カルテNO.05 野島(パラディン)1
だいぶ間が空いてしまいましたが、新章突入です。
スピンオフ作品『医大に受かったけど、親にニューハーフバレして勘当されたので、ショーパブで働いて学費稼ぐ。』と合わせてよろしくお願いいたします。
1
「先生、私、どう見えますか?」
診察室に入るなり、30歳代と思しき女性が言った。
問診票を見ていた医師は顔を上げ、患者のほうを向く。
少し顔が骨ばり、肩幅も広いようだが、まあ年齢なりの女性に見えた。
「どうと言われましても、特に変わったところはないようですが……」
再び手元の問診票に目を落とした医師は、患者の氏名を見て「野島…… 剣斗さん?」と言った。
剣斗と書いて「けんと」と読む。女性に付ける名前にしては、ちょっと男性的すぎる気がした。
野島は、肩を落として「ええ、実は私、男でして……」と言うと、医師の向かいの椅子に腰を下ろした。
改めて医師が野島を観察する。自分で「男です」と言っている割には、野島の女装は完璧だった。女装癖がある男性の場合、ウイッグを着けたり化粧するなどして、目立つところからアプローチしがちなのだが、野島はショートヘアで化粧っ気もなく、スカートすら履いていなかった。
それなのに、どう見ても女性に見える。きわめて自然体なのであった。
医師は、問診票に再度目を落とした。症状を記入する欄に、「体が女性化してしまった」と書いてある。
「野島さん、この『体が女性化した』というというところを、もう少し詳しくお聞かせいただけますか」
医師は努めて冷静に質問したが、心中は穏やかでなかった。
「もしかしたら…… ついに『求めていたもの』に巡り合えたのかもしれない」
どこから話したらいいものかと、しばらく逡巡していた野島が「実は……」と話し始めると、医師はその言葉を一言一句聞き逃すまいと、姿勢を正して傾聴した。




