

だが、近くまで来ると、その迫力は比べ物にならなかった。


巨大な川を跨ぐように築かれた石橋。

その先に広がる白亜の街並み。

空へ伸びる尖塔と、大聖堂。


夕陽に照らされたその景色は、まるで別世界のようだった。


「……すごい……」


馬車の窓から外を見ていたマリンが、思わず呟く。


エリスも窓に顔を寄せながら、目の前の光景に圧倒されていた。


街へ入るには、その巨大な橋を渡らなければならない。


橋の入り口には巨大な門があり、完全武装の衛兵達が目を光らせていた。


そして、その前には長い列ができている。


商人。

旅人。

冒険者。

荷馬車の一団。


多くの人々が入門審査を待っていた。


「こんなに並ぶんだ……」


マリンが驚いたように呟く。


「セントポルって、こんなに人が集まる街なんだね……」


エリスも列を見つめながら小さく息を漏らした。


だが――


エリス達の乗る馬車列は、その長い列には向かわなかった。


一般用の門から外れ、その横に設けられた別の門へ進んでいく。


そこは一般用より小さいものの、重厚な装飾が施された門だった。


「あれ……?」


エリスが不思議そうに呟く。


すると前方から護衛騎士の声が響いた。


「辺境伯家の馬車だ! 門を開けろ!」


その瞬間だった。


門兵達の空気が一変する。


先頭の馬車に刻まれた家紋を確認すると、衛兵達は一斉に姿勢を正した。


「セントポル辺境伯家、ご帰還!」


重厚な門が即座に開かれる。


周囲の兵達も素早く整列した。


その動きは見事というしかなかった。


やがて先頭の馬車の窓が開き、セレフィーナが顔を見せる。


「ご苦労様です」


柔らかな笑みを向けられ、門兵達はさらに深く頭を下げた。


確認も、審査もない。


そのまま馬車列は街の中へ通されていく。


「えっ……」


「……すご……」


エリスとマリンは、ただ呆然としていた。


つい先ほどまで、あれほど長い列ができていたというのに。


貴族と一般。


その違いを、嫌でも見せつけられた気分だった。


橋を渡り切ると、セントポルの街並みが一気に広がる。


石畳の大通り。

幾つもの水路。

橋を行き交う人々と馬車。


青と金の旗が風にはためき、街全体が活気に満ちていた。


露店からは香ばしい匂いが漂い、遠くからは吟遊詩人の歌声まで聞こえてくる。


「王都みたい……」


マリンが感嘆の声を漏らす。


エリスも窓の外を夢中で見つめていた。


その頃――


先頭の馬車では、セレフィーナとクラリスが向かい合って座っていた。


「それにしても、本当に助かったわ、クラリス」


セレフィーナが穏やかに微笑む。

クラリスは軽く頭を下げた。


「いえ。冒険者として当然のことをしたまでです」


「相変わらず堅いのね」


セレフィーナは苦笑する。


「昔はもっと気軽に話してくれたじゃない」


「今は立場が違いますので」


クラリスは落ち着いた口調で返した。

それを聞き、セレフィーナはどこか懐かしそうに目を細める。


「……騎士団にいた頃と変わらないわね」


少しの沈黙。

やがてセレフィーナは、ふと思い出したように口を開いた。


「そうだわ。このまま城まで来てもらえないかしら?」


「お城へ、ですか?」


「ええ。正式にお礼をしたいの」


そう言って、セレフィーナは真っ直ぐクラリスを見る。


「命を救ってもらったのですもの。辺境伯家として、きちんと礼を尽くさせてちょうだい」


クラリスは一瞬だけ考える。


本来なら、ここで深く関わるべきではない。

だが断るのも不自然だった。


「……承知いたしました」


クラリスが静かに頷くと、セレフィーナは嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう」


そして馬車は、

セントポルの街中を、馬車はゆっくりと進んでいった。


石畳の大通り。

幾つもの水路と橋。

道の両脇には露店が並び、多くの人々が行き交っている。


香ばしい料理の匂い。

商人達の呼び声。

遠くから聞こえる吟遊詩人の歌。


エリスとマリンは、夢中になって窓の外を眺めていた。


「すごい……」


「リンデンとは全然違うね……」


そんな風に街の景色を楽しんでいた時だった。

ふと、エリスは気づく。


(……あれ?)


馬車は、いつまで経っても宿街へ向かう気配がない。

むしろ、人通りの多い中心街を抜け、更に奥へ進んでいく。


「ねぇマリン……」


「うん……私も思ってた」


二人は顔を見合わせた。


「この馬車……どこ向かってるの?」


街へ着いたのだから、もう護衛は終わりのはずだ。


てっきり宿か、冒険者ギルドの近くまで送ってもらえるものだと思っていた。


だが――


馬車の進む先に見えてきたのは、一際大きな建物。


高くそびえる白い城壁。

幾重にも設けられた塔。

街を見下ろすように建てられた巨大な城。


「えっ……」


マリンが固まる。


「ま、まさか……」


エリスも引きつった声を漏らした。


「お城……?」


二人の顔が一気に青ざめる。


「ど、どうしよう……!」


「そんなところ行ったことないよ!?」


小声で慌て始める二人。


その様子を見ていたルシアンも、窓の外へ視線を向けながら静かに呟いた。


「……確かに城へ向かっているようだな」


「ですが、本来なら俺達のような冒険者が簡単に入れる場所ではないはずです」


その言葉に、余計に緊張が増す。


マリンは慌てて髪を整え始めた。


「ね、ねぇ、変じゃない!? 服大丈夫!?」


「わ、私も何か変なところない!?」


エリスも落ち着かない様子で服を確認する。


そんな二人を見て、カイルが呆れたように息を吐いた。


「今更慌てても遅いだろ」


「うぅ……」


だが、不安な気持ちとは裏腹に、馬車はどんどん城へ近づいていく。


やがて、一行は城門前へと到着した。


巨大な鉄門。

その前には完全武装の衛兵達が並んでいる。


すると、先頭の馬車に気づいた門兵達の表情が変わった。


「セレフィーナ様のお帰りだ! 門を開けろ!」


慌ただしく門が開かれる。


衛兵達は一斉に整列し、深く頭を下げた。


その中で、セレフィーナが馬車の窓を開き、穏やかに声を掛ける。


「ご苦労様です」


「はっ!」


門兵達は緊張した様子で敬礼した。


そして――


重厚な門を潜り抜け、馬車は城の敷地内へと入っていく。


「ほ、本当に入っちゃった……」


エリスが呆然と呟く。


マリンも緊張したまま、小さく頷いた。


こうしてエリス達は、

セントポル領主の城へ足を踏み入れることになった。


お読みいただきありがとうございます。


ついにセントポルへ到着しました。


これまでの旅では街道や小さな街が中心でしたが、ここからは大都市ならではの人々との出会い、貴族や教会との関わり、そして水面下で動く魔族達の陰謀が描かれていきます。


エリス達の新たな物語を、これからも見守っていただけると嬉しいです。


次回の更新は、6月9日18時を予定してます

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