第227話 STRANGER
現世とあの世の狭間で俺はゼクシーかあさんに会った。
しかし俺の知っているゼクシーかあさんではなかった。
俺は今までの経緯と、この世界に魔物討伐のため召喚されたことを話した。
すると女神ゼクシーは困った顔でこう言った。
「それは私ではないわ、ごめんなさいね…」
そこにはいつものデレたゼクシーかあさんではなく、凛とした塩対応の女神ゼクシーがいた。
「いくら女神様だからと言っても、300年後のことなんてわからないですよね」
「いいえ、分かるわ。ちよっと待っていてね」
そう女神ゼクシーは言うと、なにやら目の前のキーボードに入力を始めた。
するとどうだろう。
女神ゼクシーの顔の周り360度に、テレビのモニターのような画面が浮かび上がる。
そして何かを探すように頷き始める。
「ふむ、ふむ、やっぱりそうなのね…、」
「なにか、わかりましたか、女神ゼクシー様」
俺は敬語を使いお伺いを立てる。
知らないと言う以上は、敬語を使わないといけないからね。
「今から300年後を確認したけど、あなたはこの世界に転移する予定はないわ」
「そんなことがわかるのですか?」
「ここは現世とあの世の狭間であると同時に、時の狭間でもあるのよ。だから過去や未来のこともわかるの。そしてあなたはこの世界には存在していなかった。以前に比べて体調に変化はないかしら?」
「この世界に来てから転移後の経験値が、リセットされたように力が出ません」
「どれ、どれ、」
そう言うと女神は俺に向い手を翳す。
「な、なにこれは?!魔力値は女神並み、いいえ、それ以上だわ!!しかし能力がアンバランスね…。魔力値は高いのにそれ以外の能力が低いのよ。力が出ないのはあなたの体がまだ、この世界に馴染んでいないからね。時間の経過とともに体が馴染んで元の力が戻るわ。でもあなたはこれからどうしたいのかしら?」
「元の世界に帰りたいです。今年の秋には子供も生まれますので」
「それはおめでたいわ。それに今ならまだ間に合いそうね」
「間に合うとは?」
「いい、よく聞いてね。この世界はいくつもの未来に枝分かれしているの。あなたがここに来た今なら、以前居た世界にはあなたの抜けた跡が残っているわ。その跡が塞がる前なら元の時系列に戻ることが出来るかもしれないわ」
「では元の世界に戻れる隙間があり、いずれは時間の経過と共にその隙間も塞がってしまうと言うことでしょうか?」
「そう言うことになるわね。今の段階ではあなたはSTRANGERよ。だからこのまま戻すことが出来るけど、どうする?」
「ですがその場合その後の、この世界はどうなるのでしょうか?」
「まあ、優しいのね。そんなことを考えてくれるなんて」
「えぇ、それに俺が次元の綻びと呼んでいる物はなんでしょうか?」
「それは魔素を吐き出す役目をしているところよ」
「魔素を吐き出す?」
「この世界は魔素に包まれて作られているのよ。そしてこの世界の主役はまだ人族なのか獣人等の異種族か、魔物なのかは決まっていないわ」
「どう言うことでしょうか」
「それはね。世界は人族のためにあるのではなく、今はどの種族が生き残り勢力を拡大するのか様子を見ている段階なの」
「では魔物が主役の世界になるかもしれないと言うことでしょうか?」
「その通りよ。でも人族の繁殖力や技術の発展には目を見張るものがあるわ。いずれは人族の支配する世界になるかもしれないわね」
「しかし次元の綻びをどうすればいいのでしょうか?」
「まずは街近郊の魔物は倒し続けることね。そうすれば瘴気は薄くなるわ。それから人族が住む街の近郊の綻びは塞ぐのが一番ね。そうすれば出口を求めて邪魔をされない場所に、次元の綻びができ魔溜りができてそこから魔物は増えていく。まあ、人族が住むエリアと魔物のエリアを分けると言うことね」
「しかし、その綻びを塞ぐことのできる魔法を使う人がおりません」
「そうね。そんな上級魔法を人族が使える訳がないわ」
「では、どうやって?」
「そうね。あなたをこのままにしておくこともできないから、上級魔法を使える者を呼ぶことにするわ」
「使える者ですか?」
「えぇ、それと同時にあなたを元の時代に戻してあげる」
そう言うと女神ゼクシーは優しく微笑んだ。
その夜、この世界で初めて女神ゼクシーの神託が降りた。




