境界の子 ― 与えられる使命
————戦いを終えた日の夜
今日はとても長い1日だった。
エリスはとても疲れていた。
食事を終えると,疲れたので今日はもう寝ると両親に告げて
自分の部屋に行った
そして、今日1日の事を思い出しながら眠りについた。
いや、眠りについたはずだった。
だが——
次の瞬間。
視界は、白に染まっていた。
「……また」
エリスは、静かに呟く。
足元も、空も、すべてが白。
現実とは切り離された空間。
そして、その中心に——
二つの存在。
「来てくれたのね」
柔らかな声。
セレネ。
その隣に、静かに立つアテナ。
「……二人とも」
エリスは、少しだけ緊張した表情で二人を見る。
ただならぬ空気を感じ取っていた。
セレネは、ゆっくりと口を開く。
「エリス」
その声は、これまでよりも——
少しだけ重かった。
「そろそろ、話す時が来たわ
“境界の子”の本当の役割を」
空気が、静かに張り詰める。
エリスは、黙って頷いた。
セレネは、続ける。
「境界の子とは——
どこにも属さない存在
人でも、魔でも、神でもない
だからこそ——
すべてに干渉できる」
エリスの瞳が、わずかに揺れる。
アテナが、一歩前に出た。
「そして、その役目は一つ
世界の均衡を保つこと」
静かに、だがはっきりと告げる。
「均衡が崩れた時
それを——
正す」
その言葉の意味は、重かった。
エリスは、ゆっくりと理解していく。
(つまり……)
「……消す、ってこと?」
小さく、問いかける。
アテナは、わずかに目を細めた。
「そう
必要なら——
存在そのものを」
沈黙。
その言葉の重さが、ゆっくりと沈んでいく。
そして——
セレネが、さらに続けた。
「今……
魔族が動き出している」
エリスの表情が、わずかに変わる。
「……やっぱり」
森で感じた気配。
すべてが繋がる。
「このまま放置すれば
均衡は崩れるわ」
セレネの声は、静かだった。
だが確実に——
未来を示していた。
「だから、エリス
あなたに問うわ」
その一言で、すべてが変わる。
「境界の子として
この世界に関わる覚悟があるか」
選択の時だった。
セレネの問いは、静かに響いていた。
普通なら——
迷う問い。
世界の均衡。
命の選別。
その重さは、計り知れない。
だが——
エリスは、迷わなかった。
「……あるよ」
その答えは、あまりにも自然だった。
セレネとアテナが、静かにエリスを見る。
エリスは、まっすぐに前を見据えた。
「もう、決めてたから」
小さく、だが確かな声。
「私……前にできなかったことがあるの」
その言葉に、アテナの目がわずかに動く。
エリスは続ける。
「人と魔族が……
区別なく、一緒に暮らせる世界」
それは——
前世で叶わなかった願い。
「あの時は、できなかった
でも……」
一歩、踏み出すように。
「今なら、できるかもしれない」
その瞳には、迷いがなかった。
「境界の子として
その力があるなら——
私は、やりたい」
静寂。
セレネが、ゆっくりと口を開く。
「……それは
とても困難な道よ
どちらからも理解されないかもしれない
敵も、増える」
それは、優しさからの警告だった。
だが——
エリスは、微動だにしない。
「それでも」
その一言に、すべてが込められていた。
「私は、やりたい」
もう一度。
強く、はっきりと。
「今度こそ
叶えたいから」
アテナは、その姿をじっと見つめていた。
そして——
小さく、微笑む。
「……いいわ」
その声には、どこか安堵があった。
「あなたなら
きっと、できる」
セレネも、優しく頷く。
「ええ
だからこそ、あなたを選んだの」
エリスの覚悟は——
ここで、完全に定まった。
エリスの言葉を聞き終えたあと。
セレネは、しばらく何も言わなかった。
静かな時間が流れる。
その瞳は、どこか遠くを見ているようだった。
やがて——
セレネは静かに、口を開く。
「あなたの覚悟は、確かに受け取った」
その声は、優しく。
そして——導くようだった。
「なら、道を示しましょう」
エリスの表情が、わずかに引き締まる。
セレネは続ける。
「あなたの願いを叶えるには
まず“土台”が必要よ
世界を変える前に——
あなたの立つ場所を、安定させなさい」
エリスは、静かに聞いていた。
「あなたがいるのは、人界
その中でも——
サントス国」
その名が、はっきりと示される。
「まずは、その国をまとめなさい
内側から、安定させるの」
エリスの瞳が、わずかに揺れる。
(……国を?)
想像以上に、大きな話だった。
セレネは、さらに踏み込む。
「そのためには——
王族と関わりなさい」
一瞬、空気が止まる。
「……王族?」
エリスの声に、戸惑いが混じる。
当然だった。
これまで接点など、一切ない。
「そんなの……どうやって……」
小さく漏れる本音。
セレネは、わずかに微笑んだ。
「だから、ヒントをあげるわ
あなた一人で王に会う必要はない
“橋渡し”を使いなさい」
その言葉に、エリスは顔を上げる。
「……橋渡し?」
「ええ、教会よ」
その一言で、すべてが繋がる。
「教会は、人界と王族を繋ぐ存在
そこを味方につけなさい
そして——
“境界の子”であることを伝えるの」
エリスは、息を呑む。
(……言うの?)
それは——
隠してきた、自分の正体。
「それが、最も確実な方法よ」
セレネの声は、迷いがなかった。
エリスは、しばらく考える。
不安。
迷い。
だが——
「……うん」
やがて、頷いた。
「それしか、ないよね」
覚悟は、すでに決まっている。
ならば——進むだけ。
セレネは、満足そうに微笑んだ。
「いいわ
それでこそ、あなたよ」
そして——
そっと手をかざす。
白い世界が、ゆっくりと揺らぐ。
「行きなさい
あなたの世界へ」
次の瞬間——
エリスの意識は、現実へと引き戻された。
目を開けると——
見慣れた天井があった。
「……戻ってきた」
小さく呟く。
白い世界ではなく、いつもの自分の部屋。
それだけで、どこか安心する。
だが——
頭の中は、静かではなかった。
(境界の子の役目……)
(サントス国をまとめる……)
(王族と関わる……)
一つ一つが、重い。
「……無理だよ、一人じゃ」
正直な本音が、ぽつりと零れる。
ベッドに腰を下ろし、俯く。
しばらく、考える。
そして——
「……うん」
小さく、頷いた。
「まずは……話そう」
父と母に。
これまで隠してきたこと。
そして——
これからのこと。
不安はある。
でも——
「……お母さんなら」
なぜか、そう思えた。
理由はわからない。
けれど——
きっと、一緒に考えてくれる。
そんな確信があった。
「……よし」
これ以上考えても、答えは出ない。
今は——
休むべき時。
エリスは、静かに横になった。
目を閉じる。
意識が、ゆっくりと沈んでいく。
その胸の奥には——
小さく、だが確かな決意が灯っていた。
そして——
誰もまだ知らない。
この決意が。
世界を大きく動かす、始まりになることを。
第二章 運命の導き ― 新たな歩みの始まり ― 完
最後まで読んで頂きありがとうございます
ここまでで第二章を完結します
次回の更新は第二章のまとめを4月17日19時を予定してます




