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第207話 小鳥

 俺はメイドさんに案内され部屋の中に入った。

「こちらのお部屋をお使いください。何かあればこの鐘を鳴らしてください」

 そう言うとメイドはハンドベルを置いて部屋を出て行った。


 部屋の中は12畳くらいでベッドとテーブルとイスとタンスだ。

 俺は仕方なくベッドに横になった。

 

 これからどうする?

 なぜ、こんなことになったのか?

 エリザちゃんは1人で無事に、セトラー国に帰れただろうか?

 この世界のことが良く分からない以上、ここから出ていくのは得策ではない。

 誰か教えてくれる人が欲しい。

 聞いてみよう。


 俺はハンドベルを鳴らした。


「チリン、チリン!」


 しばらくすると誰かが来る気配がし、ドアがノックされる。


「お呼びでしょうか?」

 ドアが開き先ほどのメイドさんが顔を出す。


 お腹が空いたので少量で良いので、何か食べるものが欲しいことを伝えた。

 時間はどうやら12時くらいのようだが。

「分かりました、食べ物をお持ち致します。お待ち下さい」


「それからこの宮殿の中を、出歩くことは可能なのでしょうか?」

「それは難しいと思います。エリアス様のお顔を知っているものは、ほとんどおりませんから」


「そうですよね。ある意味、私がうろついていたら不審者ですよね。せめてトイレくらいは場所を教えておいてください」

「こ、これは失礼いたしました。部屋を右に出てしばらく歩き、2つ目の角を左に曲がって2つ目の角を右に曲がり十字路を左手に曲がったところにあります」

「そ、そうですか…。それだとお付きの人が、必要かもしれません。あはは!!」

 いったいどこにトイレはあるんだ?


「申し遅れました。私はイルゼです。よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「では、後ほどお食事をお持ち致します」

 そう言うとイルゼさんは部屋を出ていった。


 部屋から出れないという事はある意味、監禁状態だな。

 そんなことを考えながら、俺はベッドに横になった。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 

 私の名はジリヤ国第一王子の娘、第一王女ビッチェ・ディ・サバイア。


 召喚されたエリアス様がオバダリア様に凡人と鑑定された。

 鑑定能力を持つ人はこの国でも数人しかおらず、疑うことなど考えられなかった。

 それでも私は信じたくなかった。

 人と資金と時間を掛け召喚した結果が『凡人』だなんて。

 それを確かめなければ、いったいどうすればいいの私達親子は…。


 従者が一緒にいては本音が話せないと思い、私は1人でエリアス様の部屋に向かった。

 するとメイドがエリアス様の部屋に、食事を運ぼうとしている所だった。

 それなら親睦を深めるために私が運ぶことを伝えた。

 驚くメイドを後に私は部屋のドアを叩いた。


 トン、トン!


 ドアを叩いたが返事がない。

 まさかエリアス様になにかあったの?


 私は注意深くドア開け部屋の中に入った。


「エリアス様?!えっ?」


「ス~、ス~、ス~」


 エリアス様はベッドに横になり寝息を立てていた。

 いきなり知らない世界に召喚され、緊張状態が続いていたのかもしれない。


 エリアス様の寝ているベッドの左横に立ちしゃがみ込んだ。

 黒い瞳、黒い髪。

 勇者伝説のままね。

 13~15歳くらいに見えるけど、話し方からするともっと上かもね。

 いくつなのかしら?

 まだ幼顔だけどいい男になるかも?


「エリアス様、起きてください。お話しがございます」

 私はエリアス様の左肩をゆすった。

 

「う~ん」


「キャッ?!エリアス様」


 エリアス様は寝ぼけているのか、私の手を掴み引き寄せた。

 そして抵抗もむなしく一瞬で抱き寄せられた。

 凄い力だった。

 私はそのエリアス様の手を振りほどけなかった。

 

 今まで自由に羽ばたいていた私は、小鳥が羽を休めるようにエリアス様の胸に顔をうずめていた。


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