第144話 お座敷列車
後列の席を見るとエリザちゃんの侍女のネリーさんと、確かラルフさんと言うダークエルフの男性と同じ席に並んで座っている。
エルフはイケメンが多いから。
歳の差200歳くらいだろうか?
あ、愛があればだよね。
『ネリーさんはモテモテみたいじゃないか?エリザちゃん』
『えぇ、そうなんですよエリアス様。でもネリーさんはラルフさんと付き合い始めて、半年も経つのにまだ結婚を申し込まれていない、て嘆いていますわ』
『エルフは長生きだから、俺達と時間の観念が違うのかもしれないね』
『時間の観念ですか』
『エリザちゃん、では聞くけど。好きな人と明日は会えるけど、1年後には会えないと分かっていたらどうする?それまでの時間を大切にしたいと思わないかい?』
『それはそう思いますわ。でも別れは事前には分からないものですわ』
『ネリーさんが今25歳位だとしたら、生きても後30~50年くらいだ。でも400~500年生きるエルフにすれば、それは4~5年くらいの感覚でしかない。それがエルフと人族の違いさ。彼らは時の流れには無関心なんだよ』
『では、どうすればいいのでしょうか、エリアス様』
『エリザちゃん、それはね。彼女達は早くしないと子供も産めず30~50年で、年老いて死んでしまう事を彼らに教えてあげればいいんだよ』
『そう言うものでしょうか?』
『今日会えても明日は分からない。いつも側に居てもらえると思うのは勘違いさ』
「分かりました、エリアス様」
「へ?」
横を見るとダークエルフのラルフさんとネリーさんがこちらを見ていた。
「私も人族とエルフの時間の流れの違いを忘れておりました」
そうラルフさんが言う。
「ネリーさん、お待たせして申し訳ありませんでした。あなたの残った月日を私にください」
ラルフさんは片膝をつき、ネリーさんに手を差し出した。
「えぇ、もちろんよ。喜んで…」
ネリーさんは嬉しそうに、首を少し傾げて微笑んだ。
「ありがとうございました。エリアス様」
ネリーさんがお礼を言う。
「え?俺はなにもやってないけど」
「いえいえ、あれだけ大きな声で、私達のことをお話しされているとさすがに…」
「何やらコソコソ話をしている風でしたが、丸聞こえでしたよ」
ラルフさんにも突っ込まれる。
〈〈〈〈 I screwed up! 〉〉〉〉〉
車両の中は一気にお祝いムードに染まった。
ストレージの中からワインや、非常時用に収納しておいた料理を出していく。
人数分グラスを創生魔法で創り配った。
「さあ、みなさん。飲んでください」
俺はストレージからワインを樽で出した。
そしてみんな樽からそれぞれ、ワインを注ぎ飲み始めた。
「美味しい~!」
「口当たりが最高」
季節は春。
桜に似た花が線路の両脇に咲き、風に揺られて花弁が落ちていく。
その花吹雪の間を蒸気機関車は走って行く。
俺はストレージからカツや唐揚げ、とっておきのクリームシチューを出す。
更に車中は盛り上がり、飲めや歌えの楽しい時間を過ごした。
それから数年後、花が咲く時期に蒸気機関車に乗り、お酒や料理を楽しみながら領を移動する『お座敷列車』は領民に大流行した。
もちろん火付け役はエリアス商会だ。
シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ
シュポポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ
〈〈〈〈〈〈〈〈 ポ、ポワォ~~ン!! 〉〉〉〉〉〉〉〉〉
その頃、機関車車両では…。
「おい、なんか後ろの車両が騒がしくないか?」
「気のせいだろアルガス。機関車の音がうるさくて何も聞こえないぞ」
「それよりも前に集中しろよ」
「あぁ、わかったよ」
こうして機関車は鉱山へ向かうのであった。




