第228話 召喚再び
その夜、世界で初めて女神ゼクシーの神託が降りた。
〈〈〈〈〈 神託を授ける!!召喚されしエリアスは勇者である。この世界を魔物の脅威から解き放つのは、勇者ではなく聖女である。再び魔力を溜め聖女召喚の儀式を行うがよい!! 〉〉〉〉〉
翌朝、シャルエル教のロターリ司祭は、大慌てで登城し神託を国王に告げた。
前回はビッチェ王女の独断による勇者召喚だったが、今回は女神ゼクシーによる神託を受け聖女召喚を行うのだ。
国も動かない訳には行かなかった…。
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ジリヤ国西暦899年5月15日
私はビッチェ・ディ・サバイア。
やっ、やったわ。
ついに待ちに待った、この日が来たのよ。
あれから3年が経った。
やっと異世界から聖女を召喚できるほどの魔力を、儀式用の魔石に貯えることが出来た。
でも、もし聖女召喚に失敗したら次はもうない…。
なぜなら王宮の派閥連中が聖女召喚に、異を唱えるようになったからだ。
聖女召喚をするために、シャルエル教に支払う金額が馬鹿にならない。
そして私は私財を投げ打ち冒険者ギルドを設立した。
冒険者ギルドの件はエリアス様が発案で、国王から2人で取り組む様に言われたけど…。
まさか私がお金を出すなんて…。
国王は冒険者ギルド必要性を認めてくれたけど、家臣団から反対の意見が多く出たようだわ。
後ろ盾のない女の私が言う新しい意見など誰も賛同してくれない。
登録者第一号はエリアス様で彼は魔物が出現すれば、どこにでも冒険者として出かけて行った。
そして私もリンリン、ランランと共に登録をした。
エリアス様は討伐した魔物の素材を売却し、そのお金をギルドの運営資金に回してくれている。
召喚した勇者を冒険者ギルド運営のために働かすなんて間違っているわ…。
でも働きたくても働くところが無く、仕事に就けない人達からはとても喜ばれた。
魔物討伐は命がけだけど、それ以外にも薬草採取などでも僅かだけど収入を得ることが出来たから。
それからお箸産業の会社も同時に立ち上げた。
森林伐採で出た鉄木を使い会社を興した。
今まで汁物はスプーンで、それ以外の肉類は手で食べる地域が多かった。
はさむ食材が多い料理には箸を使うことで産業を興し、その売上も冒険者ギルドの運営に回した。
でもしばらくすると事態が変わった。
勇者召喚をした時は魔物討伐だけでも感謝されたのに…。
聖女召喚の神託が降り人々の中に欲が起き始めた。
魔物討伐だけではなく、魔物そのものが居なくなればと…。
私達親子をよく思わない派閥は、実は召喚自体に失敗しており女神ゼクシーが見かねて神託を卸してくれたと噂する者も出てきている。
そして聖女ではなく勇者を召喚してしまった私は、隣国中の笑いものになり王宮内での立場が更に悪くなってしまった。
まさか勇者と聖女がいるなんて、文献には書いていなかった。
だから失敗しても次の予算はもうもらえない。
教団はダラダラと魔力を貯え、作業に時間を掛け金品を巻き上げようとする。
エリアス様が暇を見ては魔力を召喚用の魔石に貯えてくださらなければ、もっと時間が掛かっていただろう。
それに私は18歳になった。
大人びてきた私にはもう、ロターリ司祭は興味が無いようだった。
もう潮時なのだろう。
オバダリア侯爵も鑑定を見誤った当初は私にすり寄って来たけど、最近では『借りは返した』と言わんばかりに自国領に戻り引きこもっていた。
結局、誰もこの国のことなど考えていない。
今と同じ暮らしが明日も明後日も続くと思っている人達だ。
私にはシャルエル教やオバダリア侯爵の後ろ盾はもうない。
だから次はない。
でも前回は成功したもの、今回もきっと大丈夫よ。
そう思いたかった。
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サバイア国王、ガストン宰相や、たくさんの閣僚。
エリアス様やオバダリア侯爵の見守る中、召還の儀式が始まる。
神官が6人とロターリ司祭が魔法陣に魔力を注ぐ。
魔石に貯まった魔力も放出され辺り一面が輝く。
「黒白の羅、二十二の橋梁、六十六の冠帯。混迷の暁、天を挺る空の羅、大いなる力、滲み出す混濁の紋章、ヒトの名を冠す者よ。蒼白なる月よ、闇を照らす牙となれりて、戒めの鞭を持ちて今こそ姿を現せ、召喚!!」
魔法陣が青白く輝く。
薄暗い神殿の中が明るく照らしだされる。
お願い成功して!
もう無理、誰でもいいから助けて。
同じ思いはもう嫌。
その為だったら私は…。
そして目が開けられないほどの眩い光が起きた。
その場に居た者が目を開けると、そこには…。
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誰も現れなかった…。
気が付くと先ほどまでそこに立っていたはずの、エリアス様も同時に消えていた。




