カルテNO.05 野島(パラディン)2
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「私は、聖騎士として樹界深奥攻略のパーティーに参加していたんですが、今から3か月ほど前、ダンジョンの中で瀕死の重傷を負いました」
体が女性化してしまったと訴えてシンオウメンタルクリニックを受診した野島は、医師の促しによりその経緯について話していた。
「激しい戦闘の最中ということもあり、仲間の魔法使いのMPが減っていて、いったんダンジョンハーブで傷の再生と体力の回復をした後、ヒーリング魔法で体力を全回復してもらったんです」
医師は真剣に野島の話を聞き、記録した。
「ダンジョン攻略を終えて、家に帰って2~3日は特に変わりなく過ごしました」
医師が問診票を確認すると、妻と4歳の子供がいるとのことだった。
「ところが……」
野島の表情が曇る。
「ダンジョンから帰って数日以内に、妻と、その…… 性交渉を持つのが常だったんですが、今回は私のモノが……」
野島が言いよどんでいるので、医師は黙ってうなずき、先を促した。
「役に立たなかったんです」
苦しそうに打ち明ける野島に、医師は「それはつらいですね」と同情を示した。
ダンジョンというのは、ひとたび足を踏み入れれば、いつ命を落としてもおかしくない過酷な場所である。男女問わず、ダンジョン攻略の後で性交渉を持ち、子孫を残したくなるというのは、人間の本能的な反応なのかもしれない。
一方では、極度の緊張を強いられるダンジョン攻略の後、ストレスから性機能障害を引き起こすケースも散見され、心療内科受診に至ることもある。
しかし、野島のケースはそのような一般的なものとは一線を画すようである。
「その時には、妻が『ダンジョン攻略で疲れているせいだろう』と言ってくれて、私もそう思っていました。ところが、日がたつにつれて、性機能が回復するどころかどんどん悪くなっていったんです」
つらい体験を告白する野島に、医師は同情の念を示しながら「性機能が悪化したというのは、具体的にはどのような?」と聞いた。
「はじめのうちは、気のせいかなと思ったんですが、性器が退化するというか…… その、小さくなっていって……」
医師は記録の手を止めて、野島の話に聞き入った。
「1か月ぐらい前に、完全に体の中に陥没してしまったんです」
衝撃の告白に、医師は確信した。野島は、期せずして人体を女性化する作用のあるハーブを摂取したのだろう。
しかし、まだ疑問は残る。体内に吸収されてしまった男性器や、精嚢はどうなったのか。また、どこまで「女性化」しているのか……
「それで、うちのクリニックにいらっしゃる前に、体の検査は受けられましたか?」
急にそのような変化が生じたら、まずは泌尿器科や内科などを受診するのが普通だろう。医師が質問すると、野島は「ええ、S総合病院の泌尿器科に行きました」と言い、検査結果のデータが入ったマイクロSDカードをポケットから取り出した。
「拝見します」
医師は野島から受け取ったカードをパソコンに挿入した。




