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第130話 紡績機と技術革新

 翌日になり俺は考えてしまった。

 エリザちゃんのことだ。

 俺は開拓村に力を入れたかった。

 だがエリザちゃんに黙っているのも変だ。

 しかしエリザちゃんは公爵にこのことを言うだろう。


 俺が悩んでいるとアリッサさんがやってきた。

 そして俺の話を聞くと、『村を開拓して閉鎖的に過ごすならいいけれど、

1つの国家としてやって行く気なら公表した方が良い』と言われた。

 そう言われればそうだ。 

 いくら村を開拓しても足りないものは出てくる。

 それなら公表した方が良い。


 俺はエリザちゃんを呼び、アスケルの森を開拓していることを話した。

「凄いです、エリアス様。あのアスケルの森を開拓できるなんて」 

「実はもう村も作ってあるんだ」

「さすがエリアス様です。私も見に行きたいです」

「そうだね、今度連れていくね」

 俺は曖昧に答えた。




 そう言えばアバンス商会の紡績店は、どうなっているのだろう?

 俺は気になり出かけることにした。

 

「どちらに行かれるのでしょうかエリアス様」

 エリザちゃんが聞いてくる。

「懇意《こんい》にしているアバンス商会の紡績店です。綿を卸しているので」

「そうですか、それではわたくしもご一緒いたしますわ」

「一緒にきても面白くはありませんよ」

「わたくしはエリアス様の事を知りたいのです」

「それであれば私もご一緒いたします」

 エリザちゃんの侍女のネリーも話に参加してくる。


 出掛けることを話すと、アリッサさんが付いてくると言ったきた。

 オルガさんは冒険者ギルドの仕事で、ノエルさんは施設に忙しいらしい。





「こんにちは!」

 俺はアバンス商会のドアを開けた。


「いらっしゃいませ!」

 すると中から番頭さんが出てきた。

「これはこれは、エリアス様。ようこそおいで下さいました」

「アイザックさんとオルエッタさんは、いらっしゃいますか?」

「はい、お待ちください」


 すると奥からアイザックさんとオルエッタさんが出てきた。

「ようこそいらっしゃいました。本日はいかがされましたか?」

「紡績の方はすすんでいるのかと思いまして」

「実は思ったように、はかどらなくて」

 紡績は植物の繊維や動物の毛から糸を作り、布を作るという作業が行われる。

 天然繊維は採取したまま、布を作れるほど長くも太くも無い。

 そのため天然繊維を細長くねじって糸にする。

 この作業が紡績だ。

 それが思うようにいかないらしい。


「どうも糸がうまく撚《よ》れないのよ」

「そうですか」

【スキル】世界の予備知識で調べると『織機』がヒットした。

 世界の予備知識とは、調べたいことを思うと目の前に検索画面が現れ、パソコン画面を見ているように調べ物が出来るスキルだ。

 紡績機があれば細くて丈夫な糸は作れる。

 だけどそれを動かず動力がない。

 魔石では効率が悪くなるだろう。


 他になにかないかな~と。

 あぁ、あった。

 これなら良さそうだな、手動の機械、紡績機だ。

 駒の回転力を利用して、繊維をねじって撚《よ》りあわせ、糸にするものだ。


 紡績機のことをアイザックさんとオルエッタさんに話した。

「そんな便利なものをお持ちだったんですか。売って頂くことは可能でしょうか」

「もちろんできます、ではお見せ致しましょう。ここではなんですか…」

「あぁ、そうですね。場所を移しましょう。それからそちらの女性は…」

 あぁ、忘れていた。



「実は今度、婚約致しまして…」

 ま、またか、とか思ってないよねアイザックさん?

 なんですか?

 そのジト目は…。


「ファイネン公爵様の長女でエリザちゃんと、侍女ネリーさんです」

「こ、これは…」

 アイザックさんとオルエッタさんは固まってしまう。

 エリザちゃんと、侍女ネリーさんも軽く挨拶をした。


「わたくしは地位などございませんから。固くならないでください」

「そう言われましても…」

「今後のこともございますから普通に接してください」

 そう言われてもね、エリザちゃんは貴族だから。

「場所を移しましょうか?」

 俺達はオルエッタさんが主にやっている紡績店に移動した。

 



 まず俺はストレージから紡績機を出す。

「これが紡績機という機械ですか?」

「ええ、そうです。簡単に説明しますと紡績機というのは、小さい糸車が8個ありまして…」

「ふむふむ」

「紡績工が右手で車輪を回すと…全ての紡錘が回転して糸に撚りが…」

「ほう、なるほど」

「木の棒を戻すと、糸が紡錘に巻きつくようになっています」

「これをこうして…」


 紡績機は繊維を撚《よ》る糸車が、8個ついていると思ってくれればいいかな。

「エリアス様、これは凄いわ」

 オルエッタさんが目をむき出して驚いている。



「これは素晴らしいものです。ぜひ購入させてください」

「ありがとうございます。値段交渉はアリッサさんとお願いします」

「はい、アリッサ様。 お手柔らかにお願いいたします」

 結局、紡績機は8台収めることになった。

 今は1台しかないことにして、残りの7台は後日納品することになった。

 まさかいきなり全台出したら、変だよね。

 1台でも持っていること自体、おかしいから。

 

 後年、アバンス紡績店は紡績から織物を、一手に担う企業に躍進していく。

 また服のデザインや販売も行っており、ボタンという衣服、鞄、靴などに止め具として使用される服飾物を広めたのもアバンス紡績店だと言われている。


 他の工房も模造品を出したが、内陸部のアレン領では素材になりえる貝殻もなく、木製で作っても直ぐに割れ耐久性が劣った。


 アバンス紡績店のボタンの素材は見たこともない金属で作られており、加工も難しく木製や貝殻で作られた他メーカーの追随《ついずい》を譲らなかったという。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


※紡績機の詳細については、あくまでファンタジーなので突っ込まないでください。


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