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第179話 聖女

 俺はストレージからリヤカーを出した。

 エリザちゃんと、メイドのアーネさんを乗せて港町マンフレートに向う。

 俺は商人姿、エリザちゃんとアーネさんは町人の服装だ。


 港町に近付くと煙が上がっている事に気づいた。

 おかしい?

 俺はリヤカーを止め、エリザちゃん達を降ろした。

「ここに居て」

 そう言うとストレージにリヤカーを収納し町に走って向った。


 ダッ!!ダッ!!ダッ!!ダッ!!

   ダッ!!ダッ!!ダッ!!ダッ!!


 町に着くと家のあちこちで煙が上がっている。

 門は開いたままになっており、町の中はコボルトとゴブリンの群れが暴れていた。


 ちっ!!

 俺は走りながらストレージから全長約1.5m、重量20kgはある大剣黒作大刀(くろづくりのたち)を引き抜いた。


 ドンッ!!バンッ!!ドンッ!!バンッ!!ドンッ!!バンッ!!

  ドンッ!!バンッ!!ドンッ!!バンッ!!ドンッ!!バンッ!!

   ドンッ!!バンッ!!ドンッ!!バンッ!!ドンッ!!バンッ!!

    ドンッ!!バンッ!!ドンッ!!バンッ!!ドンッ!!バンッ!!


 走りながら剣を振るう!!

 その度に魔物が宙を舞う!!

 この剣は刺突攻撃をするため剣先が鋭く、重量と打撃で叩きつける大剣だ。


 見ると町の人が武器を持って戦っている。

 冒険者も何人かいるようだ。


 俺は進みながら魔物を倒していく。

 魔物もほとんど倒され、もうそろそろ終わりかと思った時にそれは起こった。


「きゃぁ~!!」

 声のした方を向くとエリザちゃん達に魔物が迫っていた。

 しまった。

 エリザちゃん達と外に出るのは、今回初めてだった。

 オルガさんやアリッサさんと、一緒にいるつもりになり守ることを忘れていた。


「エリザ様!!」

 アーネさんがエリザちゃんの前に出てかばっている。

 そんな時だった。


 シュン!!

 どこからか弓矢が飛んできた!!

 ギェェ~~!!

 魔物が倒れる。


 すると更に矢の雨が降る。

  シュン!!シュン!!シュン!!シュン!!

   シュン!!シュン!!シュン!!シュン!!シュン!!

    シュン!!シュン!!シュン!!シュン!!シュン!!シュン!!


 ギェェ~~!!ギェェ~~!!ギェェ~~!!ギェェ~~!!

   ギェェ~~!!ギェェ~~!!ギェェ~~!!ギェェ~~!!

    ギェェ~~!!ギェェ~~!!ギェェ~~!!ギェェ~~!!


 次々と魔物が打ち取られて行く。

 見るとセトラー国の人達だった。

 いったい、何をしているの?

 そして魔物をほとんど倒してしまった。


「エリザ奥様、大丈夫でしたか?」

 100人近いむさ苦しい男達が、跪《ひざまず》き周りに集まる。

「はい、大丈夫です。皆様のおかげで助かりました」

「いつでもお呼びください、この『あなたを守り隊』が居れば…」


 はい、そこまで!!

 セトラー国の仕事にお戻り下さい。

 しかし、よくこの森の中を来たね。

 もう、弓隊の人達は怖いもの無しですか?


 ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、

  ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、

   ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、

    ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、


 エリザちゃんを助け、満足したのか『あなたを守り隊』の人達は帰って行った。

 しかしネーミングセンスが…。


 

「ふぅ~、助かったぜ。あんちゃんは強いな」

 見ると昨日の門番さんだった。

「これは、どうしたのですか?」

「いや、実は今朝、突然魔物が襲ってきてね」

 話を聞くと今朝方、突然魔物が襲ってきたと言う。

 こんな町の木造の簡単な塀では、魔物の数が居れば簡単に壊されてしまう。


 丁度、仕入れに来ていた商隊が何組か居て、冒険者が同行していた。

 そのお陰で助かったと言っていた。

 魔物の大群は襲いに来たと言うよりは、何かに怯えて逃げて来たような感じだったと言う。

 そのため魔物の数は居たが、統制が取れておらず対応できたようだ。



 昨日ここに来た時も、脅威になるような魔物は森にはいなかったけど…。


 エリアスには分からなかった。

 魔物は昨日のエリアスの、『道路整備』の物凄い音から逃げてきたことを…。




「い、痛い…」

「う、う、」

「あなた、しっかりして…」

 だが周りを見渡すと魔物に襲われ、怪我や倒れた人もいる。

 するとそれを見たエリザちゃんが、怪我人に近付いていく。


「大丈夫ですから。もう安心をして」

 そう言うと怪我人の傷に右手を翳す。


〈〈〈〈〈 大地に満ちたる命の躍動、汝の傷を癒せ!! 〉〉〉〉〉


 すると翳した右手が光り輝く!!


 みるみる内に傷が塞がって行く。

 もうウォーターヒールを覚えたのか?


「オォ~~!!」

「回復魔法だ?!!」

 周りから人々の、どよめきが聞こえる。

 一人一人、手を翳しエリザちゃんは治していく。

 そして怪我人が一か所に纏まっているところに進んで行く。


〈〈 慈愛に満ちたる天の光よ、それは天使の息吹なり。全ての者を癒せ!! 〉〉


 するとエリザちゃんの全身が眩く輝き、周りに光りの輪が広がる。

 光に包まれた怪我をしている人々の傷が回復して行く。

 これはエリア・ウォーターヒールか?


 アリッサさんから、エリザちゃんは魔法の勉強に熱心だとは聞いていたけど。

 これほど習得が早いとは…。


「あっ、」

 魔力が尽きかけたのか、エリザちゃんはふらついている。

「大丈夫かい?エリザちゃん」

「えぇ、大丈夫ですエリアス様」


     ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、

    ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、

  ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、

     ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、

  ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、

    ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、

      ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、


 気が付くとエリザちゃんの周りに助けられた人や、町の人々が集まり跪《ひざまず》く。


「「「 聖女様!! 」」」「「「 聖女様!! 」」」

   「「「 聖女様!! 」」」「「「 聖女様!! 」」」

 「「「 聖女様!! 」」」「「「 聖女様!! 」」」

  「「「 聖女様!! 」」」「「「 聖女様!! 」」」

「「「 聖女様!! 」」」「「「 聖女様!! 」」」

   「「「 聖女様!! 」」」「「「 聖女様!! 」」」


 人々は両手を胸の前で組み、口々にそう叫んでいた。


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