第125話 忘れ者
「昨日は我が部族のものが世話になりました。言葉にも出来ないほどです」
部族長カーティスさんが話始める。
緑竜は雑食で食料をあさり、ダークエルフの村を目指して進んでいたそうだ。
それを食い止めるために戦士が出たが、全滅寸前になり俺が助けたらしい。
あのままなら村は、壊滅していた可能性が高いと言っていた。
ディオさんは部族長を連れ何度も留守の間に、お礼の果物や魔獣の肉を携え訪ねてきてくれたそうだ。
「アスケルの森はどの国も所有しておらず、切り取り自由だと聞きました」
「その通りです、エリアス様。そのため、われらダークエルフもこの森に住んでおります」
部族長カーティスさんが答える。
「俺はここに農園や畜産をやろうと思っています。人集めはこれからですが…」
「どうして、そのようなことを。エリアス様は人族の方ですよね」
「そうです。ですが国に干渉されずに生活をしたいのです。しかし関わり合わない訳にはいきません。そこで距離を取るため、ここを開拓し人を増やし住みたいのです」
「ほほぅ、それはそれは。こんなアスケルの森の奥の危険な土地で村作りとは酔狂ですな。ところであなたは我々ダークエルフをどう見ますかな?」
「どうとは?違いは褐色の肌くらいでしょうか。俺には皮膚や外見での偏見はありませんから」
「偏見は無いと」
「はい、ここにいる3人いる妻の内の1人もエルフですから。俺の生まれたところでは『天は人の上に人を創らず、人の下に人を創らず』という言葉があります。人は平等なものです」
「その猫族の方も奥様でしょうか?」
「そうです」
するとオルガさん達は奥様と言われ、クネ、クネしている。
「しかし凄いものですな。あの城壁の高さと言い、厚さと言い。あれなら夜も魔物の心配はせず、寝ることが出来そうです。羨ましい限りです」
ダークエルフ達も森の中に簡単な家を建て暮らしているとか。
しかし常に魔物におびえ、夜は交代で見張りをしているそうだ。
それならここに移住しませんか?と俺は誘った。
するとダークエルフの人達はとても驚いていた。
直ぐには決めることはできず、部族会議で決めるそうだ。
俺達も普段は、ここにはいないことを話しておいた。
帰り際にカーティスさんが『また会いましょう』と言って去っていった。
ノエルさんにもこの機会に、アリッサさんがエルフであることを話しておいた。
それから俺は物見やぐらなどを創り、足りないものは街に買い出しにいった。
数日すると、門の前が騒がしい。
行ってみるとダークエルフが30人くらい居た。
そこには部族長カーティスさんもいて、移住したいという。
聞いてみると緑竜の戦いで殆どの戦士は死に、残ったのは女と子供達だけだった。
あれから村に戻り再建について話し合い、開拓村の話が出たという。
緑竜を倒すほどの村長が居る村なら、移住をしたいと言う事になったそうだ。
女子供を含めると移民は28人。
その内、成人男性は8人。女性15人。
残りの5人が10~12歳の子供達だ。
ダークエルフが村に移住してきてから、俺の作業はとても楽になった。
住民がおおくなったので、開拓村の面積も野球のグラウンド40面分に増やした。
これだけ広ければ、当面は間に合うだろう。
畑の他に果実園も作った。
畜産も始めムッカ(牛もどき)は街で雄雌4匹購入し、養鶏場のラプタ(卵を産む鳥)も、森に探しに行ってくれ、雄雌合わせて30匹くらいになった。
その世話も彼らに任せている。
肉にするなら良いが、卵をこれから取ることを考えると先は長い。
元々、森の中で暮らしていただけあって知識も豊富だ。
そして彼らに手伝ってもらい麦を植えた。
彼らはアリッサさん同様に弓が得意で矢に風の魔法を乗せ、目もよく遠くの的でも正確に打ち抜く。
そして手が空けば森に行き、魔獣を狩り夕食になる。
いい戦力だ。
村に来た当初屋敷の寝具や部屋が足りず、ホールなどに寝てもらっていた。
さすがに28人になるとね。
その後、屋敷ではなくそれぞれで住みたい、と言うので伐採済みの木材を与えた。
彼らは非常に手先が器用で俺の屋敷を中心にして、逆さの扇状にあっという間に左右に何件も家を建ててしまった。
そして俺の『創生魔法』で家具も創って渡した。
彼らには衛生面で毎日、体を洗うように伝えた。
お風呂の習慣がなく水浴びならあると言うので、彼らの家の並びにシャワー小屋を建て、毎日浴びるように伝えた。
ムッカが畑を耕すことが出来るように代掻き馬鍬を作って置いた。
これは地球で言えば昭和初期のTVニュースなどでよく見る、木製の枠に細く鋭い鉄の歯を複数付けて牛や馬に引かせ、水を張った田んぼの表面を平らにし、苗の発育や田の土を細かくする農具だ。
いずれ子供が出来て、お乳が出るようになったら牛乳を搾ろう。
ダークエルフの人達が来てから問題が1つある。
それは男女比だ。
28人中、成人男性8人。成人女性15人。
残りの5人が10~12歳の子供達だ。
男女関係なく彼らは戦士だ。
ダークエルフは18歳くらいで成長が止まり、300~500歳くらいで寿命を迎える。
部族繁栄のためにも子作りは大事だ。
だが男性は女性15人から好きな人を選べば良い、というものではないらしい。
俺から見たら彼女らは18歳くらいに見えても高齢の人もおり、若い男性のダークエルフからすれば『お婆ちゃんとできるか!!』と、なるらしい。
元々、長寿のため、子供を作る意識が低い。
その上、中々カップルが出来ない=子供が増えない、になる。
他のダークエルフの部族を探すことを勧めたが、生活圏内で他のダークエルフを見たことはなかったという。
そしてその矛先が回ってきたのが俺だった。
戦闘力が高く若い。
嫁にはエルフ、猫族もいる。
差別意識がなく優れた子孫を残すには丁度、いいらしい。
品種改良を受ける家畜か!
生まれてくる子供も、ダークエルフ、ハーフエルフ、人族の3パターンらしい。
どんな子が生まれても部族で可愛がり育て、村長の俺には責任を求めないと言う。
なにか釈然としないものが俺にはある。
俺が困っているとオルガさんが助けてくれた。
「エリアスには今、嫁が4人いる。4人で十分、補えるから必要ない」
「そうよ、もう大丈夫なの」
アリッサさんもそう言い、ノエルさんは首をかしげている。
いったい何が『補える』とか『大丈夫』なのだろうか?
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あの~、いつまでお待ちすれば、よいのでしょうか?」
「申し訳ございません」
私の名はアルバン。
エリアスの奴隷、エリアス様は従業員だと言ってくださる。
数日前からファイネン公爵家のお嬢様、エリザ様がいらしている。
エリアス様に嫁いで来られたとか。
その侍女のネリーという女性に、私は何度も頭を下げている。
数日前からエリアス様達も、奥様全員と出かけてられている。
ま、まさか忘れているとかは無いですよね?
早く帰ってきて~~!!




