第244話 空間結合
指揮官バジムさんとの交渉も終わった。
俺は売却してもいいと言う、魔王軍が倒した火竜の素材の一部をストレージに収納した。
それを見たバジムさん達は驚愕した顔を浮かべていた。
彼らは俺達のことをまとめて原住民と呼ぶ。
この機会に種族がいくつも分かれていることを教えておいた。
原住民はみんなこのくらいのことができると、勘違いをしてくれたらしばらくは争いはないだろう。
彼らは往復に何か月もかかる本国を、行き来しながら国作りを始めると言う。
俺達はまた様子を見に来ることを約束して別れた。
今回、召喚され元の時代に戻ってきたことで、以前と違うところがある。
それは妻3人の妊娠が無かったことになっていることだ。
秋に生まれることを楽しみにしたのに残念だ…。
しかしエリザちゃんに聞くと、それ以外は以前のままのようだ。
変わっていたのがそこまでで、よかったのかどうか。
どうしてそんなことを聞くか、エリザちゃんは不思議そうな顔をしていた。
アリッサさん達に子供のことを聞けば、出来ないことを責めたようで気を使うからね。
本当のことも言えず、確認したいだけだとごまかした。
確かにあの時、女神ゼクシーは言った。
『あなたの抜けたその跡が塞がる前なら、元の時系列に戻ることが出来るかもしれない』と。
そう考えれば以前に近い時系列に、戻ってこれただけでも感謝するしかない。
その代償として得たのが『空間結合』だ。
戻ってきた際に体に異常がないか確認したところ、ステータス画面に新しいスキル項目があることに気付いた。
俺には【ユニークスキル】時空間魔法ストレージと創生魔法がある。
ストレージは時間と空間を操り、創生魔法は思ったことを実現できる能力だ。
ストレージはカスタマイズ可能で時間の中を渡り召喚され、戻ってきたことで進化を遂げたらしい。
まずは試してみようか。
俺の思った通りなら魔族の家畜や移民の移動に使える。
セトラー国への帰り道、みんなに声を掛ける。
「ちょっといいかな。聞いてほしいことがあるんだ」
「なに?エリアス君」
「実はアリッサさん。試したいことがありまして」
「試したいこと?」
「えぇ、新しいスキルが身に付いたみたいで」
「ほう、それは凄い。新しいスキルを身に付けるなんて。どんなスキルなの?」
「まあ、見ていてください」
そう俺は言うと『空間結合』を試してみる。
『空間結合』と言うくらいだから、空間を結合して移動するスキルか?
ふむ、ふむ。
なるほど。
こうなるのか…。
色々と試した結果、どうやら空間に穴を開け別の地点に空間を繋げることができるようだ。
しかし、それは目に見える範囲の短縮移動で、1度行ったところならまた行くことが出来る、なんて夢のような能力ではない。
目標の100m先までの空間を切り取り、目の前の空間に繋げる。
そうすることで100m先を1歩で進むことが出来る。
これがあれば移動時間が大幅に短縮される。
「凄いですわ、エリアス様」
「ほう、これは便利だ」
オルガさん達が驚き、口々に褒めてくれた。
さあこれで、魔族領の家畜移動の問題は解消できるぞ。




