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第243話 交渉

 彼らは遊牧民で干し肉は食料として持参しているが、穀物など食料の貯えがあまりないと言うことだった。


「では遠征先で食料が手に入らなければ、どうするつもりだったのですか?」

「現地調達となります」

「そんな都合よく、見つかると思われたのですか?」

「我々の使命は開拓可能な土地を探すことです。山脈の向こう側がどうなっているのか分からない以上は、そうするしかなかったのです」

「豊かな土地があるかどうかも、戻れるかもわからない。命がけと言うことなのですね」

「えぇ、そうです。当面は火竜(ファイヤードラゴン)の肉があるので食料は十分ですが」

「それは良かった。ではこちらのことをお話いたします」


 ここはアスケルの森と言われる場所で、シェイラ国と俺のセトラー国に挟まれた誰も支配していない地域だと伝えた。

 しかしそれ以外の場所にはすでに国があり、進むなら侵略とみなすと説明した。

 プセウドテイ国の人口は5万人くらいでその内、戦士は1割くらいのようだ。

 住民は牧畜(ぼくちく)や加工などに分かれ働く。

 家畜は主に牛、馬、羊、豚、ヤギで、毛、皮革、肉や施肥用にしている。


「それはいい是非、我が国にも売ってほしいものです」

「構いませんがあの険しい山を登り、家畜達を連れてくる手段がありません」

「あなた方は翼がありますが、飛べないのでしょうか?」

「勿論、飛べます。但し魔力を使いますが。特にこの山脈のような、数千mあるような標高までは飛ぶことはできず移動手段は徒歩がメインです」

「わかりました。その件に関しては、こちらで何とか致しましょう」

「何とかなるのでしょうか?」

「えぇ、多分、大丈夫です。ただ、その時は私も同行することになると思います」


 今回、召喚され元の時代に戻ってきたことで、ステータス画面に新しいスキルがあることに気付いた。

 それが思った通りのスキルならそれが役に立つはずだ。



「是非、貿易をしましょう」

「貿易ですか?」

「えぇ、牛、馬、羊、豚、ヤギを分けてほしいのです」

「畜産をしたいということでしょうか?」

「はい、特に牛、羊から乳製品を作ろうと思います」

「乳製品ですか?それは何でしょうか?」

「ご存じないとは勿体ない。生乳や牛乳は加工すると『固まる』、『粉になる』など、さまざまに変化し乳酸菌というものが含まれ栄養機能が高まりるのです」

「そんなことが…」

「乳製品を作ればまた食卓は豊かになります。我が国で加工の方法をお教えします」

「それはありがたい」


「加工品を売って頂くのと羊やヤギなどの毛織物も欲しいのです。その代わりに農業、酪農や林業をお教えいたします」

「おぉ、しかし酪農というのは初めて聞きましたが…」

「『畜産』は牛や豚、鶏、羊などの動物を育て、食用の肉や卵、乳のほか、副産物の毛皮などを生産することです。『酪農』は先ほどの乳用牛を飼って飲用の牛乳や、チーズやヨーグルト、バターといった乳製品を生産することです」

「お乳にそんな使い道があったとは、知りませんでした」


「それにこの森は上位の魔物が多く、倒すのは大変ですが肉には不自由はしないはずです」

「そ、そうですか…」

「それに魔物から採れた素材は魔石を含めて売ることが出来ます」

「『売る』とは何でしょうか?」

「えっ?魔界では貨幣はないんでしょうか?」

「はい、現物支給や物々交換が主流でしたから…」


「貨幣と言うのはこれです」

 そう言うとコインを何種類か取り出して見せる。


「これが貨幣です。貨幣それぞれに価値があり欲しいものがあれば、そのものと同等の枚数と交換でき物々交換をしなくても済む手段です」

「そんな便利な物があるとは…、知りませんでした」

「それから火竜(ファイヤードラゴン)の素材を売る気があるなら、私から他の国に売買を持ちかけることもできます。莫大な金額となるので時間はかかると思いましが、5万人くらいなら当面食べていけるだけの穀物が買えると思います」

「おぉ、それは助かります」


「購入するのは領主や国単位になるはずです。しかし国でも一括では支払えないでしょう。大量の穀物が一気に国からなくなると、その国も生活が出来ませんから」

「ではどうすれば…」

「販売する相手を細かく分ければ、良いと思います。貨幣だけの売買ではなく穀物に交換する取引が良いでしょう。そして一括で支払いが出来ない場合は、翌年に繰り越してもらえばいいのです」

「では火竜(ファイヤードラゴン)の鱗と骨を売買して頂けないでしょうか」

「わかりました。ですが仲介手数料はかかると思います」

「仲介手数料ですか?」

「えぇ、手間賃です。高額な商品は買い手がすぐには付かず競売となります。そのために販売する側は事前に買いそうな相手を探す必要があります。国内外に広い範囲に商品の情報や売却条件を事前に公開し、最高価格をつけた人に商品を落札してもらう方式です」

「そうすれば一番高い値が付くと」

「その通りです!そのためにたくさんの人が動き、下準備に手数料が掛かるのです」

「ドラゴンの素材の売却には異議はありません。しかし我々は遊牧民で1つの土地に根付き農業をすることはなかったのです。それを通すには我が主プセウドテイ様の許可と、他4将軍とアモン国王の同意が必要となります。しばらくお時間を頂きたい」


そうバジムは言った。


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