第167話 線路は続くよⅧ セトラー国誕生
「エリアス様」
「なんでしょうか、ジェラード様」
あの緑竜を見てから、義理の兄であるジェラード様がキラキラした目を向けるようになった。
それからことあるごとに俺の後を付いて回るようになった。
「エリアス君、話があるのだが」
「なんでしょうか、義父様」
俺はファイネン公爵に話があると言われ、応接間に案内された。
「開拓村のことだが、いつまでも名前がないのは不便だ。そろそろ名前を決めてくれないか」
国同士と考えたら、開拓村というのも変だよな。
「う~ん。それではセトラー国にします」
「ほう、セトラー国だね。ではさっそく各領に通達を出そう」
「ありがとうございます。それから蒸気機関車用の城門と駅が必要となります」
「あのジオラマという物で見た場所だね」
「えぇ、そうです。石炭、鉱物を保管する場所や、蒸気機関車の向きを変えるための転車台の場所の確保。客車に人を乗せ領間も移動もできます」
「それは素晴らしい。益々我が領は発展するな」
「城門と駅の場所を指定して頂ければ、俺が後はやりましょう」
「お願いできるかね」
「はい、ではすぐにでも行いたいのですが」
「分かった。城門の所に行こうか」
俺達は屋敷の外に出た。
「エリアス様、木製自転車で行った方が早いですわ」
「なんだいエリザ、その木製自転車というのは?」
「はい、エリアス商会から今度、販売する乗り物で人が歩く2~4倍くらいの速さで、移動することができます」
「そんなに早いのか。私も乗ってみたいものだ」
俺は仕方なく『創生魔法』で、木製自転車を創って出した。
ファイネン公爵がはしゃぎながら、屋敷の庭を木製自転車で回っている。
「これは馬車で出かけるより良さそうだね」
その場にはファイネン公爵、奥さんのナタリア様、ジェラード君。
エリザちゃん、侍女のネリーさん、執事のレオナルドさん。
俺とオルガさん、アリッサさん、ノエルさんがいる。
「私も乘りたいですわ」
奥さんのナタリア様も乗りたいと言い始めた。
「私もご一緒致します」
執事のレオナルドさんもかい?!
仕方がない。
俺は『創生魔法』で木製自転車を創った。
ファイネン公爵、奥さんのナタリア様、執事のレオナルドさん。
オルガさん、アリッサさん、ノエルさんは木製自転車。
ジェラード君、エリザちゃん、侍女のネリーさんは、俺が引く幌付きリヤカーだ。
さすがにオルガさんに引かせる訳には行かないからね。
「では、行きますか」
そう俺が言うと、みんなで走り始める。
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
チリンチリン!チリンチリン!
ベルを鳴らすとみんなが驚いて、道を開けてくれる。
それが面白いのか、ベルを鳴らす回数が多くなる。
以前にもこんなことがあったな…。
そして城門まで進んだ。
城門に着くとファイネン公爵は門番に話をして場所を決めていた。
蒸気機関車の門は少し離れたところで良いと言う。
「それからエリアス君、悪いが領内に空いている土地は無い。だから城門の外に駅を作ってくれないだろうか」
「へ?」
あぁ、そういう考えもあるよね。
アレン領の時は領内に土地を買い、大変だったな。
城門の外に後付けで作ればよかった。
そうすれば後から石炭、鉱物を運んできた時に保管する場所を作ればいいしね。
よし、黙って置こう。
「では行きます!」
俺はストレージで城壁を切り取った。
〈〈〈〈〈 カキ~~~ン!! 〉〉〉〉〉
ガラスが割れるような、甲高い音がした。
城壁が切り取られたように、一瞬で無くなり城壁の外が見えている。
「こ、これが噂に聞いた切取りか…」
ファイネン公爵が何かを呟き、周りの人々が驚いている。
枕木とレールを組み込み城壁200m手前から外まで線路を引いていく。
そして城壁の前に駅を創る。
線路の横に固めた鉱物を1mくらい積み上げ、幅5mくらいで長さ150mくらいの駅を創った。
屋根を付け無人駅の完成だ。
そしてストレージ内の『創生魔法』で、両開きの門を作って城壁に取り付けた。
城壁の外に蒸気機関車の向きを変える転車台も備え、その駅全体を囲むように壁を創って囲んだ。
駅を城壁の外に創ったと言うことになる。
「では蒸気機関車を出します」
俺はストレージから蒸気機関車と客車を出した。
〈〈〈〈〈 ドン、ドン!! 〉〉〉〉〉
その場に居た全員が軽く2回ジャンプした。
「これが蒸気機関車です。次回来る時はこれに乗ってきますから、魔物と間違わないでくださいね」
「ほう、これほど巨大な物とは…」
ファイネン公爵が驚きながらも聞いてくる。
「では、俺達はもう帰ろうと思います」
「もう、帰るのかね?」
「引いた線路を確認しながら帰ります。それにやることが色々ありまして」
「そうか、残念だ」
「ですが鉄道が開通したので、これからはアレン領まで僅か2時間ですよ」
「ほう、そんなに僅かな時間で行き来ができるのか?!」
「線路の確認をしながら、帰りたいと思います」
「いつでも来ておくれ、待っているから」
その日からウォルド領からアレン領、正確にはセトラー国まで鉄道が開通した。
そして定期的に鉱物や石炭が、アレン領に運ばれてくるようになった。
ウォルド領のファイネン公爵は、技術者をセトラー国に派遣し鉄道事業に力を入れた。
同時にウォルド領は他の領からセトラー国に向かう出稼ぎの人で賑わう。
人が集まればお金が動く。
ウォルド領とアレン領はお金が集まる街となった。
王都は他国に緑竜の素材を売り、ドラゴンバスターの存在を遠回しにほのめかす。
その資金でどの街の領主も街道整備を急ぐのであった。
慌てたのが隣国だ。
ジリヤ国とは今まで大きな争いは無かったが、小競り合いはあった。
それが街道整備に力を入れていると。
街道が整備されれば通行しやすいだけではなく、他国と戦争になった時に攻め込まれやすい。
そのリスクを冒しても、整備を急ぐ理由があると言う事だ。
道を移動しやすく整備し、ドラゴンバスターという存在がある。
内政ではなく外に目を向ける、戦争準備と言う事か?!
ドラゴンを倒したものは、未だかつていない。
だが倒せるだけの戦士がいるなら、それだけで脅威になる。
それ以降、各国の外交官が何度もジリヤ国を訪れるようになった。
訪れる度に剣や盾、街には鉱物で作成した製品が増えていく。
あまりの鉱物製品の多さに驚きながらも、ジリヤ国はいつでも開戦できる状態にあると本国に報告するのであった。




