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第197話 洗濯板

 俺とエリザちゃんは手漕ぎトロッコでアレン領にやって来た。

 そうは言っても門に着く前にトロッコから降り、ストレージに収納して歩いて城門の中に入る。


 そしてシャルエル教工業団地にやってきた。

 しかし前に来た時よりまた規模が大きくなっている。

 なんだ、ここは?

 そう思えるくらい高い塀が立ち並ぶ。



 門の前に立っている駐在員に社員証を見せ構内に入る。

 リヤカーに荷物をたくさん載せ、忙しそうに移動していく人達とすれ違う。

 しばらく歩くと3階建てのお屋敷の様な建物、エリアス商会に着いた。


「こんにちは!」

 俺は店に入り声を掛ける。

「いらっしゃいませ!」

 奥から従業員のエレーナさんがやってくる。

「アルバンさんは居ますか?」

「はい社長ですね。ただいまお呼び致します」


 そう言われしばらく待つとアルバンさんがやって来た。

「これはエリアス様、エリザ様。ようこそいらっしゃいました」

「こんにちは、アルバンさん。実は今日は新しい商品を思い付きまして」

「新しい商品ですか?」

「えぇ、そうです」

 俺はそう言いながら石鹼について話した。

 油汚れが落ちること。

 そして単価を考え、灰汁と混ぜる油は2種類で作る事にした。


「ほう、それはきっと洗濯に苦労している女性達が喜ぶでしょう」

「でも足りない物があります」

「足りない物ですか?」

「えぇシャルエル製作所で、作ってほしいものがあります」

「ではさっそく大司教ヨハネス様のところへ相談に参りましょう」


 そう言うと俺とエリザちゃん、アルバンさんの3人は店を出た。

 大司教ヨハネスが居る大聖堂に向かう。

 しかし広い。

 この広さは何の意味があるのか?

 キックボードで構内を移動している人を多く見かけるのが分かる。



「アルバンさん、この広さは…」

「はいエリアス様。おかげさまで調味料作りが順調で、シャンプーとボディソープもご婦人方に喜ばれて生産が間に合いません」

「そんなにですか?!」

「シャルエル製作所では、製鉄品の鍋、ヤカン、フライパンなどの製作が追い付かず、職人をどんどん雇っている状態です」

「知らなかった。凄いですね」

「アバンス商会は各州に支店を出し始めて、こちらも順調です」

 そんな話をしながら、俺達は歩いて行く。


 大聖堂に着くとアルバンさんに、大司教ヨハネスを呼んでもらった。

 息を上げながら大司教ヨハネスがやってきた。


「エ、エリアス様。お待たせいたしました…」

 はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、

 相変わらず暑苦しい人だ。

 こんな人が民間薬の先駆者、聖人と言われているなんて。

 現実と史実は違うのかもしれない。


「突然お邪魔して、申し訳ありません。実は折り入ってご相談がありまして…」

「な、なにを水臭いことを…。私とエリアス様の仲ではありませんか」

 はて、どんな仲でしょう?



「ここでは、なんですから応接間にどうぞ」

 そう言われ俺達は、応接間に入った。

 洗濯が楽になればと汚れが落ちる、『石鹼』という物を考えたことを話した。


「それは凄い!!きっとたくさんの人達が悦び、感謝する事でしょう!!」

 大袈裟だな。

「ですが石鹼だけでは駄目なのです」

「と、言いますと?」

「その汚れを合わせて落とすための物を作ってほしいのです」

 そう言いながら俺は獣皮紙を出し、絵を書いて見せた。


「エリアス様、これは?」

「洗濯板です」

「洗濯板ですか?」

「はい、木の板に波状の刻みを多数付けた板状の道具です。桶《おけ》に水を入れ石鹼を溶かし、洗濯物を上下に動かして洗います。溝の間に貯まっている石鹼が付いて、これで汚れが落ちます」

「ほう、そんなことが…」

「石鹼は洗濯板を使うことで効果が上がります。お願いしたいのは石鹼の型と洗濯板です」

「ではさっそく木工職人に、洗濯板の製作を指示してまいります」

 そう言うと大司教ヨハネスは部屋から出て行こうとする。


 するとエリザちゃんが声を掛ける。

「お待ちくださいヨハネス様」

「いかがされましたかエリザ様?」

「私も木工所を見てみたいのです。ご一緒してもよろしいでしょうか?」

「それは構いませんが…。エリアス様は宜しいので」

「え?…「エリアス様はアルバンさんとお話があると思います。私1人で大丈夫ですから」

「ま、まぁ、そうだね」

「そうですか。では私がご案内いたします」

 そう言うと2人は部屋を出て行った。

 最近のエリザちゃんは、色んなことに興味があるらしく頼もしく見える。


 その後、俺とアルバンさんは今後の話をした。

 交渉がうまく行けば1月末には南東のラードルフ国と貿易が始まる。

 それに合わせ支店を出す。

 以前にシャルエル教から派遣で来ており、今は社員になった夫婦がいるのでその時はその2人に任せることにした。


 アバンス商会にも立ち寄り、近い内に石鹼と洗濯板を販売することをアイザックさんに話した。

 すると奥さんのオルエッタさんが目を輝かせて『ぜひ、我が商会で販売させてください!!』と言っていた。

 やはり洗濯は大変だったのか。



 それから数日後、石鹼用の型と洗濯板が出来て来た。

 さあ、これからが本番だ。

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