第186話 第一歩
デリクさんが荷物を下ろしている間、俺とエリザちゃんは客間に通された。
「お待たせして申し訳ありません」
そう言いながらデリクさんが、部屋に入って来た。
「あ、いえ、大丈夫ですから」
俺がそう答えるとデリクさんは、俺達が座っているソファの向かいに腰掛ける。
「では早速ですが、これをお納めください」
そう言うとデリクさんは15cmくらいに膨らんだ、金貨が入ったと思われる布袋をテーブルの上に置いた。
ガシャ!!
「300万円あります。今、我が商店でご用意できるのはこれだけです。助けて頂いたのに、申し訳ありません」
デリクさんがすまなそうに頭を下げる。
「十分ですから。ありがとうございます」
特に報酬が目的で助けたわけではない。
降りかかる火の粉を、指ではじいた程度だ。
丁度、この国の貨幣が手に入ったので助かるよ。
「それでエリアス様達は、これからどうされるので?」
「そうですね、まずはマジスカ公爵様に会えればと思いまして」
「マジスカ公爵様にですか?」
「えぇ、そうです」
「ですがマジスカ公爵様と、面識やお約束はあるのでしょうか?」
「いえ、ありません」
「それでは、難しいのではないのでしょうか?」
ごもっともです。
確かに貴族に会うには事前にアポを取り、日を改めるのが普通だけど。
でもなぜ今、本人が居て返答が出来るのに日を改める必要がある?
「エリアス様は商人を、されておいでですよね。ご紹介がない方とはお会いしないと思いますが。失礼ですが、どんなご用件なのでしょうか?」
「実は貿易をしたいと思いまして」
「貿易ですか?交易ではなく」
デリクさんが聞き返してくる。
貿易とは国同士で売り買いの、取引することを言うからだ。
「はい、そうです。鉄、鋼、銀、銅、鉛などの鉱物です」
「鉱物ですと?!そ、それは凄い事です、本当でしょうか!!」
この世界で鉱山を持っている国は少ない。
そのため、それ以外の国は他国から輸入する他はない。
しかしルートが更に安く開けるなら、それは画期的なことになる。
「本当です。マジスカ領と貿易できればと思いまして」
「ではエリアス様は、ジリヤ国の方なのでしょうか?」
あぁ、そうか。
今、鉱物取引が出来るとしたら、俺のセトラー国かジリヤ国くらいだろう。
「えぇ、ジリヤ国の方から来ました」
決してジリヤ国から来たとは言っていない。
よく訪販販売が使う『〇〇の方(方向)から来ました』
というやつだ。
そこから来たとは言っていない。
今は俺がセトラー国の人間だと言う事は伏せて置きたい。
「ですが身分を証明できる物がございませんと」
身分証明??
そう言えば以前、ファイネン公爵から紋章が入ったメダルを手渡されたな。
俺はストレージから、メダルを出した。
「これならどうでしょうか?」
「これは?」
「ジリヤ国東にあるファイネン公爵家のメダルです」
「?!あのジリヤ国で8領中、2代筆頭と言われるファイネン公爵家ですか!」
「えぇ、そうです。ちなみにエリザちゃんは、そのファイネン公爵様の娘です」
「おぉ、こ、これは失礼いたしました!!」
俺も貴族と思ったのか、デリクさんが膝まづこうとする。
「かしこまらないでください。今まで通りで結構ですから」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
デリクさんは礼を言い、またソファに座りなおした。
「ではエリアス様。いかがでしょうか?メダルを預けて頂ければ手紙を添えて、我が家から使いの者を出しましょう」
それはお願いしたいところだ。
まさか他国とは言え、公爵のメダルを悪用するとも思えない。
「それは願ってもないことです。是非、お願いします」
俺は手紙に自分の名前とセトラー国を建国したこと。
鉄、鋼、銀など鉱物の貿易と、海産物取引の事を手紙に書きデリクさんに渡した。
取引をするならエリアス商会を置き、そこから卸さないと。
もうアルバンさんのところも、人も育っているだろうから。
それから運送用の鉄道を引くことや駅設立を書いた。
蒸気機関車の技術を教えるかはその後の話し次第だ。
使いの者には俺のことはまだ確約していない話なので、ジリヤ国の要人だと思われていることも書いた。
「お預かり致します。さっそく使いの者に届けさせますから」
そう言うとデリクさんは、手紙をすぐに届ける手配をしてくれた。
「公爵様よりお返事を頂くのに、お時間がかかると思われます。それまでどこかに泊まられるといいでしょう」
「そうですね、おすすめの宿屋はありますか?」
「えぇ、この近くに『桃源の湯』と言う温泉宿がありまして」
「温泉ですか?!いいですね」
「そこのお湯につかると子宝に恵まれるという…「泊まります!!さあ、参りましょう、エリアス様。畑に種を蒔きましょう」
見るとエリザちゃんが俺の手を取り立ち上がろうとする。
まだそれは早いと思います!!
読んで頂いてありがとうございます。
本編の元になった『ご都合主義で生きてます』シリーズ2作と、『聖女戦記物語。結局、誰が聖女役?-魔法より武力と丈夫な体に自信があります-』を投稿しております。
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